碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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2018.01.19

「倉本聰 ドラマへの遺言」 第8回

2018年01月19日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第8回

役者と真剣勝負
「俺が正しいのか、おまえが正しいのか」

碓井 倉本先生はドラマの撮影が始まる前、役者たちが集まって行われるホン読み(台本の読み合わせ)にも立ち会う、“唯一無二の脚本家”として知られています。

倉本 ハハハ。「前略おふくろ様」(日本テレビ系、75年)では細かく立ち会っていましたから、直接役者に説明できてたんですね。それでも大河「勝海舟」(NHK、74年)以降は、演出家や監督に口出しをするとうまくいかないっていう気配があって。いまでは大御所みたいに見られて、皆、僕には逆らわないんですよね。逆らわないから分かったのかなと思うと全く理解していない。伝わっていないんです。

碓井 その点、「やすらぎの郷」には倉本作品への出演歴のある俳優さんがたくさん出ていらしたから、かなり安心だったんじゃないですか。

倉本 僕のことを分かっている人たちは的確に演じてくれますからね。

碓井 「勝海舟」の話が出ましたが、先生がホン読みに出席しなくなったのはいつ頃からですか。僕がスタッフとして参加した、笠智衆さん主演の「波の盆」(日本テレビ系、83年)では来てくださいましたよね。

倉本 「波の盆」の時は制作サイドから「立ち会ってください」と言われたので、気持ちよく出られましたよね。でも、普通は「立ち会ってもいいですよ」なんて受け身に言われちゃう。出づらいですよね。

碓井 そもそもホン読みに立ち会うのはなぜですか。

倉本 シナリオっていうのは「寝てる」ものなんですよね。それを役者が「立ち上げ」てくれる。その立ち方が違うっていうのはストーリーを作った者だからこそ的確に指摘できる。それが、トンでもない立ち方をされても、現場にいないから分からないわけですね。それで僕はある時、若い俳優さんに「一言一句変えないでくれ」ってつい言っちゃったんですね。それが過大に広がっちゃって定説になってしまった。

碓井 業界内では、役者も演出家も「倉本脚本は一言一句変えてはならない」という不文律みたいになっています。

倉本 ええ。語尾を勝手に変えられてしまうと人格が変わってしまうんですよ。たとえば、高倉健さんに関するインタビューを僕が受けた際、「健さんはすてきな人ですよ。シャイなんだけれども、なんとかなんじゃないでしょうか」っていう答え方をしたとするでしょう。すると新聞記者が「高倉健はすてきな人だ。シャイだがなんとかだ」と断定的な言い切りで記事にしてしまうと、読者にはあたかも僕が上から目線で傲慢な言い方をしたように見えるわけです。会話ってのはそういうもの。シナリオは必要最低限の情報を伝える新聞記事とは違います。何の脈絡もなく語尾を変えるのはいい加減にして欲しいとその若い役者さんに言ったつもりだったんですが。

碓井 彼は「何だよ、たかが語尾なのに」と思ったんでしょうね。

倉本 誤解していただきたくないのは、若いからダメ、ではない。ニノ(05年「優しい時間」に出演した二宮和也)なんかには自由に変えてくれって言ってますしね。ただし、俺のホン以上に変えてくれとは付け加えます。俺が正しいのか、おまえが正しいのか、勝負しているわけですから。(あすにつづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。





ドラマへの遺言 (新潮新書)
倉本聰、碓井広義
新潮社




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碓井広義「倉本聰のドラマ世界」を語る。

2019年4月13日 土曜日
18時開演(17時半開場)
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今年度の「碓井ゼミ」終了、おつかれさま!

2018年01月19日 | 大学
2018.01.18

「倉本聰 ドラマへの遺言」 第7回

2018年01月18日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」



倉本聰 ドラマへの遺言 
第7回

素人には藤沢周平の短編集を
脚色する課題を与えるべきだ

碓井 日本では「シナリオライター」と「脚本家」に2つの異なる役割があることは広く知られていません。制作サイドもどこまで線引きできているのか。

倉本 米国ではいまだにきちんと分業してます。ハリウッドのアカデミー賞の授賞式を見るとお分かりになると思うのですが、脚色賞が初めの方で呼ばれるのに対し、脚本賞は後半で発表される。

碓井 原作がある場合は「脚色賞」で、丸ごとオリジナルの場合が「脚本賞」。

倉本 「撮影台本」を書くっていう仕事は「ストーリー」を書く仕事とは別。ですので、ヤングシナリオ大賞を受賞したからといって、いきなり素人にオリジナル脚本を書かせるのはどだい無理な話。物語自体を書く仕事があって、その上で撮影台本を書く。それをゴッタにしているところに大きな課題を感じます。

碓井 オリジナルを書く実力を身につけるには修業が必要ですね。

倉本 ええ。もし新たにシナリオ賞をつくるのであれば、たとえば、藤沢周平の短編集を脚色しろっていう課題を与えたほうがいいですね。

碓井 最近も「北の国から」の杉田成道さんが、藤沢さんの「橋ものがたり」を映像化しましたね。藤沢作品は物語の骨格がしっかりしています。しかも、事細かな心理ではなく登場人物たちの行動が描かれていきます。その行間を読むように想像力を働かせるのは、とてもいい脚色の訓練になると思います。

倉本 そうでもしないと、本当のシナリオライターは育たない。それをいまのテレビ業界は全く分かっていないんです。

碓井 いわゆる倉本ドラマはベースとなるストーリーを作ったのも、それを撮影台本に変えたのも先生です。でも、その先には演出家や役者さんがいるわけですよね。最終的に視聴者が見るものと、もともとの脚本との間に落差が生まれたりしませんか。

倉本 その落差も予想しながら、織り込みながら書いているってことはありますね。

碓井 たとえば「やすらぎの郷」の中で、ちょっと気になった場面があったんです。藤竜也さんが演じる高井秀次(高倉健を思わせる、任侠映画などで活躍した寡黙な俳優)がやすらぎの郷に入居することになって、女性陣は喜ぶわけです。とはいえ10代、20代の女の子じゃないから、感情をむき出しにしてキャーキャー喜んだりはしないはず。それなりに見えもあるから、「あ、そうですか」って感情を抑える。本来なら内心の喜びがにじみ出ちゃうのがおかしいっていう表現にならなきゃいけないと思うんですが、オンエアを見たら、皆さん、ハシャギ回っていました(笑い)。

倉本 うーん、そう見えましたか。僕は、チャプリンの「人生はクローズアップで見れば悲劇。ロングショットで見れば喜劇」という言葉が喜劇の本質だと思っているんですよね。でも、碓井さんが違和感を持ったとすれば、それは女優たちのせいじゃない。大人のドラマとしてのニュアンスが十分に伝達できていなかったという意味で、僕のスクリプト(台本)が弱かったのかもしれないなあ。(あすにつづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。





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石原さとみ 「アンナチュラル」は新感覚サスペンス

2018年01月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



「不条理な死」を許さないプロたちを描く
新感覚サスペンス

TBS系「アンナチュラル」第1話の冒頭。登場したのは石原さとみ(31)と市川実日子(39)だ。おお、映画「シン・ゴジラ」の最強女性陣じゃないか。再び大怪獣に挑むのか。いや、違う。彼女たちが闘う相手は「不自然な死(アンナチュラル・デス)」だ。

勤務先は「不自然死究明研究所(UDIラボ)」。法医解剖医の三澄ミコト(石原)は、警察や自治体が持ち込む遺体を解剖し、死因をつきとめる。科捜研の女ならぬ、UDIラボの女。この設定自体が新機軸だ。

最初の案件は突然死した青年の死因解明。警察の判断は「虚血性心疾患」(心不全)だったが、検査の結果、心臓には問題がなかった。薬物による急性腎不全の疑いが出てくるが、肝心の毒物が特定できない。そこに遺体の第1発見者で婚約者でもある女性が現れる。しかも彼女の仕事は劇薬毒物製品の開発で……。この後、予想外の展開が待っていた。

脚本は「逃げるは恥だが役に立つ」「重版出来!」の野木亜紀子だ。ミステリー性とヒューマンのバランスが絶妙で、快調なテンポなのに急ぎ過ぎない語り口が気持ちいい。

また役者たちが脚本によく応えている。石原は堂々の座長ぶりだし、同僚の一匹狼型解剖医・中堂(井浦新)の存在も効いている。

今後、ミコトと中堂の相互作用は期待大。「不条理な死」を許さないプロたちを描く新感覚サスペンスだ。

(日刊ゲンダイ 2018.01.17)

NHK「新春TV放談」で光った3人の話

2018年01月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



“ドラマ4話でキス”
NHK「新春TV放談」で光った3人の話

2日に放送されたNHK「新春TV放談2018」。NHK・民放を問わず、いまのテレビについて語り合うという内容で、今年でもう10回目となる。

司会は千原ジュニアと首藤奈知子アナ。パネリストとしてテリー伊藤、ヒャダイン、カンニング竹山らが並ぶが、今回はゲスト的な3人が光った。

「池の水ぜんぶ抜く」(テレビ東京系)が話題の伊藤隆行P。「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系)などの“お仕事ドラマ”をヒットさせた小田玲奈P。

そして元SMAPの3人が出演した「72時間ホンネテレビ」(AbemaTV)を仕掛けた、サイバーエージェントの藤田晋社長だ。

中でも伊藤Pの「脱・企画の保険」という話が刺激的だった。局内の会議で企画内容よりも視聴率確保の方策(=保険)ばかりが話題になることに反発したというのだ。


マーケティングに頼らず、自分たちの実感を大切にする姿勢が頼もしい。

また小田Pの「ドラマの中身はお仕事だけど、視聴者を引っ張るのに恋愛を使う」「4話でキス」などの発言はリアルだし、藤田社長の「テレビも視聴率以外の指標が必要な時代」という意見にも説得力があった。

番組の1000人アンケートでも、ドラマを放送時に見る人と録画で見る人はほぼ同数。今年はテレビのビジネスモデルの変革も待ったなしだ。

(日刊ゲンダイ 2018.01.10)

今学期の「実習科目」、おつかれさま!

2018年01月17日 | 大学
「テレビ制作」



「視聴覚教育」

「倉本聰 ドラマへの遺言」 第6回

2018年01月17日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」


倉本聰 ドラマへの遺言 
第6回

「これはもうテレビドラマは
やめた方がいいのかなと…」


14年7月期に放送された日曜劇場「おやじの背中」シリーズ(TBS系、全10回)は「父と子」をテーマに掲げた1話完結のオムニバスドラマ。10人の脚本家によるオリジナル脚本の競作で、単発のホームドラマが基本だった同枠の原点回帰ともいえる企画で話題を呼んだ。倉本氏は第3話「なごり雪」(西田敏行主演)で旧知の演出家・石橋冠とタッグを組んだが、世間の反響をよそに俳優と演出の関係にギャップを感じたという。

碓井 石橋冠さんと倉本先生が組んだドラマといえば、私も大好きな一本で、浅丘ルリ子さん(写真右)と石坂浩二さん(同左)が共演した「2丁目3番地」(日本テレビ系、71年)がありますよね。そして「北の国から」の3年後、天宮良さん初主演ドラマ「昨日、悲別で」(同、84年)の演出も石橋さんでした。「おやじの背中」は同世代で戦友ともいえる石橋さんとの仕事だったわけですが。

倉本 出来上がったVTRを見るとイライラしちゃうんですよ。書いた本人が。めちゃくちゃイライラするんで、これはもうテレビドラマはやめた方がいいのかなと。実は「やすらぎの郷」でもそうだった。しかも長丁場だったので、「おやじの背中」以上に相当激しくイライラが出た。これは振り返れば、僕の台本がダメなんだなっていう気がしているんです。

碓井 台本がダメって、どういうことですか。

倉本 そもそもシナリオライターというのは、2つの役割がありましてね。一つはプロットを作る仕事。そして、もう一つは撮影台本を作る仕事です。

碓井 ドラマや映画でいうプロットは物語の筋、つまりストーリーですよね。大きく分ければ原作ありのものと、原作なしのオリジナルと2種類あります。どちらの場合も、そのプロットを基に書かれた撮影台本をベースにしてドラマが作られていく。

倉本 ですが、日本では原作ありも原作なしも「シナリオライター」とひとくくりで呼ばれている。実はそれこそがテレビドラマの弊害の一つになっている。僕らは映画からこの世界に入りましたが、当時の映画会社では若造がいきなりオリジナルシナリオを書くなんてあり得なかったんですよ。

碓井 ある程度キャリアを積まないと、オリジナル脚本は書かせてもらえなかったと。

倉本 十数年は経験を積まないと駄目ですね。僕自身もシナリオライターになった時、作家といわれるのはまだ無理だ、まずはシナリオ技術者になろうと思ったものです。とにかく右から注文が来ても左から注文が来ても受ける。そして意向に沿って膨らませ、形にする。当時の映画会社にはプロットライターというものがいまして、企画部が筋までは完璧に作ったものを脚本家に渡す。だから、僕らの仕事は撮影台本を書くことに徹した。分業の訓練を受けてきたので、いまとは全く違うわけですね。(あすにつづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。





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「倉本聰 ドラマへの遺言」 第5回

2018年01月16日 | 日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」



倉本聰 ドラマへの遺言 
第5回

「これが最後だと…」
2008年の会見で現役引退宣言の真意


2008年9月、テレビドラマ界に大きな激震が走った。倉本氏がフジテレビ開局50周年記念ドラマ「風のガーデン」(中井貴一主演)の富良野ロケを視察した際の会見で、「脚本を書いているうちにこれが最後だと思った」と引退ともとれる発言をしたからだ。

碓井 先生は実際、どうおっしゃってたんですか。この時の心境も知りたいです。

倉本 詳しいことはちょっと覚えていないんですが、ただ、体力的な面は大きいでしょうね。その当時でまだ70代だったのかな。長期間にわたる作品ってキツイでしょう? 体力的に無理だなっていうのはありましたね。自信がないっていう。

碓井 「風のガーデン」は「北の国から」(1981~2002年)、「優しい時間」(05年)に続くフジテレビ系で放送された富良野3部作の最終章となる物語です。初回平均視聴率20・1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しましたが、数字以上に「人生の最期」を扱ったドラマの内容自体への反響が大きかった。また難しいテーマだけに、もしかしたら倉本先生と当時の制作陣との間にドラマ作りを巡って何かズレがあったのかな、と。

倉本 それはないですよ。「風のガーデン」の演出は宮本理江子だったし。山田太一の娘さんのね。振り返れば、主人公の父親役を演じた緒形拳(享年71)が亡くなったでしょう。

碓井 ドラマが始まったのが08年の10月9日。緒形さんが亡くなったのは初回放送4日前の5日。亡くなる5日前には制作会見(写真)にも出席していらっしゃいました。

倉本 ええ。それからしばらくして、4年後の12年には大滝秀治さん(享年87)も亡くなった。自分が一緒に仕事してきた同世代や先輩がどんどん欠けていっちゃった。

碓井 倉本ドラマにおいて、脚本の命でもある微妙なニュアンスを表現できる役者さんや作り手の存在は不可欠ですからね。

倉本 正直、理江子までは良かったんだけど。実はテレビドラマは「やすらぎの郷」(17年、テレビ朝日系)の前に1本やっているんですよ。

碓井 TBS系の「おやじの背中」(14年)ですね。倉本先生はじめ10人の脚本家による1話完結のオムニバス形式。先生は旧知の演出家・石橋冠さんと組んだ第3話で「なごり雪」を書かれた。一代で会社を築き上げた男(西田敏行)が、創立40周年パーティーのために準備してきたプランを周囲に反対される。腹を立てた西田さんがパーティーの中止を宣言して姿を消す、という話でした。

倉本 そのときに、冠ちゃんがどうのこうのっていうんじゃなくて、いまの俳優さんたちと演出家たちとの間のギャップっていうのは感じましたね。 (あすにつづく)

(聞き手・碓井広義)

▽くらもと・そう 1935年1月1日、東京都生まれ。東大文学部卒業後、ニッポン放送を経て脚本家。77年北海道富良野市に移住。84年「富良野塾」を開設し、2010年の閉塾まで若手俳優と脚本家を養成。21年間続いたドラマ「北の国から」ほか多数のドラマおよび舞台の脚本を手がける。

▽うすい・ひろよし 1955年、長野県生まれ。慶大法学部卒。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。現在、上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。笠智衆主演「波の盆」(83年)で倉本聰と出会い、35年にわたって師事している。





ドラマへの遺言 (新潮新書)
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デイリー新潮で、「素人のど自慢番組」について解説

2018年01月15日 | メディアでのコメント・論評


プロの歌手よりよっぽど上手い
“素人のど自慢”番組が大人気のワケ

音楽番組が減った――と言われて久しいが、“素人のど自慢番組”はむしろ増えている。

年明け1月3日には「全日本歌唱力選手権  歌唱王」(日本テレビ系)がおよそ4時間半に亘って放送され、翌4日には「THEカラオケ★バトルスペシャル【U-18歌うま大甲子園 最強王座決定戦】」(テレビ東京系)が2時間半。他にも「のどじまんTHEワールド!」(日テレ系)、「今夜、誕生!音楽チャンプ」(テレビ朝日系)……確かにみんな歌が上手いけど、どこもかしこも、ちょっと多すぎない?

古くは「NHKのど自慢」(NHK総合テレビ・ラジオ第1)、1946年に放送開始(当時はラジオのみ)という化け物のような番組も、プロへの登竜門として、山口百恵などを輩出した日本テレビの「スター誕生!」(71~83年/日本テレビ系)などもプロの審査を経て、歌の優劣を競う番組だ。

そこへ、カラオケマシーンという単純な機械による採点で、歌の優劣を競うという斬新な番組を作ったのは、やはりテレビ東京だった。

「何点、何点、ウーッ何点ッ!」

古稀を超えても、なお喧しい司会のマチャアキ(堺正章・71歳)の声が響き渡る「THEカラオケ★バトル」。素人参加番組ながら玄人裸足の歌声を、カラオケマシーンで採点する、“採点番組”のハシリである。

審査員も演奏者も取っ払ったテレ東の企画力

「カラオケ★バトル」という特番での放送がスタートしたのは2006年9月のこと。当初は一世を風靡した歌手が自分の持ち歌でタレントと競う番組だったが、2014年4月からは「THEカラオケ★バトル」と改め、素人参加をメインに据えてレギュラー化。

番組スタート時から見ているという、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)が分析する。

「他のキー局に比べ、圧倒的に番組制作予算が少ないため、企画力で勝負するテレ東らしい番組です。『池の水ぜんぶ抜く』や『孤独のグルメ』なども金をかけずに成功していますからね。そもそも、のど自慢番組は予選などに手間はかかりますが、プロミュージシャンの音楽番組に比べたら、セットも共通、ギャラも不要で、お金がかかるのは、司会と審査員、演奏者程度。しかし、そこから審査員と演奏者の予算まで取っ払ったのがテレ東の凄さです」


「THEカラオケ★バトル」で目玉と言えるのが、「U-18大会」であり、18歳以下の素人(稀にプロも出場)が、常連の“U-18四天王”と競うシリーズだ。今年は年末に過去シリーズの再放送を流し、満を持して1月4日に特番として放送したのだが……。

その前日、1月3日に放送されたのが「全日本歌唱力選手権 歌唱王」。ちなみに日本テレビはこの日、朝7時から「箱根駅伝(復路)」をおよそ7時間に亘って放送し、夜は「歌唱王」で4時間半と、この日1日は2番組で済ましてしまったかのような編成だった。

年に1回放送される「歌唱王」がスタートしたのは13年12月9日のこと。こちらもカラオケで歌を競うのだが、採点は機械ではなく、審査員と視聴者が行う。過去4回に亘って12月に放送されていたが、今年はテレ東にぶつけるかのように1月に放送された。

パクられるテレ東

「企画力で人気となったテレ東の番組は、業界全体の業績が落ちてくると、他局がマネするようになってきました。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』しかり、『カラオケ★バトル』もそう。なぜ、プロの音楽番組がなくなる一方で、素人の“のど自慢”が同時多発的に増えてきたたかといえば、テレビ局としては作りやすいこともありますが、日本でも大人気となり、紅白にまで出場した英国のスーザン・ボイルも09年の素人オーディション番組からの出身という流れもあるでしょうね。そしてなにより、安定した数字が取れるから」(碓井教授)

確かに「歌唱王」の場合、常に12%以上の数字を上げている。

「それは視聴者側も求めているからです。いまどきのプロと言われている“集団”よりも、よっぽど上手い素人が多く、聴き応えがあります。選曲も、流行っているのかどうかすら分からないような曲ではなく、誰もが知っている、時代を超えて残った名曲が多い。そこにある種の“ドキュメント”という要素も加わります。なおかつ、カラオケという敷居の低さも、入り込みやすいところでしょう」(碓井教授)

すでにこれらの番組出場からプロになった歌手も多い。また地元で1日警察署長を務めたり、セミプロ状態の出場者まで出ているほど。

カラオケマシーン攻略が鬼門

「ただし気がかりなのが、草分けの『THEカラオケ★バトル』ですね。採点が機械ということもあり、最近では出場者が高得点を得る攻略法を学んでいるのか、100点満点が続出してます。なんだか歌唱法が似たりよったりで、個性がなくなってきているように思えるんですよね。今回は日テレの『歌唱王』のほうが、個性があって聴き応えがありました」(碓井教授)

テレ東もテコ入れが必要かも。

(デイリー新潮 2017年1月13日)


亀梨和也演じる「ダークヒーロー」が暴く、テレビというメディアの「暗黒面(ダークサイド)」

2018年01月14日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


1月クールのドラマが続々とスタートしています。亀梨和也主演『FINAL CUT(ファイナルカット)』(フジテレビ系)も9日に第1話が放送されました。

関西テレビが制作する火曜夜のドラマ枠は、昨年の草なぎ剛主演『嘘の戦争』や小栗旬主演『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』など、見応えのある作品を並べてきました。さて、今回の『FINAL CUT』ですが・・・。

亀梨和也が挑む復讐劇

何よりも「復讐劇」であること。何者かに家族の命を奪われた過去をもつ少年が、その恨みを忘れずに成長し、仇(かたき)に対して復讐を敢行する物語です。草なぎさんの『戦争』シリーズと構造がよく似てますね。このドラマの主人公・中村慶介(亀梨和也)の場合の家族は、母親の恭子(お久しぶりの裕木奈江)です。

12年前、恭子が経営していた保育園の園児が殺害される事件が起きました。百々瀬塁(藤木直人)が司会のワイドショー番組『ザ・プレミアムワイド』は、恭子を完全に「犯人あつかい」して追いつめます。その結果が恭子の自殺でした。

恭子への執拗な取材を行っていたディレクター・井出正弥(杉本哲太)は現在、『ザ・プレミアムワイド』のプロデューサー。しかし、番組を牛耳っているのは人気キャスターとして君臨する百々瀬のようです。

また慶介は、第1話ですでに「事件の真相の鍵を握る姉妹」に接触していました。かなり早い展開です。姉は美術館の学芸員・小河原雪子(栗山千明)、妹は若葉(いつの間にか18歳の橋本環奈)。慶介は2人に別の偽名を教えていて、特に雪子との関係を深めようとしています。この辺りも、やはり『戦争』シリーズを想起させますね。

新たなダークヒーローの登場

近年の亀梨さん主演のドラマには、深田恭子さんが亀梨さん演じる年下のダンサーと恋に落ちる『セカンド・ラブ』(15年、テレビ朝日系)や、「ヤンチャな怪盗」を演じた『怪盗山猫』(16年、日本テレビ系)などがありました。

特に後者の亀梨さんは、悪いやつから金を盗むだけでなく、悪事も暴いてしまうダークヒーロー。それでいて、仲間の里佳子(大塚寧々)や勝村(成宮寛貴)や真央(広瀬すず)などといる時の山猫は、まるで手のつけられない悪ガキみたいな青年でした。

この増幅キャラのおかげで、山猫の本性は容易につかめません。また途中までは謎だらけで、誰と誰が裏でつながっているのか、その意外性も物語を刺激的にしていました。

今回の亀梨さんは、感情を表に出さず、内なる怒りをエネルギーに生きる主人公を、しっかりと造形しています。

復讐のためならどんなこともいとわない意志と実行力。その一方で、復讐の果てにあるはずの“荒野”というか、“虚無”というか、深い絶望が待っていることも、どこかで覚悟しているような雰囲気をまとっています。新たなダークヒーローの登場と言えるでしょう。


「これがあなたのファイナルカットです」

最初のターゲットは井出(杉本)でした。慶介は、井出を撮影した映像を編集し、その「ネガティブな実像」を強調するような内容に仕立てたものを本人に見せて、自分がやったことの痛みを突きつけます。

実際、テレビにおいては、それなりの「印象操作」が可能です。母親を「映像」で死に追いやった相手を、同じく「映像」で追い詰めていくところが見せ場でした。

慶介の決め台詞は「これがあなたのファイナルカットです」。普通、「ファイナルカット」は映像作品の最終編集版、もしくは、これ以上は手を加えない完成版といった意味合いで使われます。このドラマでは、井出など復讐対象者が最後にさらす、その「無残な姿」を指しているようです。

前述のように、『ザ・プレミアムワイド』はワイドショーです。番組自体が「正義の味方」となり、慶介の母・恭子を殺人犯として視聴者に提示し続けました。実際にはどうだったのか。真犯人はいるのか。それはどんな人物なのか。といった疑問は、今後徐々に明かされるはずです。

次に「ワイドショー」というものについて、少し考えてみたいと思います。

ワイドショーの特色

ワイドショーを作っているのは、報道のプロである報道局ではなく、制作局です。報道局であれば、「曖昧」なために取り上げないか、「躊躇」するであろうネタであっても、<疑惑>という形で放送することがあります。

また、報道局では常識であるはずの「裏取り(事実確認)」や、「取材手順の遵守」が十分ではないことが多い。基本は、良くも悪くも“視聴者目線”です。

最近の視聴者は「自分以外の人間が不当に得をしている」という不公平に敏感ですから、不正に対する「正義感」を前面に押し出した報道は、視聴者の支持を得やすい。ドラマの中の『ザ・プレミアムワイド』もそうですね。

テレビ取材では、話した内容を、取材側が自由に編集し、意味付けを行います。結果、放送内容が、実際に話した内容や全体の文脈を意図的に捻じ曲げ、視聴者に誤解を与えるような「仕上がり」だったりすることがあります。

皆が知りたいと思うこと、サプライズがあること、画があること、そして独占的映像(スクープ)があれば最大限に生かそうとするのは、ワイドショー最大の特色でしょう。

整理すると・・・

●テレビは、論理的なメディアではない。
●テレビは「印象」を伝えるメディアである。
●テレビは「想定した構図」「ストーリー」に沿って作られる。
●テレビは、いわば「はめ絵」である。
●テレビでは、撮られたもの全てが取材側の「素材」となる。

「内容のわかりやすさ」と「整理」の仕方、映像と音で伝わる「見た目のわかりやすさ」が、ワイドショーの基本です。それが間違った方向で駆使された場合、慶介の母親のような悲劇が起きることもあるのです。

今後の展開

今後の『FINAL CUT(ファイナルカット)』は、当然、慶介の復讐が続くことになります。『ザ・プレミアムワイド』の百々瀬キャスター(藤木)。ヤリ手ディレクターの真崎久美子(水野美紀)。12年前はADで、現在はディレクターの小池(林遣都)。

他にも女児殺害事件の鍵を握るという雪子(栗山)と若葉(橋本)の父親で、弁護士の小河原達夫(升毅)。さらに、かつて事件を担当していた刑事で、警察官になった慶介の上司でもある新宿中央署副署長・高田(佐々木蔵之介)も何やら怪しい。

慶介は、複数のターゲットに、それぞれどんなアプローチで復讐していくのか。その復讐の過程で、慶介の中にどんな変化が起きるのか。そして復讐の果てに何を見るのか。さらに、テレビというメディアの「暗黒面(ダークサイド)」がどこまで描かれるのか。注目したいと思います。