栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

ネーミングはうまいのだけど・・・。

2006-05-31 00:27:46 | 視点
 日立が新しい洗濯乾燥機を発売した。
正確には発売は7月だからまだ発売されたわけではなく、発表したのだ。
この洗濯乾燥機のネーミングがいい。
「湯効利用」
洗濯だけでなく乾燥にも風呂の残り湯を使えるようにしたため、「水道水の使用量をわずか39Lに抑え、年間で浴槽約280杯分の節水効果」があるとのこと。

 日立は家電メーカーの中では昔からネーミングの付け方が非常にいいので注目している。
日立のネーミングが面白いと、私が最初に気付いたのは「からまん棒」だった。
従来の洗濯機は洗濯し終わると洗濯機の中で衣服が絡まり(昔ほどではないがいまでも洗濯物は多少絡まる)、それをほぐすのが大変だった。
そうした現象を解消するために洗濯機の真ん中に1本棒を入れた洗濯機だったと思う。
CMには河合奈保子を使っていたと思う。

 発想が面白く、商品特性をストレートに訴える訴求力のあるネーミングで、しかも遊び心満点だから、本来なら大ヒットしてよかった。
社名から受けるお堅いイメージと、ダジャレのようなネーミングの落差がまたとても面白かった。
その後も「お湯取り名人」という全自動洗濯機を出している。
因みに我が家の洗濯機はこの「お湯取り名人」で、いまでも使っている。

 開発力といい、ネーミングといい、日立の家電製品はもっと売れていいはずだが、残念ながら松下などに比べて販売力が弱い。
結局、販売力の強いところに負けてしまう。
それが分かっていながら販売力を強化できないところに1、2位になれない要因がある。


背中にご用心。

2006-05-29 23:43:03 | 視点
 人は一人の時は結構無防備である。
人に会う時は相手が男女に関係なく、ある種の緊張感を持っている。
それが仕事相手ともなれば、なおさらだろう。
身なり、仕草、話し方等にも、それなりに気を遣う。
ところが一人の時はつい無防備になる。

 喫茶店でお茶を飲んでいる時、ファミレスで食事をしている時、街を歩いている時・・・。
無防備だからその人の本質や、その時の気分がストレートに出てしまう。
そして、そんな時に結構人に見られているものだ。

 先日、街を歩いていたら向こうからちょっと前屈みで、腕組みして思案げな顔の男が歩いてきた。
これで和服を着ていれば、時代劇に出てくる、見るからに腹に一物ありそうな男そのものである。
どう見たって、その物腰は善人には見えない。
前屈みだから前を見る時どうしても上目遣いになる。
だからよけいに印象が悪い。
なにか良からぬ事を企んでいる風に見えてしまう。
旧知の間柄だったので、1メートル近くまで近付いた時に声を掛けたが、その時の表情もいまひとつ冴えなかった。

 私も時々何日、いや何か月も後になって、いついつ、どこどこで見かけた、と言われることがよくある。
その時に「背中に哀愁が感じられたわよ」などとは言われたくないものだ。
そのためにもできるだけ背筋を伸ばして歩くように心がけているが、果たしてどうか・・・。

市町村合併で地方の崩壊がさらに進む。

2006-05-27 23:55:57 | 視点
 「バレンタインの里」というらしい。
山の上には地方に似つかわしくないチャペルがある。
といっても別に教会があるわけではない。
結婚式場用のチャペルだ。

 なぜバレンタインなのかは分からない。
どうもバレンタイン地方と姉妹都市提携をしたからのようだ。
でも、なぜ姉妹都市なのかは分からない。
本来姉妹都市提携はそれまで何らかの形で行き来があったり、関係が深い都市間で結ぶものだと思うが、世の中には関係も意味もよく分からない姉妹都市が実に多い。
町長が海外旅行に行く口実で提携したのではとか、単なる売名行為ではと疑いたくなる。

 山を切り開いて、そこに町役場を移し、レストラン、多目的スペース、ホテル等を作った。
よく住民が許可したものだと思うが、今頃、議員は住民の代表ではほとんどなく、自分達のことしか考えていない者ばかりだから、全国の地方にこのような現象が見られる。

 それまで町役場は町の中心にあった。
それが山の上に移動したものだから、それまでの中心地が寂れていく。
いまでは商店街は見る影もない。

 それが平成の大合併で町が市に昇格したものだから、町役場は縮小されることになった。
今度は町役場があった、この場所が廃墟になっていく。
皮肉なことに合併が地方の崩壊をさらに進めているのだ。
まちづくり三法の見直しは遅すぎた。
いまとなっては地方商店街の崩壊に歯止めをかけることはできないだろう。
しかし、それでもなお、もう一度皆が「まち」とは何かを考えるきっかけにはなる。

思考しない現在人

2006-05-26 00:08:29 | 雑感
 最近、人と話をしていて会話が成り立ちにくいもどかしさを感じる。
どうも話(議論ではない)が噛み合わない。
「そのことはさっき説明しただろ」という場面が何度も繰り返される。
まるでデジャブーのように。

人の話を聞いてないのだ。
聞いてはいるが大脳を素通りしているから、頭に残っていない。
そんな人が増えている。

 ある時、会議というかちょっとした打ち合わせの席だったが、数人である議題について話をした時のことだ。
一応の結論が出て、次の議題に移ろうとした時、一人が紙を広げて「いまの話はこういうことなんですよ」と図示し始めた。
 初めてその様子に触れた時には、とても慎重な人だと感じた。
ところが、何度となく話している内にあることに気付いた。
理解力が遅いだけでなく、あまり人の話を聞いていないということに。

 これは特別としても、どうやら現在人(現代人ではない)は思考するのが苦手のようだ。
なぜなのか。
映像時代の影響で本を読まなくなったことも一因だろう。
それにしても若者ならまだしも、50前後の中年までこれではね。

人材の見分け方(2)--一見、頭の回転が速そうな人材

2006-05-25 01:28:24 | 視点
 武田信玄が「人を見損なう邪道七つの事」と、人材の見分け方7箇条を記しており、その内3箇条は前回紹介したので、今回は4箇条目を紹介しよう。

4.粗忽なる者の、早合点に慌てる気のある人を、よくかろき人に見損なうなり。粗忽に早合点の者は、大事あれば必ず慌てる者なり。
 (そそっかしく、早合点する人を敏捷な人、飲み込みが早い人と見損なうものだ。そそっかしく、早合点する人は大事が起きたときは必ず慌てるものだ)

 多弁な人に多いタイプである。

「ああ、分かった、分かった」
「はいはい、分かりました。それは早速やっておきます」

 と、返事が実に速いというか軽い。

「そんなこと言われるまでもなく分かってます。任せてください。きちんとやっておきます」

 返事だけ聞いていると実に頼もしい。

なかにはしゃべくり漫才師のように返事が速い人間もいる。

耳から入った言葉が大脳を経由せずに口に直結しているのではないかと思うくらいだ。

こういう人をよく「頭の回転が速い」という人がいるが、それは間違いだ。
頭は回転ネズミよろしく相手の言葉にその都度反応しているだけであり、
大脳皮質を使っているわけではない。

 だから、こういう人と話をしていると疲れてしまう。
テンションが高い上に持ってきて、話がすぐ横道にずれるからだ。
その度に話を本題に戻す努力をしなければならないから、余分なエネルギーを使う。

 また、このタイプは話の全体を理解しない(理解しようとしない)から、

何かを指示する時は必ず復唱復命をさせ、相手の理解度を確認しておく必要がある。

それ程思慮を必要としない仕事はすぐやるし、尻軽なので一面非常に役立つが、

反面、指示の背景や意図を理解して行う仕事や、チームのリーダーには向いてない。

車検費用に愕然とする。

2006-05-23 17:50:34 | 雑感
 ディーラーから車検費用の見積もり電話がかかってきた。
先方の口振りからしてどうもかなりの額になりそうだ。
金額を聞いてビックリ。
車検手続き費用(9.6万円)を加えて25万円。
さすがに先方も少し言い淀んでいたが、こちらの方が冷や汗だ。

 車はBMW。
初年度登録はたしか平成7年。
4年前に中古で買ったから、今回の車検が2度目だが、ディーラーで車検を受けるのは初めてだ。
前回は車検に最低3日必要と言われたので、1日車検が可能なオートバックスに持って行った。
金額は12万円弱だったと思う。
 今回は代車を提供するというし、せっかくサービスが車検整備の案内電話をかけてきたのでディーラーで受けることにしたが、それにしても25万円は高い。
しかも所要日数は5日。

 ディーラーの考え方も分からないではない。
安全のためにはここは換えた方がいい、あれも整備しなければいけないで、結局金額がアップする。
実はこのやり方が以前の車検のやり方だった。
だから車検は高いと言われたのだ。
それがいまでは車検時の整備は必要なく、事後整備でもいいことになったから車検時にかかる費用が安くなった。

 「とにかく絶対整備しなければいけない箇所に留めて、後でもいいところは後にして欲しい」
 と返事する。一度の出費は痛い。
結局、「20万円をギリギリ切るところまで削りましょう」と顔なじみのフロントの返事。
「ワイパーは外しましょう」
当たり前だ。ワイパーの交換まで入れるなよ。
安全に欠かせない最低箇所に留め、15万円前後というのが本当は希望だが、まあ仕方ない。

 次回は早い、安いところですることに決めた。
普段からこまめに修理・整備に持って行っているだけに、よけいそう思う。
やはりディーラー車検は高くつく。

人材の見分け方(1)

2006-05-20 01:54:19 | 視点
 昨年あたりから就職戦線は売り手市場に変わってきた。
景気回復で、各企業が一斉に人材採用増を行っているからだ。
需要はバブル期以上らしい。
しかし、求職者誰もがこの恩恵を受けているわけではなさそうだ。
複数社から内定をもらう求職者がいる一方で、何社受けても内定をもらえない求職者もいるのだ。

 ひと言で言えば、人材格差が起きているのである。
いま企業は人材採用に踏み切っているが、それはかつてのバブル期のような人の採用ではない。
採用しているのは人ではなく、人材。

つまり単なる働き手としての人が不足しているわけではなく、企業の明日を担う「人財」が不足しているのであり、「人財」たり得ない人はいらないということだ。

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ベンチャー・中小企業の有効な資金調達手段・私募債の発行

2006-05-09 10:18:23 | 視点
 中小・ベンチャー企業にとって最大の課題は資金調達をどうするかだ。
資金調達といえば銀行の融資、公的資金の借り入れなどが思い浮かぶが、こちらが必要としてない時に「借りてください」と言い、必要としている時には貸し出しを渋るのが銀行である。
それでも必要に迫られて窓口に行くと、やれ担保だ、保証人だと要求される。

 一方の公的資金は金利が安いのはいいが使い道が限られる。
ではと、個人からの借り入れに頼る場合は必要額が調達できるかどうか不安だ。

 もう少し資金的な余裕があれば、経営が楽になるだけでなく、思い切った手を打てたり、チャンスを逃すこともなかったのにと、今更のように嘆いている経営者は多いに違いない。
 特にベンチャー企業のようにまだ大威張りで言えるほどの実績も信用もない企業はなおのことだろう。

 そこで一考して欲しいのが「私募債の発行」である。
私募債といえば大企業が発行するもの、上場を狙うような企業が上場前に発行するものというようなイメージがあるかもしれないが、最近ではむしろベンチャー・中小企業の資金調達の方法として注目されているばかりか、実際に私募債を発行するベンチャー・中小企業が増えている。

 何故なのか。
1.担保や保証人がいらない。
 金融機関からの借り入れの場合は担保や保証人をすぐ要求されるが、私募債の場合はそれらが不要だ。
しかも、融資の場合は毎月の利払いと元本返済が必要になるが、私募債の場合は償還期限まで元本の返済をしなくていい(利払いは必要)。
 ということは、集めた資金を償還期限まで思い切って運用できるわけで、自由になる手元資金が融資の場合とは比べものにならないということである。

2.小規模会社で発行できる。
 銀行など間接金融からの資金調達でなく直接金融といえばすぐ市場から資金を集める株式公開とか増資という手もあるが、私募債の発行は手続きが非常に楽な上、会社規模が小さいところでも発行できるのがミソだ。

3.経営権が守れる。
 増資の場合は借り入れとは異なり返済の必要はないが、その代わりに出資者は株主になり経営に対して参画する権利を持つ。
 ということは、安易に増資を繰り返していると経営権が脅かされることにもなりかねない。その点、私募債の場合はそうした心配がない。

 さらに詳しい情報、実際の発行に当たっての注意点などは5月20日のリエゾン九州5月例会で。
 講師は長年、太田昭和監査法人(現、新日本監査法人)で上場担当をしていた公認会計士で、昨年退職・独立。現在、北九州ベンチャーキャピタルを設立し、代表として引き続きベンチャー企業のサポートをされている広瀬隆明公認会計士。

私募債の発行について

2006-05-08 18:45:11 | 視点
 もう少し資金があれば・・・。
あと少し自由に出来る資金があれば勝負に打って出られたのに・・・。
 資金がないために積極的な手が打てず、せっかくのチャンスをものに出来ず悔しい思いをしたベンチャー・中小企業は数多いに違いない。

 かといって銀行は実績や担保のないベンチャーにはなかなか融資してくれなかったり、融資額も少ない。
 もちろん金融機関との付き合いも大事である。
しかし、資金ルートは金融機関などの間接金融だけではなく、できるだけ多く持っていた方がいい。
 もう一つの方法として、市場から広く資金を集める直接金融がある。直接金融といえばすぐ上場による資金集めを思い浮かべるだろうが、上場前でも簡単に、広く資金を集められる「私募債」の発行という方法がある。
 ところが、この方法を意外に知らないベンチャー・中小企業が多い。
そこでリエゾン九州の5月例会では「私募債」とは一体どのようなものなのか。
誰でも自由に発行できるのか。
発行するときに気を付ける点は、など
私募債の発行について勉強する。
 参加は誰でも自由。

●日 時: 5月20日(土) 13:30 ~ 17:00

●場 所:福商会館2F(大名1-12-57)
      天神西通り、岩田屋本館(旧Zサイド前)の前に大福うどん、ケンタッキー
       フライドチキンがあり、その角を赤坂方向に入ると角から2、3軒目
       左手のビル(1FにPumaの赤いショップ)が福商会館
●内 容:
 1.「ベンチャーの資金調達のための株式と私募債の発行について」
   講師:広瀬隆明公認会計士
       北九州ベンチャーキャピタル(株)社長・広瀬公認会計士事務所所長
 2.発表企業
  バリアフリー商品の「重ねっとペーパー」
   発表者:(有)風伯 戸坂哲哉社長

「見えている」ことと「視る」ことは違う。

2006-05-08 00:14:09 | 視点
藤の花が見頃だ。藤棚の藤もきれいだが、山に咲く山藤もきれいである。
いままで三つ葉ツツジも山藤もその存在すら知らなかったが、あれが三つ葉ツツジ、これが山藤と教えられると、以来行く先々で目に付くようになる。
つくづく人間の目は便利に出来ていると思う。
それまでは見えていても気付かないものが、意識した途端に視えてくるようになるのだから。
人間の目を模したカメラのレンズにはこんな芸当は出来ない。
せいぜい焦点を合わした物以外をぼかすぐらいが関の山だ。

「見える」と「視える」は違う。
大事なのはいかに「視る」かということで、漠然と「見」ていても何も視えてはこないだろう。
「視る」時に必要なのは自分の視座、つまり価値観である。
きちんとした価値観を自分の中に持たない人は物事を見ていも、ただ見(え)ているだけで実際には何一つ視えてないのと同じことである。
私は講演の時などにこのことを例えて英語のseeとlookの違いだとよく言っている。