働いている夫が亡くなった場合、妻はすぐに遺族補償年金を受給できるのに、働いている妻を亡くした夫は一定の年齢になるまで受給資格が得られない。
半世紀前にできた遺族年金受給を巡る男女差について、最高裁が3月21日、まだ賃金格差があることなどを理由に合憲と認めた。
現状の男女差を追認した判断に「主夫」からは時代遅れとの批判も上がった。
「世の中が変わっているのに、いつまで古い考えでやろうとするんですかね」。
団体職員の妻を持ち、自身は専業主夫をしている兵庫県芦屋市の瀬野さんはため息をついた。
同じような要件は民間対象の労災保険や遺族厚生年金にもある。
「周りの主婦とやっていることは変わらないのに。 もしもの場合、僕たちは明日からどうすればいいんですか」と不安を漏らす。
2人の子どもの面倒を見る恵京都江東区の宮内さんも「制度上、女性が家庭に入った方が有利ですよ、と言っているのと同じ。 信じられない判決だ」と驚く。
一方、厚生労働省の関係者は「まだ男女の働く環境は平等ではない。 環境整備が追いつく前に制度を変えると、困る人が出てくる可能性がある」と疑問を投げ掛ける。
平等を重視するならば、夫を亡くした妻にも年齢制限が課される可能性もあるとし「この制度は遺族の生活補償の意味合いがある。 慎重な議論が必要ですよ」と付け加えた。
この要件が制定されたのは1967年。
生産年齢に占める労働力人口は男性が82%に対し、女性は52%。
月の平均賃金も男性4万2800円に対し、女性は2万1700円と低く抑えられていた。
正社員の夫と専業主婦からなる世帯が一般的で「男が働き、女性が家庭を守る」というムードがまだ強かった時代だ。
しかし、女性の社会進出が進み、1990年代半ばには共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、共働き世代が一般化。
妻が家計を支え、夫が家を守るスタイルもみられるようになった。
欧州では既に1970年代から年金の男女差が問題となっていた。
国内でも、国民年金加入者を対象とする遺族基礎年金は、父を亡くした母子家庭と、子どもだけが残されたケースに限って支給していたのを改め、2014年4月から母を亡くした父子家庭でも受け取れるようになった。
憲法が専門の右崎独協大教授は「女性は弱い立場にあるのだから、優遇しても構わないという理屈で、現状を追認した判決だ。 賃金格差がおかしいという問題の本質を隠してもまう」と指摘。
「差別の克服には、性差別はしないという施策を貫徹するスタンスが必要だが、判決には感じられない」と批判した。
「家事や子どもが好きで、自然な役割分担でこうなっている」と話す専業主夫3年目の大阪市の男性は「女性がばりばり働いたり、起業したりするのは当たり前。 男女差の規定があるのは、逆に女性に失礼。 時代遅れの判決だと思う」と言い切った。
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