碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ドラマ「桜の塔」の“ひろし”も 負けてはいない!

2021年06月02日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

今期のドラマは

「桜の塔」の“ひろし”も

負けてはいない!



今期ドラマで「ひろし&桜」といえば、阿部寛主演「ドラゴン桜」(TBS系)を想起する人が多いだろう。しかし、こちらの「ひろし」も負けてはいない。玉木宏が主演する「桜の塔」(テレビ朝日系)だ。

タイトルの「桜」は、桜田門にある警視庁を意味する。しかし、毎回起きる殺人事件などを捜査する刑事ドラマではない。「白い巨塔」の舞台は大学医学部だったが、こちらは警察組織内部の権力闘争が描かれていく。

物語の構造はいたってシンプルだ。「サッチョウ(警察庁)の悪魔」こと、副総監の千堂大善(椎名桔平)。新派閥「改革派」を立ち上げ、千堂の総監就任を阻もうとする上條漣(玉木)。この2人の対立と暗闘が見どころとなっている。

千堂のバックには警視総監や大物政治家がおり、千堂の同期でライバルの警備局長(光石研)や内閣情報官(吉田鋼太郎)は上條を支援する。私情と権力欲が交錯するパワーゲームだが、気分は、ほぼヤクザ映画だ。

玉木は凄みと甘みのブレンドが絶妙な快演を披露している。また椎名は自信過剰のパラノイア風キャリアを、主役を食う勢いで演じている。

さらに、上條の幼馴染みで刑事の広末涼子。千堂の娘で上條の妻、仲里依紗。クラブのママ、高岡早紀。それぞれがこのドラマでの役割と自分の見せ場を知っており、男たち以上にたくましい。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.06.02)