碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】 夕暮れの飛行機雲

2022年09月26日 | 気まぐれ写真館


【気まぐれ写真館】 庭の薔薇、咲く。

2022年09月26日 | 気まぐれ写真館


【新刊書評】2022年6月後期の書評から

2022年09月26日 | 書評した本たち

 

 

 

【新刊書評2022】

週刊新潮に寄稿した

2022年6月後期の書評から

 

芦原 伸『北海道廃線紀行~草原の記憶をたどって』

筑摩書房 1870円

かつて北海道には4100㌔もの鉄路が敷かれていた。現在、すでに4割が消滅している。幌内線は三笠炭鉱から石炭という「黒いダイヤ」を運んでいた。羽幌線では、大漁に沸く「にしん列車」が疾走していた。紀行作家が目指すのは、いわば夢の痕跡。廃線探訪の楽しみは「鉄道の歴史地図を紐解くことにある」そうだ。この夏、古い地図を携えて線路跡や残された駅舎に立つ旅がしたくなる。(2022.05.15発行)

 

永井 隆

『キリンを作った男~マーケティングの天才・前田仁の生涯』

プレジデント社 1980円

キリンビールの人気商品である「一番搾り」「淡麗」「氷結」などを生み出した男。それが前田仁だ。独自のマーケティング戦略で挑んだ「一番搾り」。その成功直後に突然の左遷。やがて復活し、今度は発泡酒の開発に取り組んだ。前田はなぜ、困難な課題を背負いながら結果を出せたのか。見えてくるキーワードは「本質」だ。本書は優れた評伝であると同時に、商品論であり企業論でもある。(2022.05.30発行)

 

養老孟司、ヤマザキマリ

『地球、この複雑なる惑星に暮らすこと』

文藝春秋 1650円

昆虫のメカニズムを分析しながら人間について考える脳学者。昆虫の誕生から死までを観察しながら人間の有りようを思う漫画家。そんな2人の対談集だが、昆虫を足場に家族、社会、そして死に対する見方まで、話題は自在に広がっていく。中でも新型コロナをはじめ、環境・経済問題などについて地球規模で展開される対話が刺激的だ。世の中への違和感こそが、自分の頭で思考する第一歩だと知る。(2022.05.30発行)

 

みうらじゅん『マイ修行映画』

文藝春秋 1650円

雑誌『映画秘宝』の名物連載7年分だ。映画館は逃避の場であり、「道場」でもあると著者。ある映画を「つまらない」と感じる、自分の常識を疑うための道場だ。そこで得るのは新たな映画の見方であり、マイ価値観である。『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネーション』は「安請け合い映画」。『007/ノー・タイム・トウ・ダイ』は「ボンドはつらいよ映画」。78本の修行の成果だ。(2022.06.10発行)

 

岸見一郎『ゆっくり学ぶ~人生が変わる知の作り方』

集英社 1650円

「学び」の本質を説く著者は、『嫌われる勇気』などで知られる哲学者。本書は年齢に関係なく、学ぶ楽しさを堪能するための指南書だ。学びに目的は不要。そこには知らないことを知る喜びがある。また学ぶことで自己中心性から脱し、どう生きるかを決められるようになる。さらに読書や書くことの意味や具体的な方法もアドバイス。家で過ごすことが増えた人にとって参考になることが多い。(2022.06.10発行)

 

読売新聞取材班:編

『報道記録 東京2020オリンピック・パラリンピック』

読売新聞社 2750円

東京2020大会の開催から約1年になる。本書は紙面画像も含めた記事の再録を中心に、「その出来事が生じた時の臨場感を再現」することを目指した一冊だ。招致、延期、開催といった経緯をたどる一方で、選手、支える人たち、関係者などのヒューマン・ストーリーも盛り込んでいる。それにしても都知事から首相まで、12幕もの交代劇は前代未聞。客観的検証が行われるなら、本書は有効な資料となる。(2022.06.11発行)