石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

グローバルサウスに傾斜する中東北アフリカ諸国(MENAの多国間関係)(3)

2023-09-11 | その他

組織の概要と参加国

2.アラブ連盟

 アラブ連盟(Arab League, 略称AL)は20世紀前半のアラブ民族主義の高まりを受けて1945年3月、エジプト、イラク、サウジアラビアなど中東のアラブ7カ国により結成された。加盟国は22カ国とPLO(パレスチナ解放機構)である。エジプトが主導した経緯から本部はカイロに置かれ、エジプトがイスラエルと単独和平を結び連盟から除名された1979年から1989年までの10年間を除き、連盟本部はカイロに置かれ、事務局長も歴代エジプト人である。

 連盟の主導権はエジプトが握り、創立以来イスラエルーパレスチナ問題を最重要視しており、イスラエル・ボイコットを主導してきた。君主制国家、強権独裁主義国家が混在する連盟は当初から結束力に欠け、2011年の「アラブの春」運動も当初は静観していたが、民衆弾圧問題でシリアを除名処分にした。しかしロシアとイランのバックアップでアサド政権が安定すると今年に入り復帰を決議している。

 

 連盟はアラブ民族の共同体である。従ってMENA域内のアラブ国家はすべてメンバーであるが、域内であってもアラブ民族以外のイスラエル(ユダヤ民族)、トルコ(トルコ民族)、イラン(ペルシャ民族)は対象外である。ただアラブ民族と言うことだけが共通項であるため、国境問題など個別利害問題に対する調整力が弱く、対外的にも対内的にも実行力に限界が見られる。

 

(続く)

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(50)

2023-09-11 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第2章 戦後世界のうねり:植民地時代の終焉とブロック化する世界(12)

 

050離合集散を繰り返すアラブ世界(3/3)

しかしアラブ連合共和国もアラブ連邦も長続きしなかった。アラブ連邦は結成のわずか2か月後にイラクで軍事クーデタが発生、王家一族は全員殺され、イラク・ヨルダン・アラブ連邦はあっけなく崩壊したのである。アラブ連合の場合はナセルが強引に一体化を推し進めようとしたことにシリアの軍部が反発、3年後の1961年9月に陸軍将校団によるクーデタが発生、エジプトとの連合を解消した。

 

その後バース党政権のシリアとイラクが急速に接近1963年にはイラク・シリア連邦が形成された。両国を含む地中海東海岸地方はレバント地方と呼ばれオスマン・トルコの時代から一つの地域と見なされていた。しかし第一次大戦中の英国とフランスによる領土分割秘密協定「サイクス・ピコ協定」によりシリアはフランスに、イラクは英国に分割された経緯がある。従って汎アラブ主義を綱領とするバース党が政権を握れば両国の友好関係が深まるのは当然の成り行きであった。余談であるがつい最近までこの地域で猛威を振るっている「イスラム国」の別名は「ISIL(イラクとレバントのイスラム国)」であり、このことはイスラム国がシリア及びイラク北部を一体とみなしていることを示しているのである。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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