何かの告知を見て発作的にチケットを購入することがたまにある。購入したときの状況は今となっては記憶に無いのだが、おそらく「志の輔」に反応したのだろう。昨年1月の帰国以来、「志の輔らくご」は何度もチケットを申し込んでいるのだが、これまでのところ全て抽選に外れている。このチケットは抽選になることもなく入手したが、どのような催事なのか見当がつかなかった。チケットに表記されている出演者が何組もあるのだが、認識できるのは志の輔とリリー・フランキーだけだったのである。
とりあえず場所を調べて、下北沢へ出かけてみた。駅南口階段を降りてすぐ、マクドナルドの前で自分がこれから行こうとしている催事のチラシを配っている人がいた。チラシを受け取り、ざっと目を通す。昨日も何かあったらしい。いろいろな分野から出演者が集められているが、司会者の肩書きに「下北沢商業者協議会代表」とか「シモキタ訴訟弁護団」といったものものしいものがある。よく見ると小さな文字で「街を分断する道路計画と様相を一変させる再開発計画」などとも書いてある。どうやら再開発反対運動の一環のイベントらしいということが、開演直前になってわかった。
妙なところに来てしまったと後悔しかけたものの、会場の斜め向かいにあるビルの2階の「花泥棒は珈琲屋です」という妙な名前のカフェでブレンドコーヒーを飲みながらチーズケーキを食べているうちに後悔はどこかへ行ってしまった。
下北沢というところに来るのは1年半ぶりくらいだ。帰国して、住む家がほぼ決まり、家具を買おうと思って、下北沢にある古道具屋を覗いてみたのである。結局、家具は無印良品と近所の家具屋で揃えたのだが、下北沢という場所は私には少し場違いなように感じられた。
昔、下北沢でデートをしたことがある。お茶をしただけのことだが、相手はミス横浜国大だったという人だった。当時、私は債券のセールス・トレーダーをしていた。一日の終わりに電話で顧客とその日の売買の照合をするという作業があった。彼女は富士銀行の資金証券部の人で、なんとなく毎日電話で話をしているうちに親しくなったのである。そのうち、私が留学のために人事部付になるときに、お世話になったからとかなんとか言って私のほうから誘った。週末の昼下がり、彼女の足の便の良い場所ということで、下北沢の喫茶店で会うことになったのである。その後、彼女は結婚したと聞いているが、今頃はどうしているのだろうか。私よりも3つほど年上だったが、きれいなおばさんになっているといいなと思う。
さて、今日の出演は以下の通り。(出演順)
Les cocottes
MCのなかで、喉が弱くて普段はマスクをつけて歩いている、という話を聞いて驚いた。喉が弱いのに歌を歌うことを生業する決断もすごいことだと思うし、暑いときでも外出するときにマスクをつけるというのもたいへんなことだと思う。私も子供の頃は殆ど慢性ともいえる気管支炎で、夜中に発作が起こるとたいへん辛い思いをしたものだが、成長と共に症状が消えてしまった。今でも、自分の身体の状態を自然に観察してしまうのは、当時の辛さが身に染みているからではないかと思っている。
TWO-STRUMMER
今年、デビュー25周年だそうだ。自分とほぼ同世代だ。不思議なもので、同じ時代を生きてきたというだけで親近感を覚えてしまう。昭和のロッカー、という感じ。こういう友達がいたら、うざいかもしれないけど、楽しいだろうなとも思う。
KIRIHITO
ドラムとギターのロックデュオ。もともと音楽に関心の強いほうではない所為もあるが、この手の音楽を生で聴くのは初めてだ。絶対に自分からCDやDVDを買ったりはしないタイプの音楽なのだが、聴いていてとても愉快だった。
立川志の輔
この人の噺のおもしろさは、日常生活のなかに当たり前に転がっている馬鹿馬鹿しさをデフォルメした現実性にあるように思う。今日はドラッグストアのバイト店員とオヤジ客とのやりとりで構成された噺だったが、普通に生活していれば誰もが気付くのだけれど、敢えて問題にするほどのことでもないささやかな疑問や不可思議に、敢えて注目したものである。今、この瞬間もすぐそこで交わされていそうな妙な会話に妙な現実味があって腹の底がひっくり返されるような心持ちがした。でも、私はやっぱり古典のほうが好きだ。
リリー・フランキー+上田禎
リリー・フランキーが歌を歌う人だということを今日初めて知った。MCのなかで氏が無職だった時代もあったということを語っていて、それも少し衝撃だった。おそらく、意識するとしないとに関わらず、表現者として生きることを目指していたのだろう。今は誰もがその名を知る存在だが、歌や演奏もよかった。尤も、この人の書いたものを読んだことはないので、歌や演奏「も」、と言うのはおかしなことなのだが。
黒田征太郎+中村達也+田中泯
アクションペインティングとドラム演奏と舞踊が同時に行われた。演奏は聴いていればよいのだが、ペインティングと舞踊はどちらに視線の焦点を当ててよいのか少し迷う。アクションペインティングに限らず、コンテンポラリーアートというのは、まず、どこかで評価を受けてからでないと活動できないような気がする。大きな展覧会で賞を獲るとか、既に名前のある人から声がかかるというようなことで、その仕事が評価され、然る後に本来の活動ができるようになるのではないだろうか。そうでないと、「アート」なんだか単なる「へんな人のへんな行為」なんだかわからない。ただ、不思議なことなのだが、コンテンポラリーアートというのは眺めているだけで愉快なのである。以前にもこのブログのどこかで書いた記憶があるのだが、作品の作り手と自分とが同じ空気を呼吸しているように感じられ、それが楽しいのである。田中泯は、身体の線がきれいな人だと思った。私は舞踊のことなど何も知らないのに、どこかで見たことがある人だと思ったら、昔観た「メゾン・ド・ヒミコ」という映画でヒミコ役で出演していた人だった。さすがに、映画の頃よりは齢を重ねているが、舞踊家らしい適切な均整を感じさせる身体だ。
開演 16時30分
閉演 21時30分
会場 shimokitazawa GARDEN
とりあえず場所を調べて、下北沢へ出かけてみた。駅南口階段を降りてすぐ、マクドナルドの前で自分がこれから行こうとしている催事のチラシを配っている人がいた。チラシを受け取り、ざっと目を通す。昨日も何かあったらしい。いろいろな分野から出演者が集められているが、司会者の肩書きに「下北沢商業者協議会代表」とか「シモキタ訴訟弁護団」といったものものしいものがある。よく見ると小さな文字で「街を分断する道路計画と様相を一変させる再開発計画」などとも書いてある。どうやら再開発反対運動の一環のイベントらしいということが、開演直前になってわかった。
妙なところに来てしまったと後悔しかけたものの、会場の斜め向かいにあるビルの2階の「花泥棒は珈琲屋です」という妙な名前のカフェでブレンドコーヒーを飲みながらチーズケーキを食べているうちに後悔はどこかへ行ってしまった。
下北沢というところに来るのは1年半ぶりくらいだ。帰国して、住む家がほぼ決まり、家具を買おうと思って、下北沢にある古道具屋を覗いてみたのである。結局、家具は無印良品と近所の家具屋で揃えたのだが、下北沢という場所は私には少し場違いなように感じられた。
昔、下北沢でデートをしたことがある。お茶をしただけのことだが、相手はミス横浜国大だったという人だった。当時、私は債券のセールス・トレーダーをしていた。一日の終わりに電話で顧客とその日の売買の照合をするという作業があった。彼女は富士銀行の資金証券部の人で、なんとなく毎日電話で話をしているうちに親しくなったのである。そのうち、私が留学のために人事部付になるときに、お世話になったからとかなんとか言って私のほうから誘った。週末の昼下がり、彼女の足の便の良い場所ということで、下北沢の喫茶店で会うことになったのである。その後、彼女は結婚したと聞いているが、今頃はどうしているのだろうか。私よりも3つほど年上だったが、きれいなおばさんになっているといいなと思う。
さて、今日の出演は以下の通り。(出演順)
Les cocottes
MCのなかで、喉が弱くて普段はマスクをつけて歩いている、という話を聞いて驚いた。喉が弱いのに歌を歌うことを生業する決断もすごいことだと思うし、暑いときでも外出するときにマスクをつけるというのもたいへんなことだと思う。私も子供の頃は殆ど慢性ともいえる気管支炎で、夜中に発作が起こるとたいへん辛い思いをしたものだが、成長と共に症状が消えてしまった。今でも、自分の身体の状態を自然に観察してしまうのは、当時の辛さが身に染みているからではないかと思っている。
TWO-STRUMMER
今年、デビュー25周年だそうだ。自分とほぼ同世代だ。不思議なもので、同じ時代を生きてきたというだけで親近感を覚えてしまう。昭和のロッカー、という感じ。こういう友達がいたら、うざいかもしれないけど、楽しいだろうなとも思う。
KIRIHITO
ドラムとギターのロックデュオ。もともと音楽に関心の強いほうではない所為もあるが、この手の音楽を生で聴くのは初めてだ。絶対に自分からCDやDVDを買ったりはしないタイプの音楽なのだが、聴いていてとても愉快だった。
立川志の輔
この人の噺のおもしろさは、日常生活のなかに当たり前に転がっている馬鹿馬鹿しさをデフォルメした現実性にあるように思う。今日はドラッグストアのバイト店員とオヤジ客とのやりとりで構成された噺だったが、普通に生活していれば誰もが気付くのだけれど、敢えて問題にするほどのことでもないささやかな疑問や不可思議に、敢えて注目したものである。今、この瞬間もすぐそこで交わされていそうな妙な会話に妙な現実味があって腹の底がひっくり返されるような心持ちがした。でも、私はやっぱり古典のほうが好きだ。
リリー・フランキー+上田禎
リリー・フランキーが歌を歌う人だということを今日初めて知った。MCのなかで氏が無職だった時代もあったということを語っていて、それも少し衝撃だった。おそらく、意識するとしないとに関わらず、表現者として生きることを目指していたのだろう。今は誰もがその名を知る存在だが、歌や演奏もよかった。尤も、この人の書いたものを読んだことはないので、歌や演奏「も」、と言うのはおかしなことなのだが。
黒田征太郎+中村達也+田中泯
アクションペインティングとドラム演奏と舞踊が同時に行われた。演奏は聴いていればよいのだが、ペインティングと舞踊はどちらに視線の焦点を当ててよいのか少し迷う。アクションペインティングに限らず、コンテンポラリーアートというのは、まず、どこかで評価を受けてからでないと活動できないような気がする。大きな展覧会で賞を獲るとか、既に名前のある人から声がかかるというようなことで、その仕事が評価され、然る後に本来の活動ができるようになるのではないだろうか。そうでないと、「アート」なんだか単なる「へんな人のへんな行為」なんだかわからない。ただ、不思議なことなのだが、コンテンポラリーアートというのは眺めているだけで愉快なのである。以前にもこのブログのどこかで書いた記憶があるのだが、作品の作り手と自分とが同じ空気を呼吸しているように感じられ、それが楽しいのである。田中泯は、身体の線がきれいな人だと思った。私は舞踊のことなど何も知らないのに、どこかで見たことがある人だと思ったら、昔観た「メゾン・ド・ヒミコ」という映画でヒミコ役で出演していた人だった。さすがに、映画の頃よりは齢を重ねているが、舞踊家らしい適切な均整を感じさせる身体だ。
開演 16時30分
閉演 21時30分
会場 shimokitazawa GARDEN