内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

日本古代史中間試験問題 ― 君は大陸からのトライ人、その〈外〉なる個の眼差しが見た日本

2017-11-11 20:20:50 | 講義の余白から

 今日はアルミスティス(第一次世界大戦休戦記念日)で国民の祝日だが、土曜日だからありがたみはない。そのせいでプールも休み。もっとも、風邪をひいてしまったから、仮に今日開いていたとしても、大事をとって行かなかっただろうけれど。
 昨晩は、なんとなくだらだらとビデオを見ていて十二時近くにようやく就寝した。しかし、微熱と背中の鈍痛のせいで結局熟睡できないまま朝を迎える。五時に合わせてある目覚ましでいつものように一度眼を覚ましたが、だるくて起きる気になれない。でも、答案の採点はどうしてもやらなくてはならない。六時前にはなんとか起き上がる。
 仕事関係のメールを一通り処理してから、採点作業に取り掛かる。しかし、効率がひどく悪い。すぐに疲れる。集中できない。予定の半分もこなせないうちに夕方になってしまう。
 朝からずっと降り続ける冷たい細雨が窓前の樹々の葉を間歇的に揺らしているのを二重窓越しにまるでサイレント映画を見るようにぼんやりと眺めては溜息をつく。
 昨日は、日本古代史の中間試験だった。問題は、前日の文学史の問題ほどは論理的思考力を要求する設問ではないが、歴史的想像力は発揮してもらいたいというのが出題意図であった。

 あなたは日本への永住を決意して海を渡ってきた渡来人である。苦難の航路を経て日本にたどり着いて数日後、都の朝廷あるいはたどり着いた地方の国司から召喚される。面接係官の前で、中国あるいは朝鮮半島での自分の出自・教育・身分・職業等、そして、生国を捨てる決意をした理由あるいは離れざるを得なくなった理由、日本への移住を希望する理由などを口頭で説明しなくてはならない。さらに、自分がこれからの日本の国家にどのような貢献がしたいか、できるかも述べなくてはならない。
 その陳述の中に、渡来の時期がわかるように時代状況の説明を入れること。身分・職業は、単に階級や職種を示すだけでなく、具体的に説明すること。

 問題を与えた二週間前の授業で、職業や身分の例を十数種挙げた上で、その他にもありうるから、自分で好きに選びなさいと言ってある。
 つまり、一般的・客観的な歴史記述ではなく、授業で聴いたことと自分で調べたことを総動員し、想像力を駆使し、その時代の日本における或る渡来人個人の〈外〉からの眼差しで日本の社会を見つめることを試みてみよ、というのが出題意図である。