碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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前略、倉本聰さま。 『北の国から2021』が見たいです。

2021年06月08日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム
 
 
 

前略、倉本聰さま。

『北の国から2021』が見たいです。

 
今年3月24日、『北の国から』の主人公、黒板五郎を演じた田中邦衛さんが亡くなりました。88歳でした。
 
4月3日、フジテレビは追悼番組として、『北の国から ’87初恋』を放送しました。
 
横山めぐみさんが、ヒロイン「れいちゃん」を演じた、名作の1本です。
 
平均世帯視聴率は、何と9.4%に達しました。
 
ほとんど予告なしの放送だったにもかかわらず、最近は新作ドラマでもなかなか難しい、10%近い数字を獲得したことは驚きです。
 
そして、北海道・富良野にある、ドラマのロケ現場「五郎の石の家」に、田中邦衛さんのための「献花台」と「記帳台」が設置されたのは、4月10日のことでした。
 
田中さん、そして「五郎さん」をしのんで集まった人は、初日だけで1800人に達したそうです。
 
連続ドラマ『北の国から』全24話が放送されたのは、1981年10月から82年3月まででした。
 
83年からはスペシャルの形となり、『北の国から2002遺言』まで続きます。
 
放送されていた20年間、徐々に年老いていく五郎の姿がありました。
 
その一方で、成長し、大人になっていく子どもたちの仕事、恋愛、結婚や離婚、いや不倫までもが描かれていきました。
 
見る側は、フィクションであるはずの「黒板一家」を親戚か隣人のように感じながら、五郎と一緒に笑い、泣き、悩み、純や螢の成長を見守り続けたのです。
 
彼らと同じ時代を生き、年齢を重ねてきた人たちの中で、2002年からの「その後の20年」はもちろん、「現在」も物語は続いているのではないでしょうか。
 
そうでなければ、34年前に放送された作品が多くの人に視聴され、主演俳優と彼が演じた劇中の人物を慕って、たくさんの人がわざわざ富良野まで足を運んだりはしません。
 
やはり『北の国から』は、見る側の心の中で、終わってはいないのでしょう。
 
しかも、今年は「放送開始40周年」に当たります。
 
6月3日の読売新聞などの報道によれば、40周年記念として、第1回が放送された10月9日前後、富良野に当時の出演者などが集まる「同窓会」の計画があるそうです。
 
そんな話を聞いていると、どうしても、こう思わずにはいられません。
 
『北の国から』の新作が見たい!
 
『2002遺言』から約20年を経た、「現在の黒板一家」に会いたいです。
 
前略、倉本聰さま。
 
『北の国から』の新作が見たいです。
 
黒板家の人たちは、たとえば東日本大震災を、どこでどんなふうに経験し、昨年からのコロナ禍の中、どう生きているのか。
 
もちろん、今、田中邦衛さんはいません。
 
でも五郎さんは、今もどこかで、いや、きっと富良野で、飄々と暮らしているような気がします。
 
純は、蛍は、何をしてるンだろう。何を思って生きてるンだろう。会ってみたいです。
 
前略、倉本聰さま。
 
『北の国から2021』の脚本を、ぜひ書いてください!