3. 軍事・安全保障関連
(キャスティングボート握るトルコ!)
3-1.NATO(北大西洋条約機構)
NATO(北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organization)は第二次大戦後の米ソ冷戦時代に米英仏が対ソ連西側陣営集団防衛体制として1949年に結成したものである。米国はこの他フィリピン、オーストラリア、パキスタンなどアジア諸国を糾合して東南アジア条約機構(SEATO)を結成(1954年)、また中東地域ではイラクなどを巻き込んだ中東条約機構(METO、通称バグダッド条約)を締結(1958年)、三方から対ソ連防衛網を築いた。いわゆる「封じ込め作戦」である。これに対抗してソ連はポーランド、東ドイツなど東欧8カ国と軍事同盟ワルシャワ条約機構を立ち上げ(1955年)、東西両陣営の冷戦構造が確立した。
しかし西側のソ連封じ込め作戦はSEATO及びMETO加盟国に反米政権が誕生するなど結束が乱れ、SEATOは1977年に、またMETOの後継CENTO(中央条約機構)は1979年に消滅した。その一方1980年代末のソ連邦崩壊に伴いワルシャワ条約機構も1991年に解散した。
その後、ワルシャワ条約機構加盟国であったポーランド、チェコ、ハンガリーがNATOに加盟(1999年)、続いてルーマニア、ブルガリア、リトアニアなどもNATO加盟国となった(2004年)。ロシアはソ連邦時代の東欧友邦国を失うどころかNATO陣営と直接国境を接する形になった訳である。
NATOの規約では加盟国に対する外国からの侵略に対して集団防衛をとることとしている。2022年にロシアがウクライナに侵攻したのは同国のNATO加盟を何としても阻止したかったからであろう。しかしロシアの思惑は裏目に出て北欧の中立国フィンランドとスウェーデンもNATO加盟を申請した。
NATOの加盟国は現在31カ国であり世界最大の軍事同盟である。この中でトルコは唯一の中東イスラム国家と言う特殊な立場にある。トルコはその特異性を存分に発揮し、ロシア・ウクライナ戦争では両国の仲介に取り組み、また黒海を経由する両国の穀物輸出についても国連と協働して事態打開を図っている。さらに付言するなら北欧2カ国のNATO加盟問題では拒否権をちらつかせながら両国に在住するイスラム主義勢力による反エルドアン政権運動の抑圧を迫っている。トルコはNATOのキャスティングボートを握っていると言えよう。
(続く)
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