厚生労働省は5月21日、全国に約5万7千ヵ所ある薬局を、2025年までに患者の服薬情報を一元管理できる「かかりつけ薬局」に再編する検討に入った。
薬の飲み残しや重複を防ぎ、膨らみ続ける医療費の抑制にもつなげる狙い。
患者各人がかかりつけ薬局を決め、どの病院を受診してもその薬局に処方譲を持ち込める環境を目指す。
24時間調剤に応じたり、在宅患者に服薬指導したりする機能も整備する。
塩崎厚労相が5月26日の経済財政諮問会議で、将来に向けた「薬局構造改革ビジョン」(仮称)を作成すると表明する。
2016年度の診療報酬改定で、かかりつけ薬局普及に向けた考え方を反映させる。
2013年度の薬関連の医療費は7兆円で、財務省が削減を求めている。
厚労省の調査では、医療機関の近くにあり、主にその医療機関の処方簾を受け付けている「門前薬局」が薬局全体の7割を占める。
薬剤師の役割も調剤や在庫管理など薬中心の業務が多い。
改革ビジョンでは、薬局や薬剤師が患者との関わりを増やし、専門性を発揮できるようにする考えだ。
処方内容のチェックやジェネリック医薬品(後発薬)の使用促進などを診療報酬で高評価する仕組みを検討する。
病気の予防や健康づくりに貢献する「健康サポート機能」を備える薬局も増やす。
処方箇なしで購入できる一般用医薬品(OTC)や医療・介護用品なども販売し、相談にも応じる情報拠点としての役割を期待している。
高齢化による在宅患者の増加を見込み、抗がん剤や免疫抑制剤など高度な薬の管理も対応できるよう促す。
内科や耳鼻科など症状ごとに違う病院に行っても、かかりつけ薬局に処方簾を持ち込めば、薬局側が患者の過去のアレルギー歴や服用中の薬の残量などを確認し、病院と連携して処方内容が有効かを判断できるメリットがある。
現在、服薬歴を継続して管理するには、患者が持つ「お薬手帳」にシールを貼るなどして記録する方法があるが、普段持ち歩かないために続けて記録していない場合が多い。
かかりつけ薬局が普及すれば、薬局が健康相談などを通じて栄養や生活習慣を管理したり、医療機関への受診を勧めたりする身近な相談窓ロにもなりそうだ。
一方、門前薬局の利点は病院に近いことだ。
足が悪い高齢者や症状の重い人が、病院からかかりつけ薬局に行くために長い移動を余儀なくされる恐れある。
この点はどう対処するのだろうか。