栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

盟友・恩人からもレッドカードを突き付けられた菅首相

2011-07-22 11:12:01 | 視点
 ちょっと珍しいタイプである。
誰あろう、菅首相のことだ。
あれだけ支持率が下がっても、与野党問わず「辞めろコール」が高まっても、脅威の「粘り腰」で首相の椅子に座り続けている。
並の神経ではできない技だ。
相撲なら賞賛の的だが、国のトップがこれでは困る。

 なぜ菅直人氏が首相では困るのかは後に記すが、とうとう「恩人」からもレッドカードを突き付けられ、退陣を迫られてしまった。
「恩人」とは楢崎弥之助氏のことだ。
 楢崎弥之助氏といえばかつて社会党時代に「国会の爆弾男」と称された国会議員である。
その後、社会クラブ、社会市民連合(社民連)に移るが、社民連には菅直人氏もいた。
菅直人氏は1977年に実施された参院選に立候補し落選したが、彼を当時もその後も支持し続けたのが楢崎弥之助氏なのだ。
その恩人であり盟友でもある楢崎弥之助氏がついに「菅直人君、直ちに辞めなさい」と首相辞任を迫る文書を21日、民主党の全国会議員に配布した。
 全文は衆議院議員、杉本かずみ氏のブログ(http://sugimotokazumi.blog16.jp/index.php/2011/07/21/-11)にアップされているので、そちらをご覧いただきたいが、簡単に紹介する。

 弥之助氏が民主党の全国会議員に配布した文書には「菅 直人総理の即時退陣を求める」というタイトルが付けられており、この文書を配布したのは「この間の政治の有様を見聞きするにつけ、日本の現状と将来のためになんとかしなければとの思いから上京し、数分間でも菅君に意見具申するつもり」だったが、「菅君から多忙を理由に面会を断られ」たからだと記されている。

 「首相に就任してからの菅直人君の言動を見聞きするにつけ、彼は一体どうなってしまったのかと、首をかしげる事のみが多くなった」
 「政治の常道から言えば、自らの掲げた政策で選挙に敗北したのであるから、この時点(2010年7月の参議院選挙)で彼は直ちに首相の座を辞すべきであった」
 「現在最も肝要なことは被災者の方々の一日も早い救済である。(略)政府と与党が一致協力して、被災地と被災者の意見を十分に斟酌し、彼らのための最も有効な政策を提案し、実行に移すならば何人たりともこれに反対することはできないであろう。これこそが政治指導者のとるべき道」
 「今こそ政府と民主党は挙党一致体制を再構築すべきである。党内のすべての叡智を結集してこの国難に対処すべきではないのか」
 「菅直人君はこの国難に対して、なんら有効な手立てをすることができない。菅直人君は残念ながら閣内すら統率できていない。ましてや自らの所属政党である民主党をズタズタにしてしまった」
 「政治は国民のためのものであって、菅直人君の権力欲を満足させるためにあるのではない。(略)日本国民の為に辞任せよと言いたい」
 そして最後に「菅直人君、直ちに辞めなさい」という言葉で結ばれている。

 止むに止まれぬ思いだったのだろう。
それにしてもかつて行動を共にした同志、盟友の中で菅氏のことを誰一人として誉める人間がいない。
その後、皆袂を分かっている。
それだけ菅氏は自分中心ということなのだろう。

 政治の世界でも「結果オーライ」というわけではない。
理念が正しいか、行動に邪さはないか、結果に至る経過は順序を踏んでいるか等々が問題になる。
彼は市民運動家出身ということを謳い文句にしているが、市民運動家出身だから高潔でも市民の味方というわけではない。
何を言い、どう行動したかで判断されるのだ。

 しかるに、彼はこの点でデタラメだった。
何をしたいのかという理念や目的が見えない。
そして思い付きを言い、思い付きで行動する。
だから言うこと、行動に一貫性がない。

 思い起こして欲しい、かつて彼が何を言ったか。
楢崎弥之助氏も先の文書で批判しているように、先の参議院選で突然、消費税値上げを言い出したではないか。
それまでに多少なりともそうしたことを主張していればまだ別だ。
選挙戦前どころか直前でもなく、選挙戦のさなかに、まさに「突然」絶叫しだしたのだ。
以来、税と福祉の一体改革を唱え、増税論者の与謝野肇氏を「たちあがれ日本」から一本釣して入閣させた。

 しかし、いま菅首相の口から税制改革が唱えられることはない。
彼はそのことなど(与謝野大臣のことも含め)もうすっかり忘れているのだ。
もちろん、与謝野氏はカンカン。
カンカンなのは与謝野氏だけではない。
海江田大臣も同じくカンカンだ。
海江田氏と与謝野氏は選挙区が同じ。
ともに激しく戦った相手である。
その相手を同じ内閣に入れたのだから、民主党政権になったからといって次期選挙で海江田氏が安泰というわけではなくなった。
これは怒り心頭だろう。

 さて「脱原発」だ。
個人的にはこの方向は支持するが、それまで菅氏が脱原発を唱えた風はない。
やはりいきなり言い出した。
自然エネルギーに至っては孫氏の口車に乗ったというのは言い過ぎかもしれないが、孫氏の主張に突然同調したとしか思えない。
 なぜ、彼はそんな行動を取るのか。
それは本ブログの「民主党トップ3人の罪を問う!」でも書いたが、彼の功名心故である。
歴史に名を残す首相になりたい!
どうすれば歴史に名を残せるか。
そのことのみが菅首相を突き動かしているのだ。

 そんな私的な動機で国の将来を左右されては大変だ。
皆そう思っているから、即刻退陣せよ、と言っているのだ。

 いまの季節、あちこちで蓮の花が美しい姿を見せている。
写真の蓮は花びらの中から新しい花が誕生しようとしているように見える。
せっかく生まれた民主党政権。
このまま腐らし、民主党政権を潰した首相として歴史に名を残すのではなく、
潔く身を退き、東日本大地震後の日本復興のために、新しい政権を誕生させた首相として名を残して欲しいものだ。

 最後に言う! 菅直人首相、即刻退陣しなさい!
それが日本とこの国の民のためだ。


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