以下、どうしたらこんなツマラナイことが書けるの? あんたも、暇なんだねぇ、というような噺である。
昨日のこと、ちょうど授業で大学にいるとき、宅配便が自宅に来たようで、お届け荷物は委託集配所預かりになってしまった。この委託集配所というのは、街中のスーパーマーケット、キオスク、雑貨屋、花屋、靴屋、薬局などで、宅配便会社によって異なる。
その集配所が自宅近くとは限らない。今回の場合、片道二キロほどのところにあるキオスクだった。アルザス地方の冬の夕暮れは早く、この時期、日没は午後四時半過ぎ、五時はもう「夜」である。大学から帰宅したのは午後二時前後だったが、荷物預かり場所の通知がSMSで届いたのは四時過ぎだった。すぐ取りに行くか、すこし迷った。氷点下の寒さの中、一旦帰宅してからまた外出するのがちょっと億劫だった。明朝でもいいかと思いかけた。届いているのは日本のアマゾンに注文した小さな和書単行本一冊で、是が非でも今日中に必要というわけでもなかった。
昨日、その時点でまだ日課のジョギングをしていなかった。寒さゆえにちょっと日和りかけていた。九月は無休で毎日走り、十月・十一月も休んだのはそれぞれ一日だけ、十二月だって一日くらい休んだっていいじゃん、走行距離「貯金」もかなりたまっていることだし、と。
でも、突如、思い直した。そうか、一冊の本を取りに行くのに走っていけば、まさに「一石二鳥」ではないか、と。
というわけで、やおら意を決し、寒さが身に染みる宵の口、真冬用の防寒ジョギングウエアに着替え、目深にかぶった濃紺の毛糸のキャップの上にヘッドライトを装着、一冊の本を取りに行くべく、自宅を走り出た。
走り出してみれば、むしろ冷気が心地よい。氷点下二、三度程度なら、外気のなかを一時間程度走るのはさほど苦痛ではない。それどころか、体がピシッと引き締まり、頭も冴えかえって気持ちがよいくらいだ。自ずといつもよりピッチが上がる。
集配所で本を受け取って、ジョギング用超薄型リュックサックにしまってから考えた。このまままっすぐ帰るのはもったいない。まだ三キロ弱しか走っていない。いつものように十キロ走ろうと森を目指した。
冬のこの時間、暗い森の中に人はもういない。道沿いの照明ライトもまばらにしかない。でも、ヘッドライトのおかげで走る道の前方は必要十分に照らされている。それに、この一年半、走り慣れた道だ。
結果、十キロ走った。その「達成感」ゆえ、夕食時の安ワインの味は舶来の美酒のごとく格別であった。