※写真はコンクリートに負けないで伸びている植物。
●現代文が苦手な生徒さんがいらっしゃる。全員が同じ点数を取らないかぎり、全員が偏差値50という事態にならないので、偏差値50以下という現代文が苦手な生徒さんは常にいらっしゃるわけだ。
●で、だ。
●次の文章と設問、解説、解答に納得がいくと現代文にたいして苦手意識が少しは減るのではないかと思い、駄文を書いていく。
●「現代文の解法レジュメ」の記事などを利用するつもりである。この記事を読了後、「解法レジュメ」が近しい存在になれば、ありがたい。
●では、次の文章と設問に取り組んでみよう。答えは書かなくてもいい。なにせ君は現代文が苦手なのだから。
・・・・・・引用開始・・・・・・
次の文章を読んで後の問に答えよ
ケレーニィは、旅行者の基本的な態度を、ヘルメス型とゼウス型の二つに分けている。旅において日常の自己から離れ、別世界に没入しようとするのがヘルメス型、旅先でも常に日常生活の原則を守り、旅宿をもわが家にしてしまわねば気がすまないのがゼウス型、というわけである。
このように分けた所で、明確な線が引けるという保証はない。たとえば、芭蕉が『おくのほそ道』の冒頭に記した「日々旅にして旅を栖(すみか)とす」という言葉など、日常性への固執を排し、一所不住の志を示したと見ればヘルメス型だが、旅を「日々」の常態にしてしまっている、つまりそういう形での日常に安住していると取ればゼウス型だともいえる。
問 「日常性への固執を排し、一所不住の志を示した」(傍線部)とはどういう意味か、わかりやすく説明せよ。
・・・・・・引用終了。なお、以下、同一文章の再掲あり・・・・・・
<解説>
●まず、この文章をどうやって読んでいくかが、初めの一文でわかっただろうか。ここで設問になっていないかぎり、「ケレーニィ」は無視しても構わない。私だって正直知らない。
●問題は「ヘルメス型とゼウス型の二つに分けている」の部分である。
●ここだけを読んで次の三つの何が使えると思う?
「評論文」三大注意事項
★対比=反対の内容を追う
★変形=(表現レベル・内容レベル)=同義(同じような意味)の内容を追う
★論理=(証明過程・接続関係)=接続の関係を追う
●「二つに分けている」から「対比」をまず使おう。つまり「ヘルメス型」「ゼウス型」の二つにわけていくんだ。
●さらに言うと、「ヘルメス型」の部分だけを読めばヘルメス型の同内容がわかる。「ゼウス型」の部分だけを読めばゼウス型の同内容がわかる。つまり、「変形」の視点も手に入るわけだ。
では、ヘルメス型の内容を赤で、ゼウス型の内容を青で色分けしてみよう。ただし、傍線の部分はここでは色分けをしないでおくね。
ケレーニィは、旅行者の基本的な態度を、ヘルメス型とゼウス型の二つに分けている。旅において日常の自己から離れ、別世界に没入しようとするのがヘルメス型、旅先でも常に日常生活の原則を守り、旅宿をもわが家にしてしまわねば気がすまないのがゼウス型、というわけである。
このように分けた所で、明確な線が引けるという保証はない。たとえば、芭蕉が『おくのほそ道』の冒頭に記した「日々旅にして旅を栖(すみか)とす」という言葉など、日常性への固執を排し、一所不住の志を示したと見ればヘルメス型だが、旅を「日々」の常態にしてしまっている、つまりそういう形での日常に安住していると取ればゼウス型だともいえる。
●さて、こんな感じに色分けしてみた。自力で色分けできなくてもかまわない。色分けされたのを見て、こうなるんだということを納得してくれればかまわない。
●ここで、緑は一体なに? と思った君は現代文に向いている。これまでの内容を読んだ上での疑問が持てるということは、現代文に必要な注意力がある。きっと伸びるよ。
●緑色の部分はヘルメス型ともゼウス型とも言えない部分なんだ。
●さらに現代文が苦手な人は「常態」って何? と半ばパニックを起こしてしまいそうになる人もいるかもしれない。
●こういう時はまず、わけてみる。日常の「常」と状態の「態」だね。日常の状態と思ってかまわない。
●次に文脈でもわかるよ。「え? 文脈?」ということばにおびえなくていいよ。ここだけの話、文脈という言葉を高校の先生が言うたびにおびえていたのが、私だ。
●ここでは「常態」のあとの「つまり」を意識してみよう。「つまり」はまとめてくれたり、説明したりするときに使うね。内容はイコールだ。
「日々」の常態にしてしまっている=そういう形での日常に安住している
だから日々の常態とは日常に安住しているということだ。接続の関係(つまり論理だ)を意識して読むとわからないなりに文章は読めていくことになる(ことがある)。
●ここで、いよいよ設問に入ろう。
☆国語三大解答手順 (この基本パターンを上級者になるまで守るようにする)
①分析・・・解答に必要な要素、条件を探す
②対応・・・本文、選択肢と照らし合わせる
③総合・・・まとめる(論述)
●まずは分析だ。要素に分けてみよう。
「日常性への固執を排し、一所不住の志を示した」(傍線部)とはどういう意味か、わかりやすく説明せよ。
・「どういう意味か」とあるので、「という意味。」で解答を締めたい。これが条件。わかりやすくは君たちがわかる言葉でという程度でいい。
・傍線部自体は直後にヘルメス型とあるので全体はヘルメス型でいい。
●ここで解答するためにもう少し詳しく分析しつつ、対応も見ていこう。
・「日常性への固執」・・・ここだけだと「ゼウス型」だね。
「固執」は難しいかな。「固い執念」と連想してくれればかまわない。よくわからない漢語は知っている熟語と訓読みから連想しよう。
・「排し」は退けることなんだけど、ゼウス型を打消してくれないとヘルメス型にならないので、退けるとわからなくとも「打消語」の一種と考えよう。
・「一所不住」の「不」が打消語。「一所に住む」はゼウス型。
・全体的には「ヘルメス型なので「日常の自己から離れ、別世界に没入しようとする」と同じ意味のはず。
・「志を示した」ここは自力でわかりやすくしたいところ。解答例を見て納得してくれるとありがたい。
※打消語にこだわっているのがわかるかな。この言葉は対比をつくってくれるから重視しているんだ。
☆三大注目語 (文脈を作る言葉である。読むときも解くときも大事)
★接続語(接続詞・一部の副詞・接続助詞など)
★指示語 (傍線部を指している指示語に注意)
★打消語 (対比をつくる。主張と関連している打消語に要注意)
※ なぜか否定語でなく打消語になっている。全部の一文字目を「手偏」にしたかったんだね。
◎分析と対応ができると選択肢問題も強くなる。選択肢問題(共通テスト)対策に論述問題演習を入れておこう。
●さてと、解答例を示すね。絶対的な答えと主張する気はまったくないけど、現代文が苦手な君へのヒントになるといいなと思っての解答例になると考えてほしい。
<解答例>
普段の生活に安住することへのこだわりを捨て、非日常的な世界へ漂泊するという決意を表明したという意味。
●分析や対応させたことは解答例と次のような対応関係にある。よく読めばこれくらいの解答ができると思えるはず。
普段の生活に安住すること・・・日常の自己
こだわり・・・固執
捨て・・・排し
非日常的な世界・・・別世界
漂泊・・・一所不住
決意を表明した・・・志を示した
●「漂泊」は難しいね。しかし、芭蕉は漂泊の人なんだ。そのあたりをわかっていると採点官にアピールしたかったので、現代文が苦手な君たちは気にしないでほしい。けれども、中級者、上級者になるときは意識しないといけない場合が出てくるので、ここで紹介。(なお、「漂泊する」の部分は「さすらう」「旅をする」で十分だ。)
いつまでも君たちが「現代文が苦手な人」でいるわけではないだろうから、中級者、上級者への予告編だと思ってほしい。
●さて、現代文が苦手だというのに、最後まで読んでくれてありがとう。ここまで読めるだけで十分、中級者になったと思う。
●ここで君たちが喜ぶべきことがある。
それなりにこの文章が読め、傍線部の意味と本文の関係を理解し、解答例の意味がつかめたとしたら、中々の生徒さんということになる。
●だって、この問題は東京大学の問題なんだぜ。
●おめでとう。君たちは東大レベルの問題を理解できる人間だったんだ。
※2021-06-15の記事を増補。
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