河太郎の読書日記

本とか映画とかいろいろ

クレイ

2007-12-22 14:12:14 | 読書(小説)
アーモンド、河出書房新社。
この人の本は全部読んでいるけど、
信仰心が篤いのかそうでないのか。
私には宗教がらみの部分が理解できない。
父に死なれ、母がおかしくなったために
親戚の家に連れてこられた少年スティーブン。
主人公デイヴィッドは、彼に誘われ、
粘土(クレイ)にいのちを吹き込む儀式を行う。
人は無から生まれ、塵となって死ぬ。
しかし、塵が、いのちを持つこともあるのだ・・・
しかも、いのちを持ったその泥人形クレイが生まれてすぐ、
デイヴィたちがおそれていた飲んだくれの乱暴者モウルディが
転落死するという事件が起こる。
すべては、信仰心との葛藤のような物語。
泥人形と二人、夜道を歩き回るようなシーンが続いたあと、
ぱあっと青空に光が差して天使が舞い降りるかのようなラストシーンが
不思議な読後感を与える。
この世に神も仏もないと思っている私たち。
しかし神がいると思うことは、見えない何かと何か、誰かと誰かを
つなぎ止めているのかもしれない。
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ハリー・ポッターと謎のプリンス

2007-12-18 23:06:53 | 読書(小説)
J.K.ローリング、静山社。
2分冊だったけど、読むの早かったな。
それは子供向きで読みやすいからだろう。
主人公たちが16歳になって、
だんだん大人同様の動きを始めていて、
子供向け、という気はあまりしない。
いくつかのカップルができて別れて、
思いをこらえたり嫉妬したり、大忙しだ。
メインのストーリーは、ハリーが借りた教科書の落書きを
書いた「半純血のプリンス」とは誰か?ということと
ダンブルドア校長の、ヴォルデモート卿の過去を知る授業の顛末。
反抗期もようやく収まったようなハリー。次は、恋かよ。って感じだ。
子供が、先生をバカにしたりしても、大人をバカにするモンじゃないと
ちゃんと怒られる。16という中途半端な子供の心情をうまく綴りつつ、
大人はちゃんと子供のことを見ているよ、というメッセージも送りつつ。
ハリーは、ヴォルデモート卿が持っていないものを持っている。
それは、愛することができる、ということ。
単なる愛、ただそれだけ。
殺人が日常的に起こるような現実を生きる子どもたちに、
この言葉は、どう伝わるのだろう。
ハリーが、本当に幸せなんだ、ということが、分かるだろうか。
そして次は最終巻・・・いつ読めることやら。
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鹿男あをによし

2007-12-12 21:33:34 | 読書(小説)
万城目学、幻冬舎。
いや~、面白かった。
「鴨川ホルモー」よりも、まとまっていて良かったんじゃないかな。
どっちにしろ、漫画っぽいけど。
鴨川ホルモーや、森見登美彦の小説は、京都が舞台だけど、これは、奈良。
その土地に行ってみたくなるような小説だと、地元はいいよねえ。
神経衰弱じゃないか。と教授に言われ、大学院を休んで2学期のあいだだけ
女子高の先生になることになった、主人公。
堀田イトという女生徒に嫌われ、生徒からからかわれるあたりは、まるで「坊ちゃん」。
ある日、鹿に話しかけられ、生活が一変する。
鹿が言うには、「運び屋」となり、サンカクを受け取ってこい、というのだが、
サンカクが、何者かに奪われたらしい、ということになって・・・。
剣道の試合あり、考古学あり、けっこう盛りだくさん。
鹿と狐と鼠が、あくまで動物らしく描かれていて、よかった。
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めがね

2007-12-10 00:27:53 | 映画
荻上直子(でよかったっけ)監督。
「バーバー吉野」も「かもめ食堂」も見ているのは、たまたま。
たまたまついでに、新作と言うから、見てみた。
う~ん?
なんで、「めがね」なんだろう?
前2作は、もたいまさこが、あやしげな空気をちょっぴり送り込んでいたけど、
今度のは、もたいまさこの世界に、旅人が迷い込む感じ。
でも、小林聡美は、くっきりはっきりしすぎて、なじんだふりしてたけど、
あんまりなじんでるようには見えなかったな。
ストーリーは、黄昏れる(お、変換できるんだ)旅人が多いその島にやってきた女性が、
その島、というか、毎年春に訪れるさくらさんのペースに巻き込まれていく。
登場人物はこの2人のほか、ホテルのオーナーとその飼い犬、近所の学校の生物の女教師、
小林を「先生」と呼んで迎えに来る青年の5人(と1匹)、あとは島の人。
落としどころはよくわからんかったよ。
まあこれは、なぜ吉野刈りなのか、なぜハレルヤなのか、というのと一緒か。
かもめ食堂は、原作があったのが、良かったんだろうな。
食べ物は、相変わらずおいしそうだったねえ。梅干しは、難逃れかー。
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有頂天家族

2007-12-08 20:42:52 | 読書(小説)
森見登美彦、幻冬舎。
連投ですな。
いや~、こういうの、大好きだ。
下鴨家の4兄弟は、雷の嫌いな母を守って、父なき後を生きている。
四角四面で肝心なときダメダメな長兄矢一郎、引きこもりの次兄矢二郎、
楽しいことが大好き、語り手の矢三郎、まだまだひよっこ末弟矢四郎。
こいつら、狸。父は、狸鍋になって食われてしまった。
で、父の弟の子どもたち、ライバル金閣・銀閣兄弟と妹海星とか、
ダメダメ天狗赤玉先生とか、天狗に弟子入りし師匠を超えた人間の女、弁天とか、
7年に一度狸鍋を食う金曜倶楽部だの、狸と人間と天狗が入り乱れての大混乱。
蛙になって井戸に引きこもっちゃった次兄の物語が、切ない。
最後の章で、父に一番よく似ているという語り手矢三郎の言葉で立ち直り、
叡山電車をかっ飛ばす。いいねえ、家族愛。
人間では、もうこうした物語は語れないのか・・・。
教授だの、天狗だの、「大日本天狗党絵詞」を彷彿とさせる。
すべて吹き飛びはちゃめちゃのまま大団円、は近いものがある。
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