内的自己対話-川の畔のささめごと

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現在の行為の過去への遡及力 ― ジルベール・シモンドンを読む(144)

2016-11-02 00:00:00 | 哲学

 昨日読んだ箇所の直後にデカルトへの言及が見られる。

Descartes, en prenant la générosité comme fondement de la morale, a bien révélé ce pouvoir de l'acte de se prolonger au-delà de lui-même. Mais, voulant fonder une morale provisoire, c’est-à-dire une morale qui regarde seulement en avant, il n’a pas indiqué la force rétroactive de l’acte, aussi importante que sa force proactive (p. 334).

デカルトは、高邁を道徳の基礎とすることによって、己自身を超えて延長されるという行為のこの力をよく明らかにした。しかし、暫定的道徳、つまり、ただ前方だけを見る道徳を基礎づけようとしたので、デカルトは、行為のもつ遡及力を示さなかった。しかし、それは、行為の前進力と同じだけ重要である。

 デカルトの道徳論に対する評価としてこの見解が妥当性をもっているとは到底思えないが、その点についてはいずれデカルト哲学のスペシャリストに教えを乞うことにして、今ここで言えることは、シモンドンがここで論点として提示している行為の遡及力という問題は、デカルトの道徳論に対してのみ提起されるべき問題ではないだろう、ということである。そもそも、行為の遡及力とは、どのような力なのであろうか。どのような意味で、どのようなとき、どのようにして、過去に遡ってそれに働きかける力を現在の行為に認めることができるのだろうか。