ヨコハマキャラメル
・迷ったときはやる
・ラクできる方法を探す
・やりたいことを生活の中心に据える
・やる前からごちゃごちゃ言わない
和田秀樹「私が大切にしている10のこと」
『文藝春秋』2024年1月号
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和田秀樹「私が大切にしている10のこと」
『文藝春秋』2024年1月号
三拍子そろったVTRの出来の良さ
「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」
この春、5周年を迎える「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」(NHK)。今やNHKを代表する教養バラエティ番組となっている。
司会の有吉弘行とカネオくん(声は千鳥ノブ)やゲストとのやり取りが楽しいが、番組を支えているのはそれだけではない。何よりカネオくんの突撃調査、つまり取材VTRの出来の良さがある。
先週は特別編として、いくつかの「製造工場」を見せていた。たとえば、静岡県の工場では毎日20万丁もの豆腐を生産している。
大豆を水にひたす、豆乳の抽出、同じサイズに切るなどの工程を追っていたが、驚いたのは専用ロボットによるパック詰め。容器に豆腐を入れるのではなく、豆腐に容器をかぶせていくのだ。
また、ケーキ工場では1500万円の「卵割りマシン」が、1日に50万個の卵を処理。次に5000万円の「超ロングオーブン」がスポンジを焼き上げるが、仕上げは機械と職人の協働作業となる。
しかもショートケーキにイチゴをのせるのは、型崩れしないよう、店に到着してから行っていた。そんな工夫も小さな発見だ。
綿密な取材。丁寧な編集。わかりやすい説明。三拍子そろったVTRをより完璧なものにしているのが、視聴者の驚きや疑問を代弁するノブの話術と、明瞭かつキュートで耳に心地いい小坂由里子のナレーションだ。
長寿番組の秘密はこういうところにもある。
(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.02.13)
肝心なのは
何を手に入れるかじゃなくて
何を捨てるかなんだ。
ソール・ライター
『All about Saul Leiter ソール・ライターのすべて』
連続テレビ小説『ブギウギ』の第19週(2月5日~9日)。
愛助(水上恒司)を失った悲しみを抱えつつ、歌手としての復活へと向かうスズ子(趣里)が描かれました。
強く印象に残ったのは、スズ子を支えてくれる人たちの存在の大きさです。
スズ子に頼まれた新曲に取り組む、羽鳥善一(草彅剛)。
初めての育児で手いっぱいのスズ子を見て、「きょうのあなたの仕事は休むこと」と家事を引き受けてくれた、羽鳥の妻・麻里(市川実和子)。
愛子を引き取りたいという申し出を断られても、困った時に助けるのは「当たり前や」と言ってくれた、愛助の母・トミ(小雪)。
弱っているはずのスズ子を励ますために香川から上京し、「孫より我が子のほうがどんだけ可愛いか」と語っていた、父・梅吉(柳葉敏郎)。
そして、「私は、(自分の子どもに)こんなまねできなかったから」と、スズ子の稽古中に愛子の面倒をみてくれた、先輩歌手・茨田りつ子(菊地凛子)もいました。
多くの人たちの後押しで、歌手・福来スズ子は再びステージに立つことになったのです。
ドラマでの羽鳥は、満員電車に揺られている最中に、ブギのリズムとメロディがひらめきました。
これは、ほぼ実話です。
モデルである作曲家の服部良一は、昭和22年夏のある日、都心から西荻窪の自宅に帰るため、中央線の電車に乗っていました。
その頃の服部は、笠置シヅ子から頼まれた新曲のことが頭から離れません。
情緒たっぷりの哀しい歌ではなく、明るくて楽しい流行歌を作りたいという思いがあり、それが「ブギ」でした。
車内で揺られていた服部の中で、ある瞬間、レールの震動とエイトビートのリズムがシンクロしたのです。
電車を降りて駅近くの喫茶店に入り、紙ナプキンに音符を書き込む服部。ドラマと同じです。
もちろん、まだ歌詞はありません。服部は、上海時代に親しくなった同盟通信社の記者・鈴木勝に作詞を依頼します。
鈴木は、仏教学者の鈴木大拙の養子。日英ハーフのバイリンガルであり、独特の感性を持つ人物でした。服部は、そこに期待したのです。
昭和22年(1947)の9月10日、コロンビアのスタジオで「東京ブギウギ」のレコーディング。
録音室には、これもドラマと同じく、近くの米軍クラブから下士官たちがギャラリーとして来ています。異例のことですが、鈴木の声かけによるものでした。
GIたちは、シヅ子の強烈な歌声とブギのサウンドに合わせて体を揺らし、歓喜したのです。
同じ9月に、大阪の梅田劇場のショーに出演したシヅ子は、そこで「東京ブギウギ」を初披露し、拍手喝さいをあびます。
ドラマでは、「東京ブギウギ」初披露は昭和23年(1948)1月の東京。「日帝劇場」でのワンマンショーになっていました。
楽屋で、愛子にキスをしているスズ子。
そのかたわらにいて、「あなたの下手な歌を、お客さんが待ってるでしょ?」と声をかけたのは、りつ子です。
すると、そこに羽鳥が顔を出しました。
「僕だって早く指揮棒振りたくてズキズキワクワクしてるんだ。さあ、行こう! トゥリー、トゥー、ワン、ゼロ!」
羽鳥に促されたスズ子が、愛子に言います。
「お母ちゃん、お客さんとズキズキ、ワクワクしてくるわ!」
この場面は、昨年10月2日に放送された、第1話の冒頭で描かれていたエピソードであり、ここでしっかりとつながったのです。
ステージに飛び出したスズ子。その躍動感にすべての観客が巻き込まれていきます。まさに「ブギの女王」誕生の瞬間でした。
そして、羽鳥が言っていたように、「東京ブギウギ」はスズ子の復興ソングであると同時に、日本の復興ソングになっていきます。
「週刊新潮」に寄稿した書評です。
新津きよみ『猫に引かれて善光寺』
光文社文庫 770円
長野市で一人の女性が殺害される。目撃者はニシンという飼い猫だけだ。松本市に住む主婦・清水真紀は、あるきっかけでニシンを預かった。同時に、この事件の真相を探ることになる。素人探偵の推理劇はもちろん、松本の喫茶店「まるも」など地元のスポットが実名で登場するのも本書の楽しみだ。大町市出身で松本の高校を卒業した著者ならではの文庫書下ろし〈信州ミステリー〉である。
荒俣宏『福翁夢中伝』上・下
早川書房 各1980円
奇想の評伝小説である。年齢もキャリアも異なる複数の「福澤」が、時間や空間を超越して自らの歩みを語るのだ。時には福澤青年が老年の福澤を叱ったりする。勝海舟との確執や大隈重信との皇室談義など刺激的なエピソードが並ぶが、語り手は福澤だけではない。「作者」と称する人物まで登場し、福澤の言説にツッコミを入れていく。塾員(慶應OB)である著者による令和版『福翁自伝』だ。
坂本龍一、中沢新一『新版 縄文聖地巡礼』
イースト・プレス 2420円
2004年からの数年間、坂本と中沢は全国各地の縄文遺跡を訪ねる「巡礼」の旅をした。青森の三内丸山遺跡に始まり、諏訪、若狭・敦賀、奈良・紀伊田辺、山口、鹿児島と巡り、再び青森へと向かう。諏訪では「生命力のある死」を感じ、紀伊田辺では「未来に向かっての縄文文化」のモデルとしての南方熊楠を語り合う。現地に立ったからこそ生まれた刺激的な対話は、20年後の今も多くの示唆に富む。
早川義夫『海の見える風景』
文遊社 1980円
早川と仲間たちが1968年に出したアルバム『ジャックスの世界』を聴いた人も、後に書店主となって書いた『ぼくは本屋のおやじさん』を読んだ人もいるはずだ。本書は妻を亡くしたことをきっかけに、海辺の町で一人暮らしをしている著者のエッセイ集である。綴られているのは、愛すべき偏屈男の日常と妻への思いだ。行間には静かな諦念と小さな希望が漂い、不思議な温もりを感じさせてくれる。
(週刊新潮 2024.02.08号)
秀逸なおっさんの成長物語
「おっさんのパンツが
なんだっていいじゃないか!」
東海テレビ・フジテレビ系「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」は、今期出色の深夜ドラマだ。
主人公の沖田誠(原田泰造、好演)はリース会社の室長。「男が上を目指さないでどうする!」などと部下を叱咤してきた。しかし、本人には当然の言動も、部下たちにとってはパワハラやセクハラだったりする。
家庭内でも同様で、妻の美香(富田靖子)には愛想をつかされ、娘の萌(大原梓)には煙たがられ、息子の翔(城桧吏)には全否定される始末。特に、ひきこもりで、「男らしさ」の強制を嫌う翔が悩みの種だ。
そんな誠が翔の慕う大学生、五十嵐大地(中島颯太)と出会う。ゲイである大地から勧められたのが「モラルのアップデート」だった。
だが、凝り固まった偏見をなくし、倫理観とマナーを更新することは簡単ではない。失敗を重ねる誠の姿に、見る側もつい自身を投影してしまう。おっさんの成長物語として秀逸だ。
ある日、誠が気づく。性別や性的指向は「おっさんのパンツ」みたいなものだと。
何をはいても誰の迷惑にもならない。プライベートなことであり、公表する必要もない。それに家族だって違う人間だ。他者が大事にしているものを自分の尺度で否定してはいけない。
原作は練馬ジムの同名漫画。藤井清美の脚本が原作のメッセージをしっかりと伝えている。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2024.02.07)
千駄ヶ谷 2024.02.06
ようやく会えたね、
ありがとう!
そして
おめでとう!
これからの人生、
GO!GO!GO!
2024.02.06
水上恒司さんが演じた、村山愛助
第18週(1月29日~2月2日)の連続テレビ小説『ブギウギ』。
スズ子(趣里)は、大きな「喜び」と深い「悲しみ」の両方に遭遇しました。
お腹の中で大きくなっていく、赤ちゃん。
その一方で、「(病気を)絶対治して、結婚するで」と言っていた愛助(水上恒司)が、危篤に陥ったのです。
それでも最後の力をふり絞って、スズ子に宛てた手紙を書きます。
泣く、母のトミ(小雪)。
一文字ずつ、鉛筆を動かす愛助。その目元のアップ。
水上さんの静かな熱演が光ります。
その頃、スズ子は出産のときを迎えていました。痛みに耐えながら、頑張るスズ子。その顔のアップ。
そして、赤ちゃんが無事に生まれます。女の子でした。しかし、愛助は亡くなってしまいます。
愛すべき者の「誕生」と、愛する人の「死」。喜びと悲しみが交差する、荘厳な瞬間が丁寧に描かれていました。
愛助の死を知って、打ちのめされるスズ子。
「……なんで……やろ。なんで……ワテの大切な人は……早よういなくなってしまうんや……なんで……ワテも死にたい」
そう訴えるスズ子を、山下(近藤芳正)が泣きながら、たしなめます。
「あんたは……ボンの分まで生きなあかんのです! 生きてください! 頼んますわ! ワシらがでけることは何でもします! 何があっても支えますから……次に死ぬ言うたらドつきまっせ!」
ようやく、スズ子は愛助の手紙を開いて、読み始めます。
「スズ子さん、僕はスズ子さんに出会えて、ほんとうに幸せやった。約束を守れなくて、ほんとうに申しわけない。生まれてくる子が男の子やったら、名前は兜(かぶと)にしてください。僕みたいに弱い子になって欲しくないから、その名前や。生まれてくるんが女の子やったら、名前は愛子にしてください」
さらに・・・
「スズ子さん、つらいことがあったら、歌ってください。そして今、スズ子さんの横で、かわいい顔をしている赤ちゃん、見てください。その子は、僕らの宝物や。きっと、その子と一緒なら、何があっても生きていけるはずや。ほんまに……ごめんなさい」
愛助と愛子の名を呼び、手紙を抱きしめて、泣き出すスズ子。
看護婦長の東(友近)が部屋に入って来て、愛子をスズ子に渡しました。
母親を見て笑う、かわいい赤ちゃん。スズ子は涙を流しながら決心します。
「愛子、お母ちゃんな、あんたと一緒に生きるで! なあ、愛子。かわいいなあ」
スズ子の泣き笑いです。
そのあと流れたのは、以下のような映像でした。
愛助とスズ子と愛子の親子3人が、家の縁側に並んで座り、あたたかな陽光をあびています。青空の下、愛助がシャボン玉を吹き、愛子もうれしそうです。そうそう、「ラッパと娘」も聴こえてきます。
それは、ベッドで愛子と共に眠る、スズ子の夢でした。切なくも、温もりに満ちた夢。スズ子の顔には、やさしい微笑みが浮かんでいました。
愛助が命がけで書いた手紙は、スズ子と愛子の命を守り、明日へと送り出したのです。
「つらいことがあったら、歌ってください」という愛助の言葉通り、スズ子が運命の一曲「東京ブギウギ」に出会う日も、そう遠くありません。