学生たちからの質問メールはほとんどがフランス語ですけれど、マスターのよくできる学生は日本語で質問を書いてきます。少なくともこちらが質問内容を理解できる程度にはしっかり書けていますし、ときにはなかなか見事に日本語を使って見せてくれます。そういう学生には、もちろん日本語で答えを返します。できるだけ平易な表現を使い(つまり、哲学ブログでのくそ難しい表現はすべて避けます、はい)、簡潔に答えます。
ちょっと込み入った返答が必要なときは、授業の後などに口頭で、日本語あるいはフランス語で補足します。彼らの表現の中に、彼らの日本語能力について何の予備知識もない日本人が読んだり聞いたりしたら、ちょっと気分を害するかもしれないような誤った表現があるときは、詳しく理由を説明して、注意を促します。
学部学生は、まあフランス語でのコミュケーションが普通なのですが、ときどき、必ずしも日本語がよくできるわけではないけれど、とにかく日本人である私には日本語でコミュケーションを取ろうとする健気な学生がいます。
学部二年生の女子学生の中にそんな子が一人いて、この間の中間試験の成績も20点満点で8.3とぱっとしなかったのですが、中間試験前まで毎週行った5回の漢字の小テストの平均点は、16点(20点満点)と結構頑張っていました。そんな彼女が、先週金曜日、今学期初めて私の授業を欠席したのですが、その日のうちに診断書が添付された日本語のメールが届き、「今日受けられなかったテストはどうしたらいいですか」と聞いてきました。
翌週の金曜日の午前中の授業の直後に、日本学科の教員室(どう贔屓目に見ても、日本の大学で言うところの研究室という名称は値せず、四人で満席になる小さな職員室を想像してください)で受けられますと、「学科の教員室」とは日本語で書かずに、« bureau du département » とそこだけフランス語にして、日本語で返事を送りました。
そしたら今朝来た返事が、「私は午前11時から département の bureauで存在するであります。ありがとうございます」、であった。思わず大声を出して笑ってしまった。なんとカワイイ返事じゃありませんか。 « être » を辞書で引いたら、「存在する」ってあったんだね。それをそのまま使って、しかも丁寧な表現にしなきゃいけないと思って、「あります」って付けたんだね。ありがとネ。