中日新聞の「時のおもり」副題として「憲法を使いこなす」「主人公は国民 再認識を」というタイトルで池内了さん(総合研究大学院大 名誉教授)が投稿されていました。
ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来約半年が過ぎる中で、日本では憲法と安全保障の関連についての論議がかまびすしい。
そして、参議院選挙の結果、改憲派が衆参両院とも三分の二以上を維持し、国政選挙がないこれからの「黄金の三年」の期間に「憲法改正」の発議(国民投票も?)がなされる気配が濃厚になってきた。
私のような憲法擁護派は追い詰められたかのような状況なのだが、ここで原点に立ち戻って憲法を読み直し、さて私たちはいかなる姿勢でこの状況に対すべきかを考えてみたい。
日本国憲法の構造は、まず一人一人の個人の尊重という大原理があるということだろう。
憲法の文言に「公共の福祉」、という言葉がよく出てくるが、これは個人の尊重と全国民が福利を享受できることが共存しなければならない、と念を押しているのである。
この大原理を支える不可欠の規範として国民主権・基本的人権の尊重・平和主義という、いわゆる日本国憲法の三原則がある。
そして、これらの原則を実現するために、国民にはさまざまな自由(言論や出版など)と権利(生命、自由や幸福追求など)が保障されている事が下支えとなっている。
端的に言えば、日本国憲法の枠組みは、大原理を三原則が支え、三原則は国民に付与された自由と権利が下支えしている、という構造となっているのである。
従って、三原則のいずれかが欠けたり、また自由と権利のどれかが阻害されたりすると、日本国憲法は成り立たなくなってしまうのだ。
このことを私たちは学校で憲法を学んで知っているはずなのだが、実際においては忘れてしまい国内外の情勢に揺れ動く政府の意向ばかりが尊重されて憲法の精神がおざなりになってきた。
国民も国(や為政者)が決めたことであれば無条件に従い、憲法が定めた枠組みから外れても国(や為政者)に異議申し立てすることがめっきり減ってしまった。
だからこそ、今、私たちは憲法の原点に立ち戻って、国の主人公はあくまで国民であることを再確認することが大切なのではないだろうか。
そのためには、単に「憲法を守れ」と繰り返すだけではなく、身の回りを点検して憲法の枠組みから外れるようなことがあれば声や行動で政府を質(ただ)すこと、つまり「憲法を使いこなす」ことが肝要である。
それが可能である最大の根拠は、憲法第九九条に、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とあって、ここに主権者である「国民」が入っていないことにある。
この条文は、憲法を擁護する義務を負う人たちを国民が監視し、かれらが憲法を擁護しないならば国民は訴追すべきだと求めているのである。
例えば、「あのみっともない憲法」と常々口にしていた元首相を「国葬」にするのは、いかにも憲法をバカにしたことではないか。
「反撃能力」しかり、国会の軽視しかりである。
これらの諸問題が日本国憲法の枠組みからいかに逸脱しているか、その論議に踏み込もうとしない政府を、憲法の名において追い詰めるのである。
さらに強調しておきたいことは、憲法を変えることができるのは主権者である国民であって、政府ではないということだ。
今、私たちに必要なのは、この当たり前の自覚と「憲法を使いこなす」活力ではないだろうか。
(本論稿は『井上ひさしの憲法指南』をはじめとする彼の著作を参考にして、私流に書き下ろしたものである)
以上です。
>このことを私たちは学校で憲法を学んで知っているはずなのだが、実際においては忘れてしまい国内外の情勢に揺れ動く政府の意向ばかりが尊重されて憲法の精神がおざなりになってきた。
憲法ですか、社会科で学んだと思いますが覚えていません。
「井上ひさしの憲法指南」を買って、読んでみようかな。
>それが可能である最大の根拠は、憲法第九九条に、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とあって、ここに主権者である「国民」が入っていないことにある。
この条文は、憲法を擁護する義務を負う人たちを国民が監視し、かれらが憲法を擁護しないならば国民は訴追すべきだと求めているのである。
そうなんだ、まるで知りませんでした。
政府は、憲法を守らなければいけないんだ。
新聞もテレビも、この事を取り上げませんね。
>例えば、「あのみっともない憲法」と常々口にしていた元首相を「国葬」にするのは、いかにも憲法をバカにしたことではないか。
「反撃能力」しかり、国会の軽視しかりである。
これらの諸問題が日本国憲法の枠組みからいかに逸脱しているか、その論議に踏み込もうとしない政府を、憲法の名において追い詰めるのである。
なるほどね。
おおいに勉強になりました。
>さらに強調しておきたいことは、憲法を変えることができるのは主権者である国民であって、政府ではないということだ。
憲法を変えることができるのは、政府ではなくて私たち国民なのだ。
それすら、分かっていませんでした。
反省!
トワ・エ・モワ ♪初恋の人に似ている