栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

過去形で語る人、未来形で語る人、出来うる支援を ~ 東日本大震災の寄付に見る人間模様

2011-03-29 08:21:53 | 視点
 まず、今回の東日本巨大地震で被災された方々、あるいは親戚、友人、知人等関係者が被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
そして皆さんの安全と、1日も早い復興をお祈り申し上げます。

◆素早ければいいわけではない

 人間は予期せぬ出来事に遭遇すると普段とは違う行動態度を取ることがよくある。
そのことが今回の東日本大震災後に各地域で取った各人の行動でも見て取れる。
 まず地震直後の3月12日の夜中に被災地に救援物資を送ろうというメールが届いた。
なかなか素早い行動である。
しかし、被災の様子からして救援物資を送っても恐らく届けられないだろうと思い、そのメールを他に転送せず、私のところで留めた。
 すると日付が変わって間もなく「現時点で運送会社の体制が十分整わない事が判明、現状では公的機関への募金が無難だという見解に達しました」という訂正メールが届いた。素早い行動ときちんとした対応だった。
 ただ、この種のメールには注意も必要だ。よく考えずに友人知人に転送すると、チェーンメールが増幅し、とんでもない結果を招くこともある。現実に福岡市で救援物資の呼びかけをした人の所に大量の物資が持ち込まれ、途中で断る事態も起きている。物流手段をよく考えずに、ただ呼び掛けると「善意のチェーンメール」が起きるのがネット社会の怖いところだ。

◆過去形と未来形、寄付の2つのタイプ

 次に全国で募金活動が湧き上がった。国内のみならず世界の国々で日本の被災地のために募金する人が相次いだ。このうねりは素晴らしい。私も少額ながら募金した。
 その一方で、募金活動を利用する人達も現れた。被災地支援と名乗って個人的利益のために募金を集める人や集団だ。この種の活動は以前から某宗教団体等が名前を変えてよくやっていた手口なので注意が必要だ。
 募金するにも相手を確かめないといけないとは嫌な時代だが、人々の善意の心に付け込む詐欺まがいの募金活動も出現しているので要注意。

 「寄付やボランティアは貧乏人(持たざる人)の方がする」。私は昔からそう言っている。「貧乏人の方が」とは「金持ちに比べて」ということだ。金持ちは金を使わないから金持ち、という言葉があるが、貧しい人達の方が助け合いの精神を持っていることは間違いない。
 それは自分が助けられたことがあり(物質面だけでなく精神面でも)、その時のありがた味を知っているから、今度はお返しをしたいと思うのだ。
 こうした行動は今回でも多く見られた。阪神大震災で被災した人達がいち早く動いたし、口蹄疫で苦しめられた宮崎の人も「その時の恩返し」と救援物資を送っている。

 一方、金持ちは自分の力でのし上がってきたという思いが強いから、一般的に弱者に対して冷たい。特に市場原理主義、新自由主義的な考えが強くなった頃からこの傾向が増してきた。

 ところが今回の震災ではこの「定説」が打ち破られた。
セレブと言われる人達がこぞって募金をし出したのだ。まるで競い合うように。
こういう競い合いは歓迎すべきことだ。非常に喜ばしいし、大いに勇気づけられる。
 だが、よく見ていると、彼らの行動は2つに分かれた。過去形で語る人と未来形で語る人に。
 感動したのは元ニュースステーションのキャスター、久米宏さんだ。
彼は18日、朝日新聞社と朝日新聞厚生文化事業団が実施している「東日本大震災救援募金」に2億円を寄付した。
 感動したのは寄付金の多さもさることながら、「寄付した」と過去形で発表されたことだ。久米さん本人が発表したわけではない。朝日新聞厚生文化事業団が発表したのであり、本人は一切コメントもしていない。

 「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も個人で10億円を寄付すると14日に発表した。そのほか「ヒートテック」30万点、タオル、ジーンズなど計7億円相当の商品、さらにグループ各社や従業員から募った4億円も合わせて寄付する、と。
 楽天の三木谷浩史会長件社長も「10億とかの単位で考えている」と14日に発表している(彼は04年の新潟県中越地震の時には1億円を個人的に寄付している)。

 セレブの多くが寄付金、寄付行動を事前に発表するのに対し、久米さんの黙って寄付した行動は際立っている。
 もちろん寄付の仕方には色々あるし、これから寄付すると発表するだけで、随分勇気づけられるのは間違いない。
 そういえば福岡にも億単位の年俸をとっている創業者が複数いたが、彼らも寄付したのだろうか。自分の年俸の多いことが社員の励ましになるのだというようなことを言っていたが、こういう時こそ被災者の励みになる行動を取って欲しいものだ。
 
それにしても日本のセレブは個人用飛行機ぐらい持ってないのかと思う。持ってなければヘリコプターをチャーターして即座に救援物資を空輸するぐらいのことができないのかとも思ったが、恐らく事前に飛行プランを出さなければならなかったり、なんだかんだと面倒なことが多いのだろう。

 私の家族も2年近く前に被災したから分かるが、被災地への支援はタイムリーに、そして息長く続ける必要がある。先日、岡山県美作市・兵庫県佐用町の水害復旧工事現場を見て回ったが、集中豪雨被害から約2年近くたったいま頃護岸工事が行われていた。それを考えると東日本の復興はかなり長い年月を要するだろう。それだけ息の長い、継続支援が必要になる。一時的、ブーム的な募金活動もそれはそれで重要だが、一過性で終わらないようにしたいものだ。

◆高まるボランティアの必要性

 ボランティアを本当に必要とするのはこれからだろう。
地方はどこも高齢者の家が多い。それだけにボランティアのマンパワーを必要としているはずだし、私の実家も被災後、ボランティアの手助けでとても助かった経験がある。ところが、いま被災地はボランティアを受け入れたくても受け入れられないジレンマに陥っているという。
 行政機能がマヒというより、喪失していることが1つ。
次はガソリン、食料、宿泊所不足で、他県からのボランティアを受け入れることができないこと。裏を返せば、食料、ガソリン持参のボランティアは歓迎ということだ。
 すでに県内のボランティは疲れが出ており、交代が必要なのも事実だろう。
となると個々の動きではなく、組織的にボランティを送り込み、交代させるようなボランティ統括組織(自衛隊の救援活動などがまさにそうした形態なのだが)が必要だ。
 ともあれ、これからますますマンパワーの必要性は高まってくるので、皆が力を合わせ、できる協力を一つずつやきたい。


以下は情報です。
詐欺サイトも現れているようなので注意してください。
<東北地方太平洋沖地震 募金・ボランティア募集の活動 一覧表>
  http://www.ipodlover.jpn.org/donation_volunteer.html

私が今回振り込んだ先は下記「中央共同募金会」ですが、
その前は「国境なき医師団」へ、
次回は現場の最先端で支援活動に従事しているNGO、NPOに寄付したいと考えています。
いずれも少額ですが、被災された方達、彼らを現場で支援している人達の力に少しでもなれればと思います。
  http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/otherpress/110314-001.html

<郵便振替口座>
 口座名義:中央共同募金会
      東北関東大震災義援金
 口座番号: 00170-6-518

 口座名義:日本赤十字社
      東北関東大震災義援金
 口座番号: 00140-8-507


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林原グループの経営破綻が教えるもの(5)(6)~社内バブルに踊る

2011-03-22 22:06:58 | 視点
5.社内バブルに踊る

 本稿を書きながら、私はゴッホを思い出していた。

といってもビンセントその人ではない。画家の兄ビンセントと、その兄を画商として経済的に支え続けた弟テオのゴッホ兄弟のことである。

 健氏によれば、林原の経営が少しよくなったのは、同社が開発したマルトース(麦芽糖)が医療の輸液として使われだした1974年頃からのようだ。それまでは赤字である。

 ところが、この後状況は一変する
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6.中国銀行と持ちつ持たれつの関係

 林原グループの借入金約1300億円(ピーク時には1600億円)のうち中国銀行の貸出金が約400億円と大きい。
 この金額について「過剰な貸し出し」ではないかと指摘する声もあった

それにしても林原グループと中国銀行の関係は尋常ではない
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7.メーカーへの道を選択していれば

 再び言う。好事、魔多し、と。

絶好調の時ほど陥穽が潜んでいる。
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林原グループの経営破綻が教えるもの(2)(3)(4)

2011-03-16 12:43:34 | 視点
2.粉飾決算

 最大時には売上金の架空計上が288億円にも上っていたという。これだけでも驚くが、粉飾期間の長さにも驚く。粉飾を始めたのは1984年からで20数年間にも及んでいた。

 注目したいのは粉飾を始めた1984年という年だ。
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3.無秩序な事業拡大と不動産投資

 不思議なのは林原健前社長が粉飾決算について「過去の状況を審査していただいて、初めて知った」と、会社更生法申請直後の2日夜の記者会見で語ったことだ。

 不思議なことは他にもある。同グループの一見無秩序とも思える事業拡大だ。
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4.変わった経営者

 林原健氏は風変わりというか、ちょっと変わった経営者である。
経営者として言っていることは至極まともである。
もし、今回のことがなければ、同氏は経営者賞を受賞していたかもしれない。
なのに、変わった経営者と言ったのはなぜか
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破綻──バイオ企業・林原の真実
林原 靖
ワック



東北被災地に現地入りするマスメディアに要望したい~カイロの持参・配布を!

2011-03-15 17:14:45 | 視点
 東日本巨大震災の取材のためマスメディア各社が現地入りしている。
こういう時にいち早く現地入りし、現地から現状を報道するのがマスメディアの使命である。
ただ、阪神淡路地震の時もそうだったが、メディア取材者たちが被災者の邪魔をしていることもあるので注意して欲しい。

 例えば第一報は絶対必要である。
そのことで現地の事情がかなり分かるからで、それを伝える使命がメディアにはある。
ただ、その後に現地入りするメディアには別の役割もあるのではないだろうか。
とにかく現地に行き、そこから報道すればいいということではないはずで、現地で被災した人達の邪魔をしない、手を煩わせないようにして欲しいのは最低限のルールだ。
 そういう意味では菅首相の原発視察の現地入りは逆に原発事故への対応を遅らせることになった。
一刻を争っている時に首相が来て説明を求められれば、それに答えるために現地の人間が対応しなければならなくなる。
「邪魔だ。向こうに行っててくれ」
私ならそう叫びたいところだ。

 同じことが数日後に現地入りするメディアにも言える。
特にニュースなどの場合、スタジオで報道するアンカーと呼ばれるキャスターが現地を自分の目で見ておきたいと、現地に行きたがることが多い。
 安藤優子キャスターが昨日、現地から「毛布が足りない、食料が足りない、医薬品が足りない」と報道していたが、その時ある違和感を覚えた。(小倉キャスターはオリンピックを始めとしたスポーツなどの場合は現地入りするが、被災地などの危険な場所には行きたがらないようで、それはそれで見上げた根性だ)
 それは報道者である前に人間であれ(人間でありたい)ということだ。
目の前で溺れている人がいて、手を伸ばせばその人を助けられるかもしれない時に、どちらが優先されるのかということだ。
人間としての個人か、職業人としての仕事か。

 かつて同じことを阪神淡路地震の後、福岡の民放F局の若い取材者と議論したことがある。
彼らは取材だからとホテルに泊まり、その結果、身内の安否確認やボランティアで現地入りした人達の宿泊場所を奪うことになったが、彼らにはそのことを一考することもなく、自分たちは報道する義務があると言い張った。
その時、私は非常に後味の悪い思いをした。

 いま現地に物資を届けたくても陸路が復旧してないため、現地で物資の不足が分かっていてもなかなか届けることができないのが現状だ。
それでも報道陣は現地入りできる。それならついでに少しでも物を持って行って欲しいと思う。
もちろん毛布や衣類といったかさばるものは難しいだろう。
持っていけるとすればあまりスペースを取らない物しかない。
例えば暖を取るカイロはどうだろう。
これならある程度の数を持っていけるのではないか。
重量は増えるが乾電池も役に立ちそうだ。

 そうした小物を少量でもいいから、現地入りする時に持参して配って欲しい、というのは私のわがままだろうか。
そんな少量持って行っても役に立たない、と批判されるかもしれない。
それでも、明日の毛布より、今日の小さなカイロで暖が取れる人が1人でも2人でもいるかもしれない。

 もうひとつは簡易トイレだ。
折り畳み式で使い捨ての簡易トイレを広島のメーカーが阪神淡路地震の時提供したという話を聞いたことがある。
水洗トイレが使えないと被災地は悲惨な状態になる。
人間は食べ物を摂取すれば排泄が付きものだ。
排泄すればその処理が問題になる。
水洗が使えなければ穴を掘ったところでするか、山積みにしたまま放置するかしかない。
今回は冬場だから夏場ほどではないだろうが、不衛生な状態が続き疫病が蔓延することもある。
食料の供給と同時にトイレの供給も早急にして欲しいものだ。






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カンニング受験で勾留延長を認めた京都地裁の暴挙

2011-03-14 22:29:16 | 視点
 京都大学入試で試験中にインターネットの質問サイト「ヤフー知恵袋」に投稿し、カンニングをした受験生が偽計業務妨害容疑で京都府警に逮捕されていたが、本日、京都地裁が10日間の勾留延長を認める決定をした。

 以前にも書いたが、いわばたかがカンニングである。

逮捕しただけでもやり過ぎなのに、さらに10日間の勾留延長を検察が主張するとは権力の横暴ではないか。

この種の事件は在宅聴取で十分だ。

最初から本人は認めているし、どういう風にやったのかという手口もきちんと話している。

いまさら証拠隠滅の恐れも、逃亡の恐れもないだろう。

それなのに、さらに10日間も勾留を延期申請する検察も検察だが、それを認めた裁判所の方にビックリする。

検察、裁判所揃って弱い者いじめをしているとしか思えない。

京都弁護士会が逮捕後接見に行くという話があったが、どうしただろう。

こういう時は当番弁護士制度で京都弁護士会は弁護士を付けて欲しいし、またそうすべきだろう。

弁護士は裁判所に即時抗告をすべきだ。

京都大学も被害届を取り下げるべきだろう。

いつからこの国は寛容の精神をなくしたのか。

物事の軽重も分からなくなったのか。



ジャパネットたかた第15回利益還元祭

成熟市場の中に新規市場を開拓し、成功したオリンパスカメラ

2011-03-09 16:34:58 | 視点
 成功する企業と失敗する企業の違いはどこにあるのか?
よく、こういう質問をされることがある。
ひと言で言えば、マーケットニーズを把握した商品開発を行っているかどうかだ。

 言葉で言ってしまえば簡単だが、実際にはなかなか出来ない。
なぜなら、マーケットがどこにあるかがよく分からないからだ。
そこで勢い、間口を広げたり、勝手な思い込みで商品作りをする。
その結果、なかなか商品が売れずに苦しむ。

 こうしたことは大手企業でも同じ。
例えばオリンパスカメラは4、5年前に画期的な技術を搭載した一眼レフカメラを開発し、市場に出したが、結果は散々だった。
 しかし、その後、マーケットの再分析を行い、新商品を出したところ予測以上に売れた。

 成熟市場と思われていた市場の中に、新規市場を作り出すことに成功したのが、オリンパス成功の要因だった。
 その過程を具体的に見ていきたい。

 この1年あまり、中小企業を対象に各地で繰り返し、マーケットニーズを把握する重要性を講演してきた。
今回の話も「中小企業の活性化のために」と題して、某地で講演した中の一つ。

 他社の失敗と成功からは多くのことが学べるはずだ。

デジカメオンライン


       --リエゾン九州3月例会--


●日 時: 3月12日(土)13:30 ~ 17:00

◎場 所:正友ビル5F(福岡市中央区天神4丁目5-20)
       
       日本銀行(昭和通り沿い)とガーデンパレスの間の道を浜の方
    (須崎公園の方)に進む。
       「ほっともっと」の先の「光ビル」の向かいのビル。

●内 容:
勉強会
  「オリンパスカメラはなぜ失敗し、なぜ成功したのか」
     ~オリンパスに学ぶ、成熟市場の中での新規市場の開拓
   講師:ジャーナリスト・栗野 良

企業発表
  「伝統的日本家屋の知恵と現代のセンスを融合した『かたつむりの家』」
   発表者: 尚建築アトリエ・久保山博幸 代表

●例会参加は誰でも可能です。(但し、事前に参加申し込みをして下さい)
  参加費用:会員は 1,000円。
非会員は 2,000円。


林原グループの経営破綻が教えるもの(1)

2011-03-06 23:44:19 | 視点
 岡山を代表する企業の一つ、林原グループ(岡山市)が経営破綻し、2月2日に会社更生法の適用を申請した。
1月26日に私的整理の1種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請したわずか1週間後のことである。
あまりの速さにいろいろ取り沙汰もされたが、それにしても、なぜ林原は破綻したのか。なぜ、メーンバンクは林原の破綻を見抜けなかったのか。
 同グループ破綻の要因を探ることは、多くの企業にとって経営を誤らないための参考になると思われる。

評判の地場優良企業がなぜ?

 林原は岡山県内と製菓メーカーでは知らない人がいないほど有名だが、それ以外の人はあまり知らないと思うので、まず概略を紹介しておこう。

 本社は岡山駅の近くにあり、歴史を感じさせる古い建物。私は外からしか眺めたことがないが、個人的にはこの佇まいは気に入っている。

 創業は1883年。水あめ製造がスタートで、一時期、生産量日本一を誇ったこともあったようだ。ただ戦後、砂糖が安価に生産されるようになると水あめ需要は落ちていくが、昭和30年代にデンプンから各種糖質を開発することに成功。それをメーンに研究開発型企業として発展してきた。

 林原の名前を有名にしたのは食品、化粧品業界では知らない人がいないトレハロースや、抗ガン剤インターフェロンの開発。
特にトレハロースは、それまででんぷんからの安価な開発は不可能と言われていただけに、それに成功した同社の貢献は大きい。

 こうした開発を支えていたのが豊富な資金力である。
その資金力を生み出していたのが水あめ製造で儲けた資金で買い求めた土地で、土地の担保力が資金を生み出していたといえる。

 林原グループの中核企業は糖質原料の製造をする(株)林原に、食品・医薬品原料の研究開発及び感光色素の研究・合成の(株)林原生物化学研究所、各種食品原料の販売を担当する(株)林原商事、そしてグループの不動産管理をする太陽殖産(株)の4社。このうち太陽殖産(株)を除く3社が会社更生法適用を申請した。負債総額は1318億円。

 林原の破綻原因についてはいろいろ言われているが、以下、代表的なものを挙げながら検証してみよう。

           (以下略)

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ソニーストア

最近はマスコミも社会も常軌を逸している。

2011-03-04 17:26:31 | 視点
 もう少し配慮した対応があっていいはずだ--。
入試でカンニングした予備校生の逮捕のことである。
偽計業務妨害容疑での逮捕というが、果たしてそこまでする必要があったのか。
「社会的影響を考慮して」というのが警察の言い分だが、言ってしまえばたかがカンニングである。
厳重注意で済ましてもいいだろう。
その程度事件だと思っていたから、ここで取り上げる必要も、そのことについて書く気もなかったが、逮捕まですれば少しコメントしておく必要がある。
個人的には万引きのほうがはるかに大きな犯罪だと思っている。
それにしては両者の扱いが違いすぎる。
マスコミも社会も。

 今朝の朝日新聞は京大入試カンニング事件を1面トップ記事で扱っている。
冗談ではない。
他に記事はないのか。
前原大臣の献金問題は大した話ではないのか。
小沢一郎氏の政治資金規正法違反(?)問題と比べて、前原大臣の問題は小さな記事で済ませられる問題なのか。
いったいマスコミは記事の扱い基準をどこに置いているのだろうか。

 予備校生に逮捕状が出た後、彼の行方がしれないというニュースに接した時、個人的に一番心配したのは予備校生が自殺するのではないかということだった。
幸いというか、そういうこともなく発見されてホッとした。
 この後、起訴されるのかどうか分からないが、すでに彼は大きな代償を払い、残りのかなりの部分をムダにせざるを得ないかもしれない。
それを思うと、そこまで大騒ぎするような事件かと、どうしても思ってしまう。
少なくとも新聞のトップ面を飾る事件ではないだろうし、ワイドショーが連日連夜報道するような事件ではないはずだ。
もう少し彼の人生に配慮した報道(無報道)をすべきだろう。

 逆に問われなければいけないのは大学側の対応だ。
京大を始め各大学はそこを不問にしている。
監督責任を問われるべきだし、自らの監督体制の不備を恥じるべきだろう。
それをせず若者を逮捕させるとは教育機関にあるまじき態度と責められても仕方ない。
京大だけでなく、他の大学も。

 どうも最近、社会がチマチマしている。
巨悪は見逃し、扱いやすい弱者にばかり牙を向く。
その結果、より弱い者への犯罪が社会に急増している。


JR博多シティ(博多駅ビル)のプレオープン報告

2011-03-03 14:59:38 | 視点
 昨日、JR博多シティ(博多駅ビル)のプレオープンに行ってきた。
オープン前から5000人が行列を作り、大混雑だったそうだ。
「そうだ」と書いたのは、私が行ったのは2時過ぎで、開店時のことは知らないからだ。

 九州初進出の博多阪急デパートや東急ハンズが入る博多駅ビルは「JR博多シティ」と名付けられている。
名は体を表すと言われるように、このネーミングでJR九州が何を考えているかがよく分かる。
駅ビルのあり方を大きく変えたのは京都駅からだろうが、博多駅もそれに倣おうとしているのは間違いないだろう。
ただ建物の規模からして、京都駅ビルに遠く及ばなかったのは幸いだったが。
何が、どのように幸いなのかは後に述べる。

 来館者は18万5000人(3日付朝日新聞)。まずまずの出足といっていいだろう。
「客足は予想通りですか。それとも予測を上回りましたか」
「予想より多かったですよ。事前にいろんなところで取り上げてもらいましたから、そうしたことも影響していると思います。私どももいろんな所で店をオープンしてきましたから、オープン予想数字はそれなりのものを持っていますから」
 と、東急ハンズは好調な出足を強調してくれた。
 たしかに東急ハンズは出店を望まれていただけに店内は人で賑わっていた。
関係者もホッと胸をなで下ろしているに違いない。
ただ、私が尋ねたのは「客足」のことで、売り上げのことではないので、誤解がないように記しておきたい。

 他の専門店が入居しているスペースは「アミュプラザ博多」と呼ばれているようだが、そちらも状況は似たようなものだ。
人数、売り上げともに最も賑わっていたのは飲食関係の店である。
これはどんな場所でもオープン時に見られる光景なので、ある意味当然。
問題はオープン時の賑わいがその後に続くかどうか、即座に表れるのが飲食系の店だけに、オープン時の賑わいで喜んでいたら皮算用になることも。

 次は博多阪急。最近のデパートの常とはいえ、ここまで女性中心の店作りにしたところは福岡では初めてだろう。
1階から5階までが「婦人服」関連売り場。しかも2、M3(中3階)、3階は「HAKATA SISTERS(博多シスターズ)」中心の売り場である。HAKATA SISTERSとはいま流行りのカワイイ系を対象にした売り場。年齢層は20代~30代半ばぐらいまでか。
 日本のデパート売り場から「女性」が消え、「女の子」を顧客対象にしだしたのは最近の傾向とはいえ、ここまで「女の子」対象の売り場を充実させたのは「福岡初」だろう。
天神のデパートとの差別化という意味は理解できるが。

 もう一つも最近の傾向で、紳士服関連は6階のみだ。
いまやどこのデパートでも男が行く場所はない。店内を歩いても声もかけられない。
それはあなたに魅力がないからではなく、カネを落とす顧客対象と見られてないだけだから、決して落ち込むことはない。
 ついでに付け加えておくと、仮にモノを買った、買おうとしても、十分な接客対応などはいまは望んでもムダである。とりわけオープン直後の店では。

 博多阪急で感心したのは通路幅と休憩スペース。まあ、これも最近の傾向といえばそれまでだが、来館者にゆっくりしてもらおう、疲れたら休憩してもらうというもてなしの心は大いに歓迎できる。

 JR博多シティは地元色をいかに出すかという点に苦心していた。その点は東急ハンズ、博多阪急ともに同じで、例えば東急ハンズは博多のデザイナーとコラボレーションした作品コーナーを作っており、こうした点は大いに評価したい。

 時間の関係で地皆は見てない。それは後日、再度行ってから報告したい。
最後に一つ気づいた点を。
プレオープンなのにというか、とはいえというべきか、入館者の数に比例して買い物袋を下げている人の数が圧倒的に少なかった点だ。
もちろん私が訪れたのが3時前~4時という時間帯だから、午前中の客は買い物袋を下げている人が多かったのかも分からない。
 しかし、天神のデパートのいままでのオープン光景とは少し違っていたように感じた。
3か月はオープン景気が続くだろうが、問題はそれ以降。
果たしてどうなるか。

 私の予測では一時的に天神近くから客が博多駅に流れるが、全体の流れを変えるほどの動きにはならないと思う。
博多区、東区の量販店は影響を受けるが、駐車場の問題が今後どう影響してくるか。
 博多駅ビルが京都駅ビルに及ばなかったのは幸いしたと、競合店は半年後辺りに思うのではないか。
 とはいえ、競合店の自助努力なしには逆のこともあるが。



伝統的日本家屋の知恵と現代のセンスを融合した『かたつむりの家』

2011-03-01 21:04:24 | 視点
 人は環境から大きな影響を受ける--。
私はそう思う。
だから環境はとても大事。

 最近、うまいなーと感じているTVCMに俳優の堤真一を起用した、トステムの「窓」シ
リーズがある。
 夫婦間に流れる微妙な風は窓を変えれば変わるのではないか、といっているCMだ。
堤真一がいい味を出している。
 このCMに感心するのは、内部にいる人達の気持ちや心象風景は取り囲む空間によって大きく規制されているということを分かりやすく訴えているからだ。

 そう、私たちが最も長く影響を受けている環境は「家」である。
にもかかわらず、現代建築は四角なハコを造り続けている。
この一つずつ隔離された四角い空間が人間、とりわけ日本人の成長(内面的な)に影響を与えないはずはない、とずっと考えていた。
こうしたことに、建築家は明確な答えを出していないように思う。
 例えば戸建住宅といえば、洋風か和風のどちらか。
デザイン性でも機能性でもない、角度をもう少し変えたアプローチが欲しい。
そう思っていた。

 今回発表する尚建築アトリエの久保山博幸氏から送られてきた「かたつむりの家」のコンセプトとプロット(構想)を見た時、もしかすると上記のようなアプローチかもしれない、私の疑問に答えてくれるものかもしれないと感じた。
個人的には面白い「家」だと思う。

 ご本人は
 「ハウスメーカーによくある間取りやデザインから入る企画住宅ではなく、これからはこんな住まい方もあるだろうというスタイルです。若い層をイメージしました。ただ、アイデアのみでこれからどういう展開が考えられるのか? 現実にPR手法はどうなのか? 実現性は?
 多くの方に私のアイデアを見て頂いて、率直なご意見を賜る機会がないものか」
と考えての発表である。

 当日は模型も持参する。
皆さんの率直な意見をお願いしたい。


       --リエゾン九州3月例会--

●日 時: 3月12日(土)13:30 ~ 17:00

◎場 所:正友ビル5F(福岡市中央区天神4丁目5-20)
       
       日本銀行(昭和通り沿い)とガーデンパレスの間の道を浜の方
    (須崎公園の方)に進む。
       「ほっともっと」の先の「光ビル」の向かいのビル。

●内 容:
 勉強会

  「オリンパスカメラはなぜ失敗し、なぜ成功したのか」
     ~オリンパスに学ぶ、成熟市場の中での新規市場の開拓
   講師:ジャーナリスト・栗野 良

 企業発表
  「伝統的日本家屋の知恵と現代のセンスを融合した『かたつむりの家』につい
て」

  発表者: 尚建築アトリエ・久保山博幸 氏