石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(13)

2019-11-07 | その他

ホームページ:OCININITIATIVE 

 

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 第1章:民族主義と社会主義のうねり

 

荒葉 一也

E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

 

7.ナクバ(大災厄)で覚醒した青年将校

 ユダヤ人国家イスラエルの独立宣言に対し黙っていられないのがパレスチナに住むアラブ人たちであり、さらにエジプト、ヨルダンなどの周辺アラブ諸国であった。人口規模で言えば独立宣言時のユダヤ人の数は60~70万人程度。一方、周辺のエジプトなどに住むアラブ人は優に100倍を超えていた。旧約聖書の神話に例えればそれはまさにダビデと巨人ゴリアテの戦いに見えた。実際アラブ側の戦争計画者たちは11日以内にユダヤ軍を殲滅すると予告したほどである。

 

 にもかかわらず1948年から1949年にかけてアラブ諸国とイスラエルが戦った第一次中東戦争は、ユダヤ人国家の独立戦争と位置付けたイスラエルの圧倒的勝利に終わりアラブは惨敗した。その理由は兵力と戦意の差であった。確かに人口比率だけで見ればアラブ人はユダヤ人の百倍以上であったが、実際に周辺アラブ諸国が戦場に送り込んだ兵力はエジプトが約1万人、ヨルダンが4,500人、イラク3千人、シリア2千人、レバノン千人、アラブ諸国からの義勇兵2千人のほかパレスチナ人戦闘員を加えても総勢2万3千人にすぎない。これに対してユダヤ側は正規のハガナ軍だけでも約3万5千人でこのほかにイルグンなどの軍事組織及び武装した入植者が数千人いたのである[1]。さらに装備の面でも欧米のユダヤ人同胞からの最新兵器と豊富な資金を得ており彼我の兵力の差は明白であった。

 

 さらに兵士の士気にも雲泥の差があった。ユダヤ人たちは独立の意気に燃え戦意が高い。それよりも万一戦争に敗れるようなことがあれば彼らには再び「ディアスポラ(離散)」の運命が待ち構えている。ユダヤ人たちにとっては何としても負けられない戦争だった。男はもとより女たちも武器を取って立ち上がった。因みにイスラエルは今でも女性に兵役義務がある。現在の世界各国の兵役は志願制度であり徴兵制の国は多くない。韓国のような徴兵が義務付けられた国でも対象は男性だけであり、イスラエルのように女性にも兵役義務がある国は珍しい。

 

 これに対してアラブ側は開戦と同時に四方八方からイスラエルに攻め込んだものの、アラブ連合軍とは名ばかりで統一した指揮命令系統もなく単なる烏合の衆に過ぎなかった。個々の兵士たちは自分たちが何のため、そして誰のために戦っているのかわからないまま、ただ上官の命令に従い旧式の武器でユダヤ人と交戦させられたのである。戦線のいたるところでアラブ兵士は敗退した。彼らはこの戦争を「ナクバ(大災厄)」と名付けた。

 

 後にエジプト大統領となるナセル少佐も戦争に従軍し負傷している。1918年生まれのナセルは1939年に陸軍士官学校を卒業後スーダンに赴任、第二次大戦中にエジプト解放運動に身を投じ、第一次中東戦争の時は30歳の若き少佐であった。この時代、頭脳優秀だが貧乏なため大学に進学できない家庭の子弟が出世する道は士官学校に限られていた。士官学校に行けば衣食住の心配は無くそれどころか給与も支給される。さらに最新の技術を習得することができ、成績優秀なら外国にも留学できる。野心にあふれた若者にとってこれほど希望に満ちた職業は無かったであろう。

 

 しかし士官学校卒業後には生命を祖国に預ける厳しい戦争が待っていた。戦争に敗れたそのとき、それまで祖国のためと思って戦ってきたナセルの胸に去来したのは祖国エジプトに対する幻滅だったのか。「マッチ擦るつかのまの海に霧深し 身捨つるほどの祖国はありや」と虚無感を露わにしたのは詩人の寺山修司であるが、ナセル少佐は違っていた。彼はナギブ将軍らと共に軍隊の中に反英愛国の秘密結社「自由将校団」を結成し革命の道を目指したのであった。

 

(続く)



[1] 臼杵陽著「イスラエル」P82他

 

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生産量は増えても売上・利益は減少:五大国際石油企業2019年7-9月期決算速報(1)

2019-11-07 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0483OilMajor2019-3rdQtr.pdf

 

 スーパーメジャーと呼ばれる五大国際石油企業(ExxonMobil、Shell、BP、Total及びChevron)の7-9月期決算が相次いで発表された。ここでは売上高、利益(総合、上流部門、下流部門)、売上高利益率、設備投資および石油・天然ガス合計生産量について各社の業績を横並びで比較するとともに各社の四半期決算の推移を検証する。

 

 決算の詳細は以下の各社のホームページを参照されたい。

ExxonMobil:

https://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-earns-32-billion-third-quarter-2019

Shell:

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2019/third-quarter-2019-results-announcement.html

BP:

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/third-quarter-2019-results.html

Total:

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/third-quarter-2019-results

Chevron:

https://www.chevron.com/stories/chevron-reports-third-quarter-net-income-of-2-6-billion

 

 なお過去の四半期業績及び2010年から2018年までの通年の業績比較は下記レポートを参照されたい。

http://mylibrary.maeda1.jp/SuperMajors.html

 

1. 五社の7-9月期業績比較

(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-22.pdf 参照)

五社を横並びで比較すると売上高、総合損益、下流部門利益及び天然ガス生産量ではShellがトップである。そして設備投資、原油生産量および原油と天然ガスを合計した生産量の各分野ではExxonMobilが、また上流部門利益及び売上高利益率はChevronがそれぞれトップである。前年同期と比較すると総合利益ではShellがわずかに前年同期を上回っているが、他の四社は大幅な減益である(BPは欠損を計上)。また売上高も5社ともに10%以上の減収である。これに対して原油生産量は5社のいずれもが前年同期を上回っている。生産増にもかかわらず減収・減益決算になったのは油価の下落が原因である。ちなみにShellの資料によれば、昨年7-9月期のBrent原油の平均価格はバレル当たり68.38ドルであったが、今年7-9月期は62ドルと約10%下落している。

 

(トップを独走するShell、前年同期比では5社全てが二桁台の減収!)

(1) 売上高

(表http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-22.pdf 参照)

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-51.pdf 参照)

各社の売上高はShellが895億ドルと最も多く、次いでBPが683億ドル、ExxonMobil650億ドル、Total486億ドルで、Chevronは5社の中で売上高が最も少ない361億ドルである。トップのShellは2位BP、3位ExxonMobilの1.3倍であり、最も少ないChevronの2.5倍の売上高を誇っている。また各社の対前年同期の減収幅は、Shell 10.6%減、BP 14.1%減、ExxonMobil 15.1%減、Total 11.2%減、Chevron 17.9%減といずれも二桁台の減収であった。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail;maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

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