旧統一協会と政治家
安倍元首相が演説中に銃撃され、亡くなった事件から約3ヶ月。事件全体の解明はこれからだが、旧統一協会に対する社会の関心は高まっている。
振り返れば、「霊感商法」「合同結婚式」「高額献金」などで旧統一協会が社会問題化したのは1980年代である。やがて95年に地下鉄サリン事件が起きると、メディアと市民の目はオウム真理教へと向けられた。
カルトといえばオウム真理教が代名詞となると同時に、旧統一協会に対する追及は不完全燃焼のまま途絶えてしまう。しかし、この30年間、協会は名称を変更しながら延命してきた。その事実をあらためて突きつけられたのが、今回の事件だ。
今月2日、NHKスペシャル「安倍元首相銃撃事件と旧統一教会~深層と波紋を追う~」が放送された。視聴する前、知りたいことは主に3つあった。旧統一協会とは何か。銃撃事件との関係。政治家との関わりだ。
番組は韓国取材も行い、協会関係者の貴重な証言を得る。明らかになったのは、日本からの献金が食品業や建設業といった協会の「営利企業」を支えている構造だ。「日本の信者たちがどうなろうと関係ない」という本音も聞くことが出来た。
次に銃撃事件との関係だが、山上容疑者の家族が破滅的な状況に追い込まれたことには触れていた。ただし、その殺意形成の過程については今後の取材に期待したい。
そして今、多くの人が注目している政治家との関わりについて、番組はかなり詳細に伝えている。自民党では党幹部など180人が関係していた。公明党が3人、立憲民主党は16人、日本維新の会が15人だ。ちなみに日本共産党は0人だったことも報じていた。
選挙支援という甘い蜜に群がった政治家たちの実態が、いくつかの証言によって浮かび上がっていく。こちらも献金と同様、一種のシステムとして機能してきたものであり、地方議員などの現状を考えても、協会との関係を断ち切ることの難しさがよく分かる。
協会は「改革に取り組む」と言い、政治家は「関係を一切絶つ」と言う。しかし言葉通りに進むとはとても思えず、継続報道の必要がある。問題の奥深さを十分再認識させてくれる1本だった。
(しんぶん赤旗「波動」2022.10.17)