キングスキャニオン国立公園の真ん中にある小さなレジャー用の湖?
最初はそんなふうにしか見えていなかった↓
湖畔にはレンタルボートも用意されているし
訪れたのは、すでにサマースクールの学生たちでいっぱいのにぎやかな六月半ば。
ここが百年前に、下の写真のような様子だったというのは、写真を見せられ・ちゃんと話を読んではじめて理解できる。
そう、ここは伐採してきた木材を貯蔵しておくための木場だったのである。
もともとここにちょうどよい湖などなかった。世界で初めてのマルチ・アーチ型コンクリートダムを築き、川をせきとめた。上の写真で右端に写っているのがそれ。確かにマルチ・アーチの型がみえる。
昔の写真でその全貌を理解できる
この話を知ってから、自分の目で確かめるべく、レジャー施設からトレイルを歩いていくと、ほんの二十分ほどで、ダムが姿を現した。華やかなステージの舞台裏を見せられた気がした。
1850年第、ゴールドラッシュで人がやってくると、カリフォルニアの山奥にも開発の可能性が模索されるようになっていった。
このエリアのいちばんの資源は豊富な木材。1888年にはサンガーの街に本社を持つ会社が設立され、本格的な伐採がはじまった。この会社はしかし十年後に行き詰まり、より大きな資本家に支援を求めた。
トーマス・HUME(ヒューム)は、もう一人の資本家イラ・ベネットと共に、1905年HUME-BENETTE木材会社を設立。
1908年にはジョン・イーストウッドという人物にダム建設を依頼。彼はたった114日でこのダムを完成させて名声を得た。(その後17もの似たダムを手掛け、ひとつの失敗もなかったそうである)
HUME木場のまわりには労働者のコミュニティが出現し、最盛期には一千人もの人々が住んだ。
●しかし、この投資は予定したほどの利益をうみ続けなかった。施設が本格的に稼働したのは1908-1917年のあいだだけ。1917年に火災が発生し事業はほぼストップした。※同年のアメリカの第一次大戦参戦も影響があったと思われる
1935年に政府に買い取られた際には、エーカーあたり$14.93ドルでしかなかった。
★資本家が利益を得ようと得まいと、森林は伐採されてしまった。国立公園が設置される前にセコイアの巨木は二万五千本が切り倒されてしまったと推定されている。現在我々が見ているセコイアの巨木は凶暴な開発の手をからくも逃れた貴重な存在だったのだ。
★資本家が利益を得ようとえまいと、ダムは残った。HUME湖は1945年に某キリスト教団体の手に渡り、一見裕福そうなアメリカ人キリスト教徒子弟達が、リゾートレイクに集まってくる。