碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

日刊ゲンダイで、紅白司会「橋本環奈」について解説

2023年01月06日 | メディアでのコメント・論評

 

 

 

橋本環奈を

「紅白司会」に起用したNHKの慧眼

一部マスコミの

“密約”邪推を吹き飛ばす圧倒的な力量

 

大みそかに行われた「第73回紅白歌合戦」で司会を務めた橋本環奈(23)を評価する声がやまない。橋本は大泉洋(49)、嵐の桜井翔(40)、桑子真帆アナ(35)ら、司会経験者を前に初司会ながら堂々の進行ぶり。〈ハキハキとしていて小気味良かった〉〈優勝は紅組でも白組でもなくて橋本環奈の一人勝ち〉など、ネット上は絶賛のコメントであふれている。

番組冒頭のトークで橋本は、「楽しみですね~」と満面の笑みで登場。「緊張は……してないんだよね!?」と大泉に振られると、「まだ(ニッコリ)。(幕が)開いたら緊張するかも知れない」と言いながらも、目を輝かせて心底ワクワクしているオーラが全開。その後もよどみない曲紹介、大泉との掛け合いなど、明るい雰囲気で場を盛り上げながら、約4時間半の長丁場をほぼノーミスで完走。途中、何度も出場者とのダンスにも参加していた。

例年、紅白の司会は、朝ドラや大河の出演女優など“功労者”が務めるのが慣例だが、橋本の異例の起用には当初、周囲はザワついた。

「『ちむどんどん』の黒島結菜、『カムカムエヴリバディ』の上白石萌音、『鎌倉殿の13人』の小池栄子などが本命視されていたので、今後の朝ドラや大河出演への“密約”を邪推したメディアもあった。広瀬すずや有村架純、綾瀬はるかなど、毎年、緊張しすぎだったり、天然だったり、女優の司会は何かと話題となるが、フタをあけてみれば、圧倒的な力量を見せつけた格好となった」(スポーツ紙芸能担当記者)

早くも“長期政権”の可能性を報じるメディアさえ登場しているが、メディア文化評論家の碓井広義氏も驚きを隠さない。

「緊張しすぎず、笑顔を絶やさず、大泉のことや出演者もフォローしつつで、安心して見ていられました。大御所の郷ひろみ相手に踊ったりしていましたが、進行とダンスなど演じることを素早くスイッチすることも容易ではありません。彼女は、今回の紅白の一番の収穫と言ったら言い過ぎでしょうか。しかし、彼女の潜在能力を見抜いた上での起用なら、これはNHKの慧眼と言っていいと思います」

橋本は2013年、地元福岡のローカルアイドル「Rev.from DVL」で踊っていた「奇跡の一枚」の写真がネットにアップされるや“1000年に1人の逸材”として話題となり一気にブレーク。その後、圧倒的な好感度を武器に、女優、バラエティー、CMと順調に駆け上がり、10年足らずで紅白の司会にまで上り詰めた。

憧れは戸田恵梨香

ブレーク直後の15年、すでに10社近くのCMに出演し“次世代CMクイーン”と呼ばれていた彼女を取材したアイドル雑誌関係者はこう話す。

「当時、16歳でしたが、10代とは思えない落ち着きがあり、かつ機転が利いていて、すでに大物のオーラが漂っていました。これは単なるアイドルで終わる感じじゃないなと思ったことを覚えています。小学生の時から戸田恵梨香に憧れていることやハスキーな声がコンプレックスであることなどを話していました。『20歳になったらどうしていたい?』の問いには、『何事にも挑戦して、(いつまでも)好奇心旺盛でありたい』と答えていましたが、それを見事に体現してみせましたね」

一夜にして評価爆上げの橋本。卯年の今年は年女。脱兎の勢いで更なる高みへ駆け上がりそうだ。

(日刊ゲンダイ 2023.01.05)


【気まぐれ写真館】 庭の梅、咲く。

2023年01月05日 | 気まぐれ写真館

2023.01.05


日刊ゲンダイで、「紅白歌合戦」について解説

2023年01月05日 | メディアでのコメント・論評

 

 

視聴率は歴代ワースト2位

土俵際に立たされたNHK紅白の存在意義

歌合戦から

「国民的音楽番組」への転換期だが…

 

東京・渋谷のNHKホールで3年ぶりに有観客で行われた「第73回紅白歌合戦」。司会は3年連続となる大泉洋(49)に加え、橋本環奈(23)、嵐の桜井翔(40)、桑子真帆アナ(35)。テーマは「LOVE&PEACE~みんなでシェア!~」だった。

前回は、番組テーマを多様性やジェンダーフリーを意識した「カラフル」に設定し、司会の総合・紅・白の区分を廃止。常連のベテラン演歌歌手は出演させず、音楽配信市場で話題となった若手を出演させるなどしていたが、今回もその路線を踏襲していた。

メディア文化評論家の碓井広義氏はこう話す。

「ここ何年か紅白のあり方がいろいろ言われていた中で“紅白改革中”の心意気は伝わってきました。大健闘と言えるでしょう。歌という本来、優劣が付けられないものを、無理やり、対抗軸を作って対決させることにも違和感が持たれていましたが、今回は前回よりさらに“合戦色”を弱めていました」

平均世帯視聴率は第1部(午後7時20分~8時55分)が31.2%、第2部(午後9時~11時45分)が35.3%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)。第2部は、前回より1ポイント増え、前回の過去最低視聴率は辛うじて回避したというが、それでもワースト2位である。

「過剰な演出もなく、基本は歌をきっちりと聴かせる歌番組になっていた点は評価でき、安心して見ていられました。若者向けの歌い手と、中高年を意識した歌手を交互に出すなど、構成やバランスはよかったと思います。ダンスやアニソンなども取り入れ、会場や視聴者との一体感を大切にしながら、今の音楽を幅広くキャッチできる見本市になっていました。大きな番組ですから、急にハンドルは切れないとは思いますが、いつかは現在の“歌合戦スタイル”から、シンプルな“国民的音楽番組”に向かっていくといいと思います」(碓井氏)

一部メディアを除きリハーサル取材から完全シャットアウト

“歌をしっかり聴かせる音楽番組”に徹していた点については、同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏も評価する。

「地上波民放各局が『逃走中』『鬼退治』と及び腰で臨んだ年越しで、あえて“逃げずに”紅白の王道を死守したことは及第点に値するでしょう。内容的にもトークや人物紹介などで時間を費やすことなく、シンプルに歌をしっかり聴かせていた。

中でも印象に残ったのは、司会では橋本環奈さん、歌手では篠原涼子さん。橋本さんのMC力は予想以上でしたし、篠原さんはドラマ『silent』で目黒蓮さんのお母さん役で暗い役どころを好演していただけに、紅白では衰えぬ歌唱力を見せたのも若者も関心を持つ演出だった。紅白のジェンダー問題も『蛍の光』を先に流し、最後の最後で結果発表することで勝負の印象を弱める演出もさすがでした」

しかしながら、影山氏は、そのあり方には課題も見えるとしてこう続けた。

「ただ今回は情報をかなり絞っていたせいか、若者の見るようなLINENEWSなど、SNS系のニュースにも紅白の話題が上がっていないのが……。情報をもっとオープンにしていたらもう少し拡散できたのでは。今回は粘り腰でも、これを何年も続けるわけにはいかず、変革を求められているのは確か。次のステージを考えるべきときは目前ではないでしょうか」

実は今回からスポーツ紙など一部のメディアを除き、日刊ゲンダイを含む雑誌やWEB媒体などはリハーサルなどの取材から完全シャットアウトだった。ヨイショだらけのちょうちん記事を垂れ流すメディアだけを選別するとは“みなさまのNHK”という公共放送の原点が疑われる由々しき事態である。

「国民的音楽番組」に向け変革中であるなら、大衆に向けてオープンであることが必須条件。NHK紅白はその存在意義も含めてすでに土俵際、いや徳俵に足がかかっていることを自覚すべきだ。

(日刊ゲンダイ 2023.01.04)


【気まぐれ写真館】 初詣

2023年01月04日 | 気まぐれ写真館

 


【気まぐれ写真館】 新宿散歩

2023年01月03日 | 気まぐれ写真館


【書評した本】 山崎努『「俳優」の肩ごしに』

2023年01月02日 | 書評した本たち

 

 

架空の「他者」を演じる時

どう折り合いをつけていくのか

 

山崎 努『「俳優」の肩ごしに』

日本経済新聞出版 1,650円

 

俳優というのは不思議な職業だ。舞台や映画やテレビドラマで登場人物を演じることで成立する。いわば「他者」になるのが仕事だ。

その時、本人の中で実在の自分と架空の誰かの関係はどうなっているのか。以前から知りたいと思っていた。

本書は著者初の自伝だ。しかし幼少期から86歳の現在までの軌跡を綴った、単なる回想記ではない。独自の俳優論や演技論が披露されていく。

まず、「役柄」について。数えきれないほどの出演作があるが、役を自分で選んだことは一度もない。それは「突然天から降ってくるように与えられるべき」だからだ。

人は自分が望む環境に生まれるわけではない。他者から与えられた諸々の条件や、決まった枠のなかでやっていくしかない。その意味で、実人生と俳優業の原理は似ており、「そこがおもしろい」と言う。

また、「演技」に関しても自身の性格との重なりがある。演じる人物が持つ「世の中とうまく折り合えない部分」を見つけて、そこからキャラクターに入っていくのだ。

俳優養成所で学んでいた頃から、わかり易く説明過剰な演技への違和感があり、周囲と折り合えなかった山崎。初舞台での感想も「自分の仕事、自分の人生が世界の中心と思うようなバカになってはアカン」だった。

出世作となった黒澤明監督『天国と地獄』で演じたのは、誘拐犯の竹内銀次郎。

狭いアパートの窓から見上げる豪邸で暮らす、権藤金吾(三船敏郎)を憎むあまりの犯行だった。竹内の「青臭い心情」や「持て余している苛立ち」には、若き日の山崎自身が投影されていたのだ。

本書では黒澤作品はもちろん、和田勉演出『ザ・商社』や山田太一脚本『早春スケッチブック』といった名作ドラマ、さらに『ヘンリー四世』や『リア王』などの舞台作品についても語っている。

「与えられた役柄のなかで生きている」俳優であり人間である、山崎努がそこにいる。

(週刊新潮 2022年12月22日号 )


謹賀新年2023

2023年01月01日 | 日々雑感

 

 

謹賀新年 2023

 

あけまして

おめでとうございます!

 

本年も、

どうぞよろしく

お願いいたします。

 

2023年1月1日

碓井広義