栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

忘れ物の中身

2005-07-28 16:59:38 | 視点
 重いトランクを持って地下鉄の階段をエッチラオッチラと上り、外に出ると雨。この時ばかりはタクシーでホテルに行かなかったことを後悔した。泣きたくなるような気持ちでトランクを引きずりホテルの場所を探した。幸いホテルは地下鉄人民広場駅から5、6分の距離で、交通整理をしている人に尋ねるとすぐ分かったので助かった。

 チェックイン後、フロントで事情を話してリニアの事務所に電話をしてもらう。しかし、「もう誰もいない、明日の朝8時半から開くから電話して下さい」とフロントの女性はすげない。この辺は日本と違ってなんとか連絡してやろうなどという素振りすら見えない。初日から大アクシデントに見舞われ落ち込む私に同行者が一生懸命慰めてくれるが、どんな言葉もむなしく聞こえる。

 問題はリュックの中身である。ノートパソコンにデジカメ、メガネが2つ、デジタル録音機、現在執筆中の資料etc。いつも仕事道具一式と書きかけの原稿資料は常に持ち歩くのが私の癖である。それが今回は裏目に出てしまった。

 激しい自責の念に駆られたが、それにはある理由があった。実はリュックの中に妻の遺骨も入っていたのだ。
 妻が他界して4年。生前ほとんどどこにも連れて行かなかったので、せめてもの罪滅ぼしと思い、遺骨を小さな入れ物に入れ上海まで連れてきたのだ。いくらなんでも1人異国の地に置き去りにすることはどんなことがあってもできない。

リニアカーの中に忘れ物をする。

2005-07-27 16:41:01 | 視点
 龍陽路駅でリニアモーターカーを降り、重いトランクを持って地下鉄2号線に乗り、ホテルがある人民広場駅に着いた時、それまで背負っていたリュックサックがないことに気付いた。盗られたのではない。忘れたのだ、リニアの棚に。

 中国で忘れ物をしたらまず100%出てこないーー悲しいがこれが定説である。旅行雑誌にすらそう書いてある。
 後日、上海の取材先企業でその話をすると、相手の社長が「この国の人は人の物を盗るのをなんとも思っていない。通勤途中に私の前を走っているトラックから荷物が落ちると、道路から数人が走り寄ってあっという間に80kg以上はありそうな荷物を数人がかりで持ち去りましたから。あんなことはとっさの行動でできるものではありませんよ」と同情してくれた。
 「しかし、いまから30数年前に中国に行った時はホテルの部屋に鍵をかけなくても安全だったし、部屋に忘れたカメラキャップや捨てたつもりのスリッパまで次の宿泊地に届けられたんですよ」
 と話すと、「そんな時代もあったんですか」と感心された。
 いまの中国の風潮を見て、この国の人間は代々○○だからとか、そういう民族なのだという言い方は改めた方がいいだろう。日本人だってかつては勤勉で、助け合う民族と言われてきたが、いまはどうだ。

 それはさておき、真っ青である。自慢ではないが、私はいままで忘れ物をしたり、物をなくしたことは一度もない。傘だって盗られはしても置き忘れたことは一度もないのだ。それが上海くんだりにまできて忘れ物をするとは……。悔やんでも悔やみきれないが、どうすることもできないので、とりあえずホテルにチェックインした後、対策を取ることにした。

 それにしてもリュックがないことに気付いたのは、ミネラルウォーターを飲むために背中のリュックから取り出そうとして後ろに手をやると、そこにあるはずのリュックがないことに気付いたのだから、ドジとしか言いようがない。
どうも時々私の脳は旅先で活動を停止する傾向にあるらしい。決して老化のせいではないと思うが。

上海で世界最速のリニアに乗る。

2005-07-26 21:55:50 | 視点
 この1、2カ月の間に香港、上海と立て続けに中国を旅行している。いずれも覗き見精神旺盛なブラブラ旅行である。よって移動はもっぱら歩きか地下鉄、列車。とうとう8日目には両足指にマメができてしまった。
 まず到着した空港は上海市東部の浦東空港。上海はこの5、6年の間に3回ほど行っているが、浦東空港に着いたのは初めてである。それまでは上海市西部の虹橋空港だったが、現在は国内線専用の空港になっている。
 空港からホテルまでタクシーかバスという手もあるが、せっかくなら世界最速とPRしているリニアモーターカー(以下、リニア)に乗ってみたいと思い乗り場へ直行。終点の龍陽路まで50元。エアポートバスに乗れば上海市内まで20元もあれば足りるから、リニアの50元というのは高い。
 税関を通過し、空港内の銀行で両替を済まし、空港2階のリニア乗り場へ行く。リニア乗り場駅は中国語で「磁浮車站」。磁石で浮かして走る車の駅だ。
 車内に乗り込むと電光掲示板には世界最速をアピールするように刻々と数字が映し出される。やがて電光掲示板の数字が時速430kmを表示。世界最速を記録した瞬間である。
 「世界最速といっても一瞬ですよね。すぐスピードダウンするでしょう」
 口さがない連中はそう揶揄するが、浦東空港から龍陽路駅まではわずか30km。この短い距離で430kmまで出すのだから、さすがと感心すべきだろう。所要時間7分20秒。
 ただし、世界最速の旅を楽しめるのは朝8時半から夕5時半までで、それ以降の時間はバスかタクシーに乗るしかない。そうなのだ。驚くが、リニアの運行時間は朝8時半~夕方5時半までなのだ。

弁護士から見た失敗する経営者像

2005-07-13 00:06:55 | 視点
 ダイエー・中内氏、西武グループ・堤義明氏らを挙げるまでもなく、一時代を築いたかに見える経営者達が相も変わらず失敗していく様を見ていると、つくづく人間って反省しない動物だと思ってしまいます。
 たしかにいまは企業経営が難しい時代です。 しかし、経営の本質が変わったわけではないでしょう。
昔から失敗する経営者にはある種の共通点があります。
その一つは奢りです。経営者の奢りがワンマンになり、他人の言うことを聞かなくなり、終いには判断を誤ります。
 その他にもいくつかありますが、 数々の企業再生を手がけてきた萬年弁護士は「つまるところ経営力とは何かに尽きる」と断言します。
 では、経営力とは何でしょうか。
失敗する経営者に共通している点とは何でしょうか。
その辺りを実例を交えながら萬年弁護士に大いに語ってもらいます。


             --記--

●日 時: 7月16日(土) 13:30 ~ 17:00
    ★(例会は基本的に第3土曜日に開催します)
●場 所:福商会館(大名1-12-57)の2F
      天神西通り、岩田屋本館(旧Zサイド前)の前に大福うどん、
      ケンターッキーフライドチキンがあり、その角を赤坂方向に
      入ると角から2、3軒目左手のビル(1FにPumaの赤いショップ)

●内 容:
1.勉強会
  「弁護士から見た失敗する経営者像」
   講師:萬年浩雄弁護士

2.発表企業
  「きれいなコーヒー・オアシス珈琲」
    発表者:石川高信社長

    「きれいなコーヒー」というのはオアシス珈琲の商標です。
   同社の石川社長はコーヒーの味が悪いのは、生豆についているかすや
   ほこり、カビなどのせいで、これらを洗ってきれいな豆を焙煎すれば、
   コーヒーの味は格段おいしくなると発見しました。
    そしてコーヒー豆を洗う独特の製法を編み出し、特許を取得し、「きれい
   なコーヒー」を販路拡大中です。
    より知名度を上げるためにはどのような方法があるのかを考慮中です。

●例会参加は誰でも自由です。
  参加費用:会員・非会員共に1,000円。  
●例会後、懇親会を予定しています。
   予算3,000円程度。
●例会・懇親会とも参加申し込みは事前に!
   当日、会場準備の都合上、極力事前に参加申し込みをお願いします。
●申込先 E-mail kurino@liaison-q.com

香港の出稼ぎフィリピン人女性達

2005-07-08 20:21:10 | 視点
 5月1日のメーデーを挟んだ3日間、中国は労働節といって連休になる。国が決めた休日は3日らしいが、その前後に休みを加え大抵1週間ほどが休みだ。
そして、この期間中は街にフィリピーナー達があふれてくる。
 祖国を離れ香港に出稼ぎに来ているフィリピン人の多くは女性である。
彼女達の休日の楽しみ方は観光地に行くわけでも、ディズニーランドを見ることでもなく、同じ国の人達と集まりお喋りをして過ごすことなのだ。

 港には海の向こうの故郷に思いを寄せるフィリピーナーが溢れ、初めてその光景を見た人はここは香港ではなくフィリピンのどこかの町ではないかと勘違いするに違いない。
 セントラル近くの人達はビルの通路を占拠し、ゴザを敷き、そこを「解放区」にしてしまう。だが、そんな彼女達を警察もビルの警備員達も取り締まる風はない。その代わり「占拠」できるのは通路の片側だけで、そのルールをきちんと守ることが彼らの取り決めのようだ。
 よく見ると彼女達は10人前後のグループごとに別れているようで、それぞれにトランプをしたり、お喋りに興じたりしているが、聖書を紐解いたり、読書に励んでいる人もいる。

 フィリピーナーに共通しているのは明るくて、よく喋ることだ。だから、口さがない人は彼女達を称して「小鳥のようだ」と揶揄する。ピーチクパーチクとうるさくさえずると言うのだ。
 昼時ともなるとそれぞれ持ち寄った総菜やご飯やケーキ類を食べ、歌を歌い踊り、国に残した家族のことを思い、写真を見て過ごすのである。
恐らくお金は皆本国に送金するため、休日といえども自分のためには1銭も使わないのだろう。

 彼女達の多くはお手伝いさんだが、なかには香港人や香港の英国人の子供の教育係をしている人もいる。大学を卒業しながら、香港でお手伝いをした方が稼げるからと出稼ぎに来ているのだろう。
そういう女性は知的な顔をしているから一見してすぐ分かる
 でも、彼女達の顔には、家族の犠牲になっているという暗さはない。
むしろ南国特有の明るさがあり、その明るさに、見ているこちらも救われる。

 かつての日本人にも「唐行きさん」と呼ばれた人達がいた。
家族に仕送りをするために外国に出稼ぎに出た女性達だが、いま彼女達のことを知っている日本人がどれほどいるだろうか。
そんなに遠い昔のことではない。
それなのに日本人は1世代昔どころか、ほんの10数年前のことでさえすぐ忘れてしまう。

 公園で10数人が集まり、食事を持ち寄り、歌を歌っていた姿をビデオ撮影していると、彼女達が持ち寄った食事を食べろ食べろと勧められた。
食事をした後だったが少しよばれ、「サンキュウ」と言うと「ジャパニーズ!」と言われてしまった。
やはり発音が日本語的だったのだろう。
「いらっしゃいませ」「ありがとうござました」
何人かが知っている日本語を口にし、皆笑う。
彼女達が汚い日本語を口にしなかったのが救いだった。
 ギター演奏に合わせ手拍子をし、一緒に唱い、仲良くなった楽しい一時。

香港のインターネット事情

2005-07-04 00:21:56 | 視点
 香港はインターネットが気軽にできる地域である。
公共の場所には必ずといっていいほど、インターネットに接続できるような施設がある。
写真は地下鉄駅構内の光景で、右端には中国語で「免費上網服務(インターネット無料サービス)」と書かれた幟が立っている。
つまり誰でも無料でインターネットができるのだ。
海外でのメールチェックをする時などにこのような無料サービスがあると非常に助かる。

 このほかにもPCを数台設置して、飲み物を頼めば自由にインターネットをすることができるカフェーが至る所にある。
インターネットカフェーと違うのはインターネットをする空間ではなく、飽くまでもカフェーであり、インターネットは客へのサービスとして提供されている点だ。
こちらは立ったままでの利用ではなく、椅子に腰をかけてすることができる。PCの前の席さえ空いていれば、別に飲み物を頼まなくても利用できるようだ。
PCカメラも付いているのでTV電話のように互いに顔を見ながらチャットで会話もできるし、私の横ではアラブ系の婦人が故郷の家族とPCカメラを使って会話をしていた。