碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「NICE FLIGHT!」缶ビールを片手にゆったりと

2022年09月08日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「NICE FLIGHT!」

金曜夜は缶ビール片手に…

玉森裕太と中村アンの

穏やかな恋を眺める愉しみ

 

金曜夜の11時台に、重たいドラマはあまり見たくない。かといって、登場人物たちだけがはしゃいでいる作品もうっとうしい。

その点、「NICE FLIGHT!」(テレビ朝日系)はピッタリだ。主な舞台は羽田空港。副操縦士の粋(玉森裕太)と航空管制官の真夢(中村アン)の“お仕事ラブストーリー”である。

パイロットが主人公のドラマといえば、木村拓哉の「GOOD LUCK!!」(2003年、TBS系)を思い出す。あちらは「パイロット道」を究めるかのように、いつも眉間にしわを寄せていたっけ。

また女性管制官では、深田恭子主演「TOKYOエアポート~東京空港管制保安部~」(12年、フジテレビ系)があった。深田もまた笑顔を封印して、「冷静沈着」の権化みたいな真剣さで仕事に取り組んでいたものだ。このドラマにも粋のフライトや訓練、真夢の業務シーンが出てくる。だが、あまり緊迫感はない。

前述の木村や深田は、どこか肩に力の入った演技を見せていたが、こちらの2人は自然体で無理がない。しかも、恋愛もまた適温で進んでおり、粋の元カノ(筧美和子)への誤解から、真夢の気持ちが揺れた程度だ。

おかげで、見る側は缶ビールなど片手に、心優しき青年と生真面目な年上女性の穏やかな恋を、ゆったりと眺めることができる。次回は最終回。予想通りの“着陸”を見せてくれたら拍手だ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.09.07)