散歩するなべさん

しょうがなくも所在なく散歩するなべさん。近頃野鳥に目覚めて鳥見お散歩の日々。病気もしたけど時には山歩きに物思い旅ね。

たまには読みやすい文章で・古井由吉

2009-12-12 17:59:46 | 

古井由吉の「人生の色気」という本を読みました。
インタビューでの語りの本であるから、読みやすい。





なべさんは、作家古井由吉のファンである。
古い昔、「杳子」を読んだとき、「これは古典になる作品だね」
と思ったものであります。

以来古井の作品を愛読しています。
(でも、最近は、読みづらくって大変なのね。)

「聖」「親」「栖」の頃は、読んでいて実にスリリングな気分でした。
古井の作品は、おおむね、山を下りてきた主人公が市井に紛れていく、
しかし、気分はまだあちらの世界から抜けきらず、
あちらとこちらの世界を境目も定かならず漂っている、
という雰囲気のものです。(当たっていますかね?)

この漂いぶりは、その後文体そのものに深くしみ通っていって、
一方で快楽になっていくのですが、
一方でははなはだ文章をわかりづらくもしていって、
読者にはつらいものとなっていきました。
それでも、なべさんは、
「いろんな小説を捨てていって
最後に残るのはやはり古井の小説だね。」
と思っているのです。

この当たりの経緯を古井自身が語っている部分があって、
「ふむふむそうやろう」と、はなはだ興味深かったですね。
「80年の節目に『流行作家』になるのを断念した。」
というところです。
たしかに読者としても思い当たることがありますよ。

普段読みづらい古井の小説を読んでいるものとしては、こうして、
たまに読みやすい形で古井の世界に触れるのはありがたかったです。
語りとはいえ、
「軒の下から暮れてくる」「生死の境目から言葉は生まれる」
など、最後の段になってくると、古井自身が興に乗って、
その世界をヴォルテージ高く語っています。

なかなか圧巻でありました。


(温泉ばっかりでなく、たまにはこんな話もネ。)

コメント
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