栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

大久保利通になり切れなかった男

2023-10-10 10:00:30 | 視点

 近年、国会議員から地方自治体の首長になる人物が増えている。地方重視の表
れなのか、それとも地方自治体を舐めているのかは定かではないが、地方から国
へというステップアップの逆が起きているのは間違いない。
 牛後より鶏頭と考え、やりがいをそこに求めるのかと思えば、権力志向で地方
自治体の首長を目指した人もいる。そういう人物の中には「反(脱)原発」を掲
げて当選した後、原発容認に傾き、2期目は初出馬の際に対立した自民党に推薦
を求めた知事もいた。

 政治家としてこれほど優れた男はいないと思われるが、彼ほど成したプラス面
よりマイナス面や好きか嫌いかという本筋以外のことで語られることが多い政治
家も珍しい。
 政治家は政治思想や業績、手腕で評価されるべきである。ところが小沢一郎に
限っては、そういうことより好きか嫌いで語られ、親小沢、反小沢という本来の
政治とは関係ないところで分かれ、話題になる。
 民主党政権時代がまさにそれだった。民主党が政権を取った影の主役は小沢一
郎というか、小沢一郎なくして民主党政権はなかったにもかかわらず、政権奪取
後に親小沢派と反小沢派に分かれ内部紛争を行ったが故に民主党政権は瓦解した。
少なくとも瓦解の一因になった。

 小沢一郎ほどブレない政治家はいない。彼は議員になりたての頃から「政治改
革」を標榜し、良し悪しは別にして、現在の小選挙区制は小沢一郎が目指したも
のである。政権交代が可能な2大政党政治にしたい。彼は議員になりたての頃か
らずっとそう考え続けてきたのである。そのために身を捧げてきたといっても過
言ではないだろう。

 そして小選挙区制は実現できたが、彼が目指す2大政党政治は実現できなかっ
た。野党が弱すぎたからで、強い野党を作り政権交代を可能にしなければならな
い。そのためには数がいる。
 まあ大雑把に言えば、小沢一郎はそう考え、野党の結集を訴え、仕掛けてきた。
過去2度は曲がりなりにも「成功」した。それでも小沢が目指す政権はできなか
った。

 3回目の正直、という言葉がある。小沢一郎の3回目の挑戦は成功するだろう
か。残念ながら失敗に終わるだろう。

非情になり切れない小沢一郎

 なぜ、失敗に終わるのか。

「俺は西郷南洲が本当は好きです。彼には情がある。人間は、やっぱり情だよね」
 その一方で「政治家としては大久保利通に惹かれます」とも小沢は言っている。

 小沢一郎の失敗は「大久保利通になり切れなかった」からだろうと思っている。

情に引きずられ、非情に徹しきれなかったのだ。

 もし小沢一郎がもっと能弁だったら、日本の政治は変わっていたのではないだ
ろうか。彼は例えるなら中小企業の職人タイプの社長である。社員や部下に懇切
丁寧に教えたり、マニュアル化をするのが苦手で、自分でした方が速いと考え、
また自分ですれば望んだ通りの結果を出せる。
 それなら社員教育に力を入れ、自分のノウハウを教えればいいではないかと思
うが、職人タイプの人間にはそれが出来ない。「技術は盗むものだ」という考え
が染み付いている。

 全文はHPでお読み下さい。

 「目を覆いたくなる政治家の質低下(2)

   ~大久保利通になり切れなかった男」

 http://www.liaison-q.com/kurino/Seijikanosituteika1.html


Nの憂鬱20~反戦歌とフォークゲリラ

2023-10-05 11:54:51 | 視点

Kurino's Novel-20                    2023年9月26日
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Nの憂鬱20~反戦歌とフォークゲリラ
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◇顔写真を撮り無言の圧力を

 工学部に巣食う学内右翼による大学正門前の立て看板破壊、全共闘の学長室占
拠、右翼・防共挺身隊の早朝襲撃があり、その過程で器物損壊、中山学生課長に
対する暴行・傷害容疑等で数人が逮捕されるなど、夏休みが明けるとE大はの状
況は一変して騒々しくなった。
 逮捕者に対する接見、差し入れ、裁判支援闘争が従来の活動に加わってきたし、
10月21日の国際反戦デーに向けた取り組みもあったが、この頃になると各セクト
の活動は学園闘争より10.21や、その後の佐藤訪米阻止闘争をいかに闘うかとい
う政治的課題に対する闘争の方が高まると同時に学内闘争も先鋭化していった。

 この頃になるとデモはスクラムを組んでのジグザグデモが当たり前になり、そ
の周囲を「私服」が身分を隠すことなく付きまとい、これ見よがしに真っ正面か
らカメラを向けてバシャバシャッと撮っていった。お前の顔写真を撮っているぞ、
お前が過激デモに参加している証拠だ、と言わんばかりに警察権力による半ば恫
喝である。
 ここまで露骨に顔写真を撮られると、大手企業等への就職を考えている学生に
は効果てきめんで、学外デモへは参加せず、せいぜい学内で後方支援活動を行う
か、それもできない学生は全共闘活動に距離を置くノンポリ学生と化すか、少し
離れた所から見守り「機動隊導入ハンターイ」「不当逮捕に抗議するぞー」とシ
ュプレヒコールで声を挙げるのがせいぜいだ。

 (俺の面は完全に割れてるな)
 写真をバシャバシャと撮られながら、Nはそんなことを思っていた。今更、面
が割れる割れないではなかった。まだ少人数でデモを行っていた当時から写真を
撮られているから面はとっくに割れているし、N自身その自覚はあった。だが、
一般企業への就職試験を控えている連中は大変だろうな、と彼らがデモに参加し
ない気持ちが分からないでもなかったが、「お前ら、それで自分に恥ずかしくな
いのか」と蔑む気持ちもあったが、だからといって誰かをデモに誘ったりしたこ
とはなかった。

       (以下略)

 

全文はHP内の「Kurino's Novel Nの憂鬱」でお読み下さい。

 http://www.liaison-q.com/KurinoNovel/KurinoNovel-index.html

バックナンバー

 Nの憂鬱1:彼思う故に我存在す

 Nの憂鬱2:鳥になった日

 Nの憂鬱3:二階から落下する