生協のイベントで東京農業大学の博物館を見学するというものがあり、参加してきた。単に「食と農」の博物館というものを見学するだけのことで、ぞろぞろ集まることもないのだが、聞くところによれば食の安全を考える委員会のようなものの例会のついでに、どうせなら一般会員も誘ってみんなで見てみようということらしい。しかし、こういう機会でもなければこの博物館を知ることもなかったので、たいへん有り難いことだ。
大学付属の博物館なので、常設展示も含め、大学での研究成果の動向を反映して展示内容を入れ替えるのだそうだ。現在は常設が「稲に聞く」、企画のほうが「森林に聞く」と「生き物に聞く」で、特設として先頃ブータンから寄贈されたブータンシボリアゲハの標本が展示されている。また、常設の稲のコーナーの奥は醸造についての展示がかなりのスペースを割いて行われていた。日本の蔵元の8割が東京農大の卒業生によって運営されているのだそうで、日本酒は東京農大によって作られていると言っても過言ではない状況のようだ。ちなみに業界団体である日本酒造組合中央会に所属する蔵元は1,896あり、このうち清酒が1,611、単式蒸留焼酎が271、残りがみりん二種という内訳だ。私は自分が酒を飲まないので酒席に出かける機会が殆ど無いのだが、たまに行くと焼酎を飲む人が増えたという印象を受けていた。しかしこうして蔵元の数を見るとまだまだ清酒の存在感が大きいようだ。
今日見学した展示のなかで印象深いのは醸造に関するところだ。醸造そのものも興味深いのだが、もっと面白いと思ったのは器のほうだ。酒の容器というと一升瓶を思い浮かべるのだが、今は色も形も様々な容器におさめられて流通している。展示を眺めていて、おもわず容器を蒐集してみようかと本気で考えてしまったほどだ。容器の意匠は容器そのものの製造にかかわる理由と、内容物である酒の品質保持にかかわる理由と、単純に装飾性あるいは商店に並んだときの訴求力といったことによって規定されているのだろう。ひとつひとつ何故そのような色形の容器にしたのかということを取材して回ったら、きっと面白いだろうと思う。
見学の後、博物館内にあるカフェで軽食をいただく。農大の食堂だから変わったものがあるのかと思いきや、特筆するようなことは無かった。ただ、カフェの一画に並んでいる大学発の様々な商品はさすがに農業大学だと思わせるものが多い。米や味噌という農産物の基本のようなものはもちろんのこと、エミュー生どら焼きというようなネーミングだけで好奇心をそそられるものもあり、ちょっと目の毒のようなコーナーだ。あいにくエミュー生どら焼きは品切れでその味を経験することはできなかったが、大変人気のある商品だそうだ。お土産にいただいたのがカムカムドリンク。カムカムというのは南米の果物で、傷みやすいため南米でも自生地以外の人には知られていなかったという。近年は保存技術や運送技術が発達してこのように日本でもジュースという形で入手できるようになった。これは味がどうこうというよりも、麻薬の栽培を阻止すべく、麻薬に代わる商品作物として栽培が奨励されているとのことだ。そのような作物は他にもあるが、肌荒れ防止、風邪予防、便秘、肥満抑制、糖尿病・高血圧などへの対策としての効能もあるとされており、麻薬撲滅と健康増進のために販売促進を図っているのだそうだ。
せっかく経堂に来たので、以前から気になっていた芝生というギャラリーカフェにお邪魔する。農大は経堂駅の南側だが芝生は北側で、すずらん通りに面している。そもそも経堂で下車するのは今日が初めてなのだが、このすずらん通りには自家製のパンやケーキを売り物にする店とか、雰囲気の良さそうなカフェが並んでいる。おそらく地元の人よりは、わざわざその店を目的に他所から経堂へやって来るというような人がメインの顧客層なのではなかろうか。店主さんによれば、ここはギャラリーが主で、少しのんびりとギャラリーを眺めてもらうというつもりでカフェもやっているとのこと。だから、ギャラリーでの展示が無いときは店を休みにしてしまうという。彼はグラッフィックデザイナーだそうで、ギャラリーは兼業ということだそうだ。今は湯島のロシア系雑貨屋のnicoが出張店舗としてギャラリーを使用している。なんだかよくわからないが、妙な味わいのあるものが並んでいる。確かに、ほっとできる空間だ。
さらについでに経堂西通りも歩いてみる。こちらも個性的な店が並んでいて、改めて世田谷という土地の個性のようなものを感じる。このあたりはもともとは農地だったはず。もともとを言い出せば銀座だって埋め立て地だし、都内城東地区はことごとく江戸時代以降に開発された地域だ。もともと、というのはどうでもよいことなのだろう。大事なのは今だ。
ところで、今日の夕方に人事からメールが来た。たいへん詳細にわたる退職の事務手続きについての説明が書かれていて恐縮する。
大学付属の博物館なので、常設展示も含め、大学での研究成果の動向を反映して展示内容を入れ替えるのだそうだ。現在は常設が「稲に聞く」、企画のほうが「森林に聞く」と「生き物に聞く」で、特設として先頃ブータンから寄贈されたブータンシボリアゲハの標本が展示されている。また、常設の稲のコーナーの奥は醸造についての展示がかなりのスペースを割いて行われていた。日本の蔵元の8割が東京農大の卒業生によって運営されているのだそうで、日本酒は東京農大によって作られていると言っても過言ではない状況のようだ。ちなみに業界団体である日本酒造組合中央会に所属する蔵元は1,896あり、このうち清酒が1,611、単式蒸留焼酎が271、残りがみりん二種という内訳だ。私は自分が酒を飲まないので酒席に出かける機会が殆ど無いのだが、たまに行くと焼酎を飲む人が増えたという印象を受けていた。しかしこうして蔵元の数を見るとまだまだ清酒の存在感が大きいようだ。
今日見学した展示のなかで印象深いのは醸造に関するところだ。醸造そのものも興味深いのだが、もっと面白いと思ったのは器のほうだ。酒の容器というと一升瓶を思い浮かべるのだが、今は色も形も様々な容器におさめられて流通している。展示を眺めていて、おもわず容器を蒐集してみようかと本気で考えてしまったほどだ。容器の意匠は容器そのものの製造にかかわる理由と、内容物である酒の品質保持にかかわる理由と、単純に装飾性あるいは商店に並んだときの訴求力といったことによって規定されているのだろう。ひとつひとつ何故そのような色形の容器にしたのかということを取材して回ったら、きっと面白いだろうと思う。
見学の後、博物館内にあるカフェで軽食をいただく。農大の食堂だから変わったものがあるのかと思いきや、特筆するようなことは無かった。ただ、カフェの一画に並んでいる大学発の様々な商品はさすがに農業大学だと思わせるものが多い。米や味噌という農産物の基本のようなものはもちろんのこと、エミュー生どら焼きというようなネーミングだけで好奇心をそそられるものもあり、ちょっと目の毒のようなコーナーだ。あいにくエミュー生どら焼きは品切れでその味を経験することはできなかったが、大変人気のある商品だそうだ。お土産にいただいたのがカムカムドリンク。カムカムというのは南米の果物で、傷みやすいため南米でも自生地以外の人には知られていなかったという。近年は保存技術や運送技術が発達してこのように日本でもジュースという形で入手できるようになった。これは味がどうこうというよりも、麻薬の栽培を阻止すべく、麻薬に代わる商品作物として栽培が奨励されているとのことだ。そのような作物は他にもあるが、肌荒れ防止、風邪予防、便秘、肥満抑制、糖尿病・高血圧などへの対策としての効能もあるとされており、麻薬撲滅と健康増進のために販売促進を図っているのだそうだ。
せっかく経堂に来たので、以前から気になっていた芝生というギャラリーカフェにお邪魔する。農大は経堂駅の南側だが芝生は北側で、すずらん通りに面している。そもそも経堂で下車するのは今日が初めてなのだが、このすずらん通りには自家製のパンやケーキを売り物にする店とか、雰囲気の良さそうなカフェが並んでいる。おそらく地元の人よりは、わざわざその店を目的に他所から経堂へやって来るというような人がメインの顧客層なのではなかろうか。店主さんによれば、ここはギャラリーが主で、少しのんびりとギャラリーを眺めてもらうというつもりでカフェもやっているとのこと。だから、ギャラリーでの展示が無いときは店を休みにしてしまうという。彼はグラッフィックデザイナーだそうで、ギャラリーは兼業ということだそうだ。今は湯島のロシア系雑貨屋のnicoが出張店舗としてギャラリーを使用している。なんだかよくわからないが、妙な味わいのあるものが並んでいる。確かに、ほっとできる空間だ。
さらについでに経堂西通りも歩いてみる。こちらも個性的な店が並んでいて、改めて世田谷という土地の個性のようなものを感じる。このあたりはもともとは農地だったはず。もともとを言い出せば銀座だって埋め立て地だし、都内城東地区はことごとく江戸時代以降に開発された地域だ。もともと、というのはどうでもよいことなのだろう。大事なのは今だ。
ところで、今日の夕方に人事からメールが来た。たいへん詳細にわたる退職の事務手続きについての説明が書かれていて恐縮する。