意味深なタイトルに惹かれて読み始めたが、
タイトルどおり後味のわるい物語ばかりだ…
ハッピーエンドで終わる話は一編もなく、どの物語にも湿度80%を超えたような湿っぽさが纏わりつき、
わるい夢を見た後のような不快感が残る…
どの話も短編なので、すぐに読み終わるが、
昨夜は読みながら眠ってしまったせいか、例の如くイヤな夢を見た。
高校生くらいの自分が課題を提出できずに欠点を取ってしまう…そんな夢だ。
夕陽の沈む海だろうか、
オレンジ色の絵の具で仕上げた水彩画を提出期限ギリギリに学校へ持っていくと、
美術担当の教師は不在、
体育担当のスポーツ刈りの無表情な教師が「オレは受け取らないよ」とそっけなく言う…
仕方ないので一旦持ち帰って、翌日学校に行くと、
その日は通知表を受け取る日で、
美術の欄に「1」と記されてあり、その下欄に『課題提出ナシ』と書かれていた。
憤った私は、学校にかけ合うが
担任教師も美術教師も相手にしてくれない…
そんな夢だった。
なぜ、こんな夢を見たのだろう…
帰省中、母校である高校の前を通ったとき、
校舎は外壁塗装のためか全面がグレーの布で覆われていた…
「お盆だから部活も休みだね」
と夫と話しながら、
4年前に帰省した時の吹奏楽部の練習場からのチューニング音や笑い声、運動場から聞こえるノックの音、歓声…
そんな活気ある光景を思い出し、
ひっそりと静まりかえった目の前の風景を淋しく思った。
「なんだか残念だね」
頭のどこかに、その思いが残っていたのかもしれない。
帰り際に郷里で唯一のドッグカフェに寄った際、
偶然にも店の女性オーナーと合唱部の一年先輩が知り合いだとわかって、
懐かしくなり昔話に花を咲かせたが、
それもほんの僅かな時間だ。
コロナが親戚や知人友人との距離をより広げてしまった…
唯一会えた伯母とだって2mの距離を保ち5分ほど勝手口のドアを開けたままマスク越しに話しただけだ。
亡くなった事を知らなかった従兄の事もあるが、
帰省している事を連絡もせず、
こっそりと行き、こっそりと帰ってきた…
そのことが後味の悪さとなって残った。
ただ、今更だが改めてわかったこともある。
自分の帰るところは、もう郷里ではない…という事実だ。
今回の帰省は、それを決定づけた。
後味のわるい物語は尾を引くものだ。
ハッピーエンドで終わる物語は、すぐに忘れてしまうくせに、
なぜなのだろう…。