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なぜテクニカル分析が万能ではないかについて

2005-06-21 11:44:40 | 行動ファイナンス理論など
後場までの合間に、テクニカル分析の隘路とも言うべき理論的バックグランドの一つについて考えてみたい。

テクニカル分析はいうまでもなく過去のトレンドをデジタル分析したものである。この分析は様々なテクニカル分析手法(MACD、RSI、DMI等々)に基づくが、これは相場を区切るデジタルの数式のうちで生き残ったものである。その限界は、

1.市場参加者全員がベストと思うテクニカル分析手法を使えば、ゼロサムゲームの株式取引では敗者がいなくなり、理屈の上では勝者もいなくなること。

2.もうひとつ大事なことは、デジタル分析のもつ理論的限界である。複雑な市場の動きをあるデジタルな側面から切り取るということは、市場の状況をある種の角度から分類(Classification)することである。この分類行為は、株に限らず世の中でよく行われている。よくある世論調査での5段階評価が稚拙な分類行為の最たるものである。あれは、分類から落ちる意見が見事に捨象されているばかりか、質問項目の設定方法によって、回答を誘導することすら可能な危険な方法である。そうした調査は別として、この分類ということの重要な側面は、分類と分類の狭間にある重大な事実がこうして捨象されてしまうということにある。株は、前に述べたように世の中の成り立ちと同様に全くの複雑系である。そこに分類という発想でテクニカルに切り取っても当たったり外れたりすることは当たり前である。

この分類行為のリスクについては、最新のスーザン・スターの論文で良く解説されているところである。スターは、人と人がうまくコミュニケーションがとれないことを克服するために、人と人をつなぐ媒介項としてのBoundary Objectという概念を提唱したことで有名であるが、その概念は「分類」ということに着目することから出てきている。

こうした限界点をわきまえて、出来る限り市場の複雑性に追随できる理論を考え出したいところだが、世の中の複雑性を、より複雑な数式を編み出したとしても近づけるものではないことは、アインシュタインのE=mc2 のような美しい数式を見れば明らかである。ここに機関投資家にも勝てる余地がある。LTCMが破綻したのも、ノーベル賞受賞者が金融テクノロジーにおぼれてしまった結果である。ロシアのディフォルトというのは、過去のデータには入っていなかったのである。ここにテクノロジーに頼ることの本来的なリスクがある。
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