3. 軍事・安全保障関連
(中国の野望成るか、加盟国増加で将来の結束に難題!)
3-2.上海協力機構
上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization, SCO)は1996年、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン5か国の首脳が中国上海で行った会議(上海ファイブ)を元に、その後ウズベキスタンも加わり、2001年に結成された。旧ソ連邦時代からの国境問題を抱えた中露及びソ連邦崩壊で誕生した脆弱な中央アジア4カ国がテロ活動に対抗することが主要な目的であった。
その後、インド、パキスタン、イランが加わり、現在の加盟国数は9カ国である。さらにアフガニスタン、モンゴルなど6カ国がオブザーバー国となり、トルコ、サウジアラビア、エジプトなど中東の主要国やカンボジアなどの東南アジア諸国の一部もオブザーバー国として参加しており、ユーラシア大陸の6割をカバーする巨大な同盟に発展している。
本部は北京にあり中国が主導する形で加盟国間の軍事演習を行っている。SCOは「テロリズム、分離主義、過激主義」を「三悪」として共同対処している。また首脳会議では米国を批判しSCOに対米同盟の役割を期待する演説が見られる。
多国間同盟は加盟国の人口、経済力の総和が大きいほど勢力を誇示でき、また加盟国数が多いほど国際舞台での発言力が大きくなる。その面で見れば国力が世界有数の中国とインドを核とし、ロシア、サウジアラビア、イランなどのエネルギー大国が一堂に会するSCOはNATOグループを脅かす存在であることは間違いない。
しかし加盟国が多いことは裏を返せば内部の利害対立が顕在化し、組織としての統一が乱れることも意味する。中東新規加盟国のエジプト、トルコ、サウジアラビアがSCOにどのように対応するのかは未知数である。就中トルコはNATOにも加盟しており今後の動向が注目される。
(続く)
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