再生エネルギー活用の起爆剤とするため、電力会社による「全量買い取り」を大前提として始まった再生可能エネルギー買い取り制度は、わずか2年でその根幹がもろくも崩れた。
失敗のもとをたぐれば、制度の詳細が作られた平成23年当時の政治状況に行き着く。
東日本大震災後の数々の失政で与野党から退陣を迫られていた菅直人首相は、同制度の根拠となる特別措置法の成立を自らの首相辞任の3条件の一つに挙げた。
「菅の顔をみたくなければ、早く法案を通した方がいい」とまでうそぶき、自民、公明両党と修正法案合意に持ち込んだ。
制度は24年7月に導入されたが、「あしき置き土産」として、同年12月に発足した自民党政権にそのまま引き継がれた。
修正合意までの制度づくりには、今も数々の矛盾が指摘されている。
太陽光の買い取り価格は、事業者の利潤に特に配慮するとの修正が入り、国際的にみてもかなり高額に設定された。
その結果、事業者の大量参入を招き、買い取り保留につながった。
制度設計のずさんさから、高値で買い取ってもらう権利を確保する「枠取り」のような行為も横行。
認可を受けながら、発電設備を建設しない業者が続出した。
経産省が12月18日決めた制度見直しでは、こうした矛盾を解消するため、発電事業者からの送電を無制限・無補償で中断できる制度を柱にすえた。
一方、今回の見直しでは住宅用も出力抑制の対象とされた。
再生エネ普及には一般家庭の制度参加が欠かせないが、一歩後退を余儀なくされた形だ。
経産省は「住宅用での出力抑制は最低限とするルールにする」という。
再生エネ買い取り制度は、国民の負担を前提としている。
買い取り費用は電力料金に上乗せされて徴収されており、経産省の試算では、すでに設備認定された電力をすべて受け入れると、毎月の電気代が約700円あがる。
実は、再生エネ先進国のドイツでも国民負担の増加は問題化している。
これまで何度も制度の見直しを実施し、現在は制度そのものをやめる方向で検討している。
政府は今後、国民が負担増をどこまで受け入れられるのかをにらみながら、制度の抜本見直しを進めることになる。
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