<週刊テレビ評>
「ちむどんどん」最終盤だけど…
愛せなかった困った人物たち
NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ちむどんどん」の最終回が近づいてきた。この時期になると通常、「もう見られなくなる」と惜しんだり、ロス(喪失感)を心配したりする声が高まってくるものだ。
だが今回は様子が違っている。放送開始直後から酷評で、半年近くが過ぎた現在も収まらないままなのだ。なぜ、こんな事態になったのか。
このドラマの主な問題点は二つある。ストーリーと人物設定だ。まずストーリーだが、ご都合主義的な展開が随所に見られた。
たとえば、ほぼ手ぶらで沖縄から上京した主人公の暢子(黒島結菜)。たまたま知り合ったのが沖縄県人会の会長(片岡鶴太郎)だ。自宅に泊めてくれた上に、紹介された沖縄料理店が暢子のバイト先兼下宿先となっていく。
それだけではない。会長は銀座の一流レストランへの就職まで世話してくれるのだ。これに限らず、本来なら紆余(うよ)曲折を経てたどり着くはずなのに、あまりに簡単に到達するため、見る側は応援する気持ちが薄れていった。
次の問題点は登場人物のキャラクターだ。暢子は一貫して自分勝手で、思ったことをTPOを無視して大声で口にする。
明るく前向きなヒロイン像は定番だが、彼女の場合は「真っすぐな性格」の範囲を超えている。非常識で無遠慮な人に見えてしまい、共感できなかった。
また、ことあるごとに「ちむどんどんする!」とタイトルコールのように叫ぶのも押しつけがましい。
そしてもう一人、困った人物がいた。暢子の兄、「ニーニー」こと賢秀(竜星涼)だ。真面目に働かない。暴力事件を起こす。一獲千金を狙って詐欺に引っかかる。かと思うと、自身も詐欺まがいの行為に手を染める。
さらに周囲から借金をしたまま消えるのが常で、その度に尻ぬぐいをするのは家族だ。時々、「甘やかし過ぎだろう」と文句を言いたくなった。
過去にも朝ドラには何人もの「ダメ男」が登場した。近年では「おちょやん」(2020年度)のヒロイン・千代(杉咲花)の父親、テルヲ(トータス松本)が娘を売り飛ばした。
「カムカムエヴリバディ」(21年度)の安子(上白石萌音)の兄、算太(濱田岳)も妹の大事な貯金を持ち逃げしている。
朝ドラのダメ男たちはヒロインの人生を揺さぶる大きな要素だが、賢秀のダメさは度を越しており、見る側にストレスさえ感じさせたのだ。
沖縄復帰50年という節目の作品だったが、復帰後の沖縄の変化などはほとんど描かれなかった。次回作に期待しつつ、物語の最後を見届けたい。
(毎日新聞夕刊 2022.09.17)