石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(52)

2023-09-15 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第2章 戦後世界のうねり:植民地時代の終焉とブロック化する世界(14)

 

052「イデオロギー」が根付かないアラブ世界(2/3)

西欧諸国特に米国による抑え込みにもかかわらずこの時期世界各地に共産主義政権が誕生している。しかし中東では共産主義勢力が実権を握ったのはイランのツデー党の流れを汲むモサデグ首相の時代(1951年―52年)及び1967年に独立、1990年にイエメン・アラブ共和国(北イエメン)と統合するまで続いた南イエメン人民共和国の二つだけである。イランではモサデグ首相が石油国有化を断行したが、結局それが命取りとなり、国王のシャー・パハレビの反革命クーデタにより短命に終わっている。イエメンはアラブ世界の中心から遠く離れた世界の出来事とみなされさほど重要視されなかった。

 

ヨーロッパでは産業革命により資本家と労働者の階級分化が進み、資本と言う生産手段を独占する資本家と労働力しか持たない労働者の階級格差が拡大した。労働者階級は資本家階級に対抗して社会主義あるいは共産主義の理論を身にまとって立ち上がった。1848年にカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスが書いた「共産党宣言」の冒頭に有名な一節がある。曰く「ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である」。20世紀に入りヨーロッパでは共産主義が虚像の幽霊としてではなく、実像として姿を現し始めた。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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