組織の概要と参加国
4.BRICS
BRICsと言う名称が初めて使われたのは2001年、ゴールドマンサックスが当時の新興発展国Brazil, Russia, India及びChinaの頭文字を組み合わせたことにある。末尾 の小文字のsはこれら4カ国を合わせて複数形としたためである。4カ国は2009年から首脳会議を開催、2011年以降は南アフリカ(South Africa)が参加したことにより、以後BRICSと総称されるようになった。
BRICSは同盟や連合ではなく欧米先進国に対峙する新興経済国グループとして非干渉、平等、相互利益を基本としている。世界経済における5カ国の存在感が高まるとともに加盟を希望する国が続出、今年の首脳会議でアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア及びアラブ首長国連邦(UAE)の6カ国が新たに加盟国となることが決まった。
新規加盟国のうちアルゼンチンを除く5カ国は中東・北アフリカ諸国である。これにより新BRICS内部での中東・北アフリカ地域の存在感が高まることが予想される。但し、BRICSは経済問題が中心であり、地政学的な意味合いは乏しい。従って中東・北アフリカは中印との石油・天然ガスエネルギーの取引、あるいは中印と西欧をつなぐ貿易回廊の中継点として重視されることになろう。
一方、これまでのBRICSは先端産業開発により欧米先進国の経済金融システムの桎梏から脱することを狙ってきたが、サウジアラビアやUAEなどは産業高度化の基礎体力が乏しく、欧米の金融システムによって国家財政を維持している国である。また新規加盟国には世界銀行やIMFの支援に頼る財政基盤の脆弱な国が多い。
以上の点を勘案するとこれまでBRICSが模索してきたドルに替わる国際通貨体制など独自の経済圏を構築することは、むしろ困難になるとも考えられる。来年以降のサミット首脳会議で新BRICS独自の宣言を打ち出すことができるのかが注目される。
(続く)
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