栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

軒並みサービス改悪に走りだした流通小売業、外食産業

2021-08-24 00:30:00 | 視点

 コロナ禍で売り上げ減少が続いている流通小売業、外食産業が軒並みサービス改悪に走り出している。

筆頭は楽天グループだが、外にもすかいらーくのように株主優待サービスの改悪や取り止めをする企業が相次いでいる。

楽天は相次ぎポイント改悪

 楽天グループがかなりの苦境に陥っているのはほぼ間違いない。

それは相次ぐサービスの改悪に見て取れる。元凶は楽天モバイルの収益悪化だろう。

 当初、20GBが2980円という画期的なプラン「UN-LIMIT V」を300万名まで1年間無料と

大々的に宣伝して市場に投入したまではよかった。

 それまでドコモなどの3大キャリアの20GBプランが4980円だったのだから楽天モバイルの料金は格安。

申込者が殺到し、300万名という加入者数は短期で達成できると踏んでいたのだろうが、

自社回線エリアのカバー率の低さが嫌気され、想定以上に加入者が増えなかったのがまず第1の誤算。

 そうこうしている内に総務省とズブズブの関係を築いていたNTTが「ahamo」の2980円を

打ち出したものだから、追い詰められた楽天モバイルはさらなる値下げプランを発表せざるを

得なくなったのが第2の誤算。

 そこで起死回生策で、容量1GBまでは無料、1~3GBまでが980円、3GB~20GBまで1980円、

20GB以上は2980円という段階料金プラン「UN-LIMIT Ⅵ」を投入。

1GB未満は無料に引き付けられて加入者数が急増し、3月9日に300万人を達成。

 その時点で受付をやめるかと思ったが、4月7日まで延長とした。

300万人では足りず、もっと加入者数を増やしておく必要があると考えたのだろう。

 楽天モバイルがそう考えるのも無理はなく、1つは歩留まり数字が読めないからだ。

というのは、無料だから取り敢えず入っておこうと考えているユーザーがかなり多いと思われる上に、

「カネになる」大容量利用ユーザーほど主回線ではなくサブ回線で楽天モバイルを

持っている傾向があり、他社のように加入者数=利用者数とはならないからだ。

 同社にしてみればSIMを持っているだけでなく、使ってくれなければ、

それも1GB以上を使ってくれなければ売り上げは発生しないわけで、

1GB未満使用ユーザーが増えても、それは痛し痒しというところだろう。

 ただ楽天の考え方は楽天モバイルに加入したユーザーは楽天カードに加入し、

楽天市場で買い物をしてくれる率が高く、グループ全体でプラスになることを目論んでいる

と思われるが、果たして思惑通りに進むかどうか。

 いずれにしても現在、楽天モバイルが「カネ食い虫」状態なのはたしかで、いくらグループ

トータルでプラスに、と言っても、赤字部門の止血をし、出血を極力抑える必要があるだろう。

 そこで楽天が今年に入って相次いで打ち出したのがポイントサービスの改定。

まず、楽天市場のウリだったSPU(スーパーポイントアッププログラム)のダウンである。

 楽天カードは使えば使うほどポイントが貯まるというのがウリで、

特に楽天ゴールドカードを使って楽天市場で買い物をすればポイントが「+2倍」になっていた。

 しかし、2021年4月1日からこの特典を廃止すると発表したのだ。

その結果、年会費無料の楽天カードと同じポイント付与に変わるわけで、

年会費2,200円を払ってゴールドカードを持つメリットがほとんどなくなる。

 同社のポイント改定はそれだけにとどまらなかった。

2021年6月から、公共料金を楽天カードを利用して支払うと付与されていたポイントを

1/5に引き下げると発表したのだ。

 従来は電気、ガス、水道などの公共料金や国税、都府県税などの税金、国民年金保険料、

Yahoo!公金支払いを楽天カードを利用して支払えば、100円に付き1ポイント進呈されていたが、

6月以降は500円で1ポイントに引き下げられる。

 少しでも出費を抑えたいのだろう。それぐらい楽天グループは苦しんでいるというわけだ。

今回の新プランで楽天モバイルの赤字は少しでも縮小するかどうかだが、見通しは明るいとは言い難いだろう。

株主優待の取り止め、改悪が続出

 楽天モバイルの赤字は今回のコロナ禍とは関係ないところで生じているが、

コロナ禍の影響を直に受けたのが外食産業。

大半の企業が時短の影響で売り上げが軒並み前年比ダウンになり四苦八苦している。

 そこで採算悪化の店舗を閉鎖したり、テイクアウト・デリバリーを始めたり、

既存店をテイクアウト専門に業態転換したりして凌いでいるが、

ファーストフードが前年比アップの売り上げになっているのを除くと、

外食産業の売り上げは半減(対前年同月比)近い。

特に落ち込みが激しいのが居酒屋チェーンで90%超ものマイナス。

まさに存亡の瀬戸際に立たされている。

 そこで少しでもコストを削減したい上場企業の間で流行っている(?)のが株主優待制度の改悪。


 株主優待制度は顧客の囲い込み、ファン確保にイメージアップも図られると、

一時期導入に走る企業が相次いでいたが、今は逆の減少が起きている。

 価格の値上げなどと違い一般客に目立ちにくい上に結構なコスト削減になるとばかりに、

コロナ禍で売り上げが大幅ダウンしている企業が株主優待の改定を始めたのだ。

 因みに20年12月末段階で、株主優待を廃止・改悪した企業は89社と、前年を上回っている。

この内すべてが業績悪化が理由ではなく、株主優待を廃止した代わりに配当金を

増やした企業もあるが、少数派である。

 外食産業の中で株主優待の還元率が高くて人気なのが「すかいらーくホールディングス」だが、

このコロナ禍で売上高が昨年4月マイナス58.2%、5月マイナス47.8%(前年同月比)と

大きく落ち込み、今期赤字を計上ということもあり、9月に株主優待の減額を発表した。

 その結果、従来100株で同社グループで利用できる3000の円の優待カードを

年2回貰えていたのが、2000円×2回=4,000円に減額。

300株なら年20,000円が10,000円へと半減した。

それでも同グループの優待カードは使い勝手がいいので、

今でも株主優待人気の上位にランクしているようだが。

 他にも従来100株から貰えていた株主優待を500株からに引き上げた企業(日華化学ほか)や、

半年以上継続して保有していないと優待を貰えないように改定した企業(味の素ほか)は結構多い。

 このほかにも1年以上の保有に条件を改定した企業(ジュンテンドー、松屋フーズほか)や、

保有株数を100株から200株以上に変更した企業など、サービスの改悪が相次いでいる。

 サービスの改悪という意味ではミスターマックス(福岡市)は従来、第3日曜日は

同社カード利用で5%OFFというサービスを今春から取り止めた。

 それでも、これらの企業は告知するだけまだ良心的だが、なかには4月以降の

消費税込み価格表示の義務付けに便上してこっそり値上げした岡山県・湯郷温泉の

湯郷Gホテルのようなものもある。

これなどは従来価格と比較表示しているわけでも、どこにも値上げの案内を表示している

わけでもないので、コロナ禍で苦しい事情は分かるが、ほめられたやり方ではない。

 こうしたやり方は自社のみならず温泉地全体の評判低下にもなり、

ひいては地域の顧客離れを引き起こすことになると知るべきだろう。

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。