講演のためにトルコにおられる守田さんから、本当に嬉しいメールが届きました。
ぜひみなさんにもお知らせしたいと思い、ここに転載させていただきます。
まずその前に、これをちょっと読んでいただけますか。
『大飯原発の再稼働認めず!』樋口英明裁判長の判決要旨の全文です。ぜひ読んでください!
http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/c23cee97b8aefb95b510b0505f9c6072
樋口裁判長の判決要旨の全文より抜粋。
使用済み核燃料は、本件原発の稼動によって、日々生み出されていくものであるところ、
使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには、膨大な費用を要するということに加え、
国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、
深刻な事故はめったに起きないだろう、という見通しのもとにかような対応が成り立っている、といわざるを得ない。
国民の生存を基礎とする人格権を、放射性物質の危険から守るという観点からみると、
本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、
むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに、初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。
極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを、並べて論じるような議論に加わったり、
その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことである、と考えている。
たとえ本件原発の運転停止によって、多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、
豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、
これを取り戻すことができなくなることが、国富の喪失であると、当裁判所は考えている。
原子力発電所で、ひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染は、すさまじいものであって、
福島原発事故は、我が国始まって以来、最大の公害、環境汚染であることに照らすと、
環境問題を、原子力発電所の運転継続の根拠とすることは、甚だしい筋違いである。
何度読み直しても胸の中が熱くなります。
このような素晴らしい判決が、この福井をきっかけに、全国津々浦々の裁判所で読み上げられるようになったら、それこそが日本の真の復興につながるのではないでしょうか。
前置きが長くなってしまいました。
それでは、どうして守田さんからのメールが嬉しかったのか、その理由を紹介させていただきます。
↓以下、転載はじめ
「高浜原発差止仮処分事件」の決定が14日に出ます!(上)
守田です。(20150410 13:00トルコ時間)
イスタンブールのホテルからです。
こちらは今正午すぎ、日本との時差は6時間です。
午後のミーティングの前のわずかな時間で書いています。
高浜原発差止仮処分事件の決定が、14日に下されるそうです。
この審理は、昨年5月に、大飯原発の運転差止判決を出した樋口裁判長が担当してきました。
樋口裁判長は3月末で転任するため、その前に運転禁止処分を下すと言われていました。
ところが、多くの人々が待ちわびた期日決定の知らせがこないままに、4月になってしまいました。
やきもきされた方が多いと思います。
僕もその一人です。
どうなってしまうのかとドキドキしていたら、その後に、週刊朝日に次のような解説が載っていることを、舞鶴の知人が教えてくれました。
「樋口判事は3月末に定期異動するとされるが、関係者によると、その場合でも、裁判所法28条に従い高裁から特別な辞令を得て、異動後も決定を言い渡すことができる」
まだ十分に望みはあると少しほっとしていたら、今日になって、ついに処分決定の期日が決まったという報が、担当弁護士から飛び込んできました。
これはすぐにお知らせせねばと、記事を書いています。
とくに裁判長が変わった等の報がないことから、期待された運転禁止処分が出される可能性が高いのではないかと思います。
ただし、その点はあまり明示的に書かれていないので、関係者の方たちがみな、慎重になっているのかもしれません。
ともあれ、注目すべき判断が14日に出されます。
ご注目ください。
14日には、福井裁判所を応援し、歴史的瞬間に立ち会おうということで、
京都、滋賀、大阪、奈良から裁判所前に駆けつけて、集会を行おうという呼びかけもなされているので、それもご紹介しておきます。
僕は、トルコでこの報を受け取ることになりますが、この決定は、トルコへの原発輸出の問題とも大きく絡んでいます。
安倍政権は、福島原発事故後、原発ゼロを訴える圧倒的な世論を前に、原発の延命をはかるために、いわば外堀を埋めるような形で原発輸出外交を繰り広げてきました。
ただし、これは民主党政権のもとでもおこなわれてきたことで、安倍首相だけのパフォーマンスではありません。
もう少し大きな流れをみると、2000年代に入って以降、アメリカのブッシュ政権のもとで押し進められてきた原子力回帰政策と連動したものでした。
世界の原発は老朽化を深め、現在稼働年数が30年を超えたものがたくさん出てきており、
2020年までに新たに200基は新設しなければ現状を保てず、原子力産業そのものが衰退に向かうと言われています。
この状況を打開するべく掲げられたのが、新たな国々への原発輸出の流れであり、アメリカはそのイニシアチブをとることで、原子力産業のリーディングカントリーの位置を再構築しようとしたのでした。
といっても、スリーマイル島事故以降、まったく原発を新設できなかったアメリカは、すでに製造ラインを失ってしまったので、
日本等が下請けし、世界各国に原発を売り回ることが模索されたのです。
かくして小泉政権のもとで、原発の世界への売り込みが路線化されました。
このとき自民党幹事長などをつとめて、原発促進の旗を小泉元首相ともに振ったのが、現在の安倍首相です。
かくして2005年に「原始力政策大綱」が閣議決定され、2006年に原子力立国計画が出されました。
原子力政策大綱
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/taikou/kettei/siryo1.pdf
原子力立国計画
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/images/060901-keikaku.pdf
これは日本の中でも、高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏れ大事故や、JCO臨界事故等で、ひん死の状態にあった原子力産業を救い出す位置性をもったものでした。
あのとき明らかにこの国には、原子力政策から離脱できる可能性が生まれていたのに、
それを握りつぶしてアメリカの原子力回帰政策に従ったのが元小泉首相であり、安倍自民党幹事長だったのです。
それは、イラク戦争への全面支持以来の、アメリカへの全面追従の流れの中で強められたものでもありましたが、
一方では、ある種の独自性を持ったものでもありました。
この流れの中で、日本の原子力産業は、長年被ってきたアメリカの規制からも自由になり、国産原発による世界展開を夢見だしたのです。
経産省が、総合エネルギー調査会の原子力部会(2007年9月)で配布した資料に、その本音が現れています。
「日米間の原子力関係の歴史は、カーター政権以来、ともすれば米国が非核兵器国である日本の核燃料サイクルを押さえ込もうとする中、
日本は原子力の平和利用の模範生としてこれを死守する関係。
この間、米国のサイクル技術や高速炉技術は停滞」
「日本の原子力技術は、元々米国から受け入れた歴史があるが、米国では過去30年に亘って新規建設が滞る中、日本は逆風に耐えて着実に新規建設を実施。
この間、米国の原子力産業界の力が弱まる一方、日本の原子力産業会は力を蓄積」
(引用は『日本はなぜ原発を輸出するのか』p92より。元資料からでなくこの書からの孫引きです)
安倍政権が固執しているのは、小泉政権以来の、日本がアメリカの規制を離れて独自に原子力産業のリーディングカントリーに躍り出ようとする路線です。
アメリカ自身はどうかというと、その後、期待していた中国との原発建設での共同化が難航したこと等もあって、原子力回帰政策はまったくうまくいかずに次第に後退。
電力自由化もこれに拍車をかけ、オバマ政権になって、完全に過去のものになりつつあります。
しかし戦後レジュームを超えると主張した第一次安倍内閣は、この路線を押し進めることに固執してきました。
そして今、安倍政権は、福島原発事故という大変な事態を経たのに、
その反省などまったくせずに、アメリカの後退をも尻目に、日本を世界中に原発を売り込む国家へと変えようとしています。
いやそれどころか、福島原発事故の教訓から得た安全性を世界に売って、国際貢献するのだとすら豪語しています。
あの悲惨な事故を、宣伝トークに使いだしてすらいるのです。
しかし、福島原発事故はまだ収束しておらず、技術的な教訓をひきだすどころか、まだ原発の中の様子すら分かっていない状態なのです。
これほど平気に嘘を言い続けられる人物が首相であることに、私たちの最大の危機があるといえますが、
ともあれ岸信介氏を美化する安倍首相は、原子力政策でアメリカをも凌駕する夢をいだいて、原発輸出に邁進しているわけです。
しかし、その安倍首相の前に厳然として立ちはだかっているのが、日本民衆の原発をなくせという声です。
選挙等では、安倍政権は、この声と正面からぶつからないように慎重な歩みを続けてきました。
それであれほどの議席をとっていながら、原発の再稼働をこれまで押し進められなかったのです。
そのためにも安倍首相は、先に海外で原発を売りまくり、いわば外堀を埋めようとしてきました。
ところが、原発を売り込む国が、国内ではひとつも原発を動かしていないのでは、まったく面子が立ちません。
輸出で外堀を埋めようにも、再稼働がなされなければ輸出そのものも進めることができない。
そのジレンマもあって安倍政権は、民衆の反対の声を恐れつつ、川内原発や高浜原発の再稼働を進める側に舵を切ってきたのでした。
それも、「安全性」は原子力規制庁に押しつけ、「避難計画」は地元自治体に押し付ける形においてです。
この責任の押し付けに規制庁が反発し、「新規制基準に合格したからといって安全だとは言わない」との明言を繰り返していることを、すでに何度も指摘してきました。
これらの流れから言えば、高浜原発の運転が禁止されることは、原発輸出政策にも計り知れない打撃になるのです。
何より重要なのは、昨年5月の大飯原発運転差し止め判決に続き、世界に、日本の原発の危険性が、司法判断として伝えられることになるからです。
特にトルコとの関係で大きいのは、高浜原発の製造者が、トルコに原発を作ろうとしている三菱重工であることです。
本当にこの点は大きい。
以上からみなさん、14日の決定にぜひご注目ください。
僕のこちらでの講演は12日シノップ、13日サムソン、14日イスタンブールと行うので、どれも直前になります。
ぎりぎり最終日に、「運転差止決定」の朗報を知らせられると良いと思っていますが、
ともあれ、こうした裁判が日本で行われていること、日本の内側から原子力政策を止めるための努力が重ねられ、これまで動かなかった司法をを揺り動かしていることをしっかりと伝えるつもりです。
長くなるので記事を二つにわけ、(下)で弁護団からのプレスリリース、若狭の原発を考える会・高浜・大飯原発再稼動阻止ネットワークからの現地行動の提起、週刊朝日に掲載された解説をお届けします。
福井地裁前集会に参加可能な方は、ぜひよろしくお願いします。
僕もイスタンブールからトルコの方々とともに熱き思いで福井に思いを馳せます。
「高浜原発差止仮処分事件」の決定が14日に出ます!(下)
守田です。(20150410 13:30 トルコ時間)
続けて弁護団からのプレスリリース、若狭の原発を考える会・高浜・大飯原発再稼動阻止ネットワークからの現地行動の提起、週刊朝日に掲載された解説をお届けします。
*****
報道機関各位
BCCで送信しております。
重複ご容赦ください。
さくら共同法律事務所の弁護士河合弘之の担当の松田と申します。
お世話になっております。
以下、河合が共同代表を務めます大飯・高浜原発差止仮処分弁護団より案内です。
急なご案内になり恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
2015年4月9日
報道関係者各位
高浜原発差止仮処分事件仮処分決定日と記者会見のご案内
昨年12月5日に、福井県・関西地方に住む市民9名が、福井地裁に申し立てた、大飯・高浜原発差止仮処分事件ですが、
3月11日の審尋期日におい て、 高浜原発については審理を終了し、決定が出される旨、みなさまにお知らせしてまいりました。
このたび決定の告知日時が決まりましたので、ご案内申し上げます。
高浜原発3・4号機については、2月12日に、原子力規制委員会が合格証にあたる「審査書」を出しており、
これらの原発が再稼働されるのは時間の問題という、危険な状態にあります。
しかし、本件において仮処分決定が出た場合は、これらの原発を再稼働することはできなくなります。
仮処分決定は、判決とは異なり、直ちに効力を生ずるからです。
この決定には、日本中の国民・市民が期待を寄せており、当日は福井地裁に多くの市民が駆けつけます。
報道機関関係者の皆様におかれましては、司法が現実に原発を止めるというこの歴史的な裁判を、多くの国民・市民に知っていただくために、取材・ 報道いただきますようよろしくお願いいたします。
【本件仮処分申立ての経緯】
昨年5月21日に、福井地裁が出した大飯原発差止判決は、
福島第一原発事故の被害に正面から向き合い、全国の原発に当てはまる本質的な危険性を認定し、
大飯原発3・4号機の運転差止めを命じたもので、多くの国民・市民に支持されています。
現在、名古屋高裁金沢支部で、控訴審が行われているところです。
しかし関西電力は、この大飯原発差止判決を無視し、控訴審の結論を待つことなく大飯原発3・4号機と高浜原発3・4号機を再稼働することを表明し、
これらの原発の再稼働に向けての動きが、着々と進められています。
このような、世論と司法を無視する再稼働の動きを止めるべく、私たちは、大飯原発差止判決を出した福井地裁に、
通常の判決とは異なり、直ちに効力が生じる仮処分命令を求め、昨年12月5日に緊急に申立てを行いました。
(提出書面等詳細は仮処分の会サイトにも掲載 http://adieunpp.com /karisasitome.html)
2015年4月14日(火)
14:00過ぎ 福井地裁前で、弁護団・申立団が、旗だしを行います。
15:00(予定) 記者会見・報告集会 決まり次第、ご連絡いたします。
大飯・高浜原発差止仮処分弁護団 河合弘之、井戸謙一、内山成樹、海渡雄一、青木秀樹、
望月賢司、只野靖、笠原一浩、鹿島啓一、中野宏典、藤川誠二
申立人 今大地晴美、水戸喜世子、松田正、石森修一郎、
長谷川羽衣子、西村敦子、水戸晶子、松本なみほ、高橋秀典
※東京でも弁護団による会見予定
問合せ先:
さくら共同法律事務所03-5511-4386(河合)/金沢税務法律事務所076-262-3628(鹿島)
*****
現地行動の呼びかけ
遅れていた仮処分判決告知が、4月14日(火曜日)14時ということになりました。
予定通り、裁判所前の集会が行われます。
京都、滋賀、大阪、奈良からも、自家用車の乗り合わせ、または、電車で参加したいと思います。
京都からの車は、10時スタートを予定しています。
具体的配車(集合場所、時間)は、参加者が決まった段階でお知らせします。
とりあえず、参加を募ります。
自家用車乗り合わせを希望される方は、
木原―090-1965-7102、
高瀬―090-3034-7391、
新開―090-3267-4278のいずれかまで連絡ください。
(3月に申し込まれた方も、改めて)
なお、この裁判の報告集会を、4月26日(日)午後1時半より予定しています(場所は現在探しています)。
こちらへもお誘いあわせの上ご参加ください。
よろしくお願いします。
若狭の原発を考える会・高浜・大飯原発再稼動阻止ネットワーク 木原壯林
*****
初の運転禁止仮処分?高浜原発の今後
【週刊朝日】2015年4月10日号
http://dot.asahi.com/wa/2015040100089.html
原発再稼働1番手とされる関西電力高浜原発3、4号機。
その雲行きが怪しくなってきた。
昨年12月、地元住民らが関電を相手取り、大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めの仮処分を福井地裁に申請。
このうち高浜原発については、今春にも決定が出る見込みだが、仮処分が認められる可能性が濃厚だという。
元判事で、2006年に志賀原発の運転差し止め判決を出した、井戸謙一弁護士が解説する。
「関電は、高浜原発3、4号機を止めるべきだという申し立て側の主張に、まともな反論ができていない。
前回の審尋で、関電が専門家の意見書を出すと言ったのに、裁判長がその機会を与えなかった。
その流れからすると、申し立てが認められないとは考えにくい」
担当裁判長は、昨年5月に、大飯原発3、4号機の運転差し止め判決を出した樋口英明判事(62)。
このときは、「人格権を侵害される具体的な危険がある」と、踏み込んだ判決内容で再稼働を否定した。
今回の仮処分申し立ては、3月11日に結審、まもなく決定を出す見通しだ。
樋口判事は、3月末に定期異動するとされるが、関係者によると、その場合でも裁判所法28条に従って、高裁から特別な辞令を得て、異動後も決定を言い渡すことができるという。
もし仮処分が認められれば、関電が取る方法は三つ。
ひとつは、保全異議や執行停止の申し立て。
あるいは、本訴への持ち込み。
最終手段として、決定を無視し、強引に再稼働させることもできるが、簡単ではない。
「保全異議の決定だけでも、おそらく1年はかかる。
無理やり原発を動かせば、裁判所は関電に、億単位の間接強制金を課すでしょう。
そんなことをしたら、社長が株主から責任を追及されかねない」
(申し立て弁護団の内山成樹弁護士)
形勢不利と見た関電は、「合理的な理由がないまま審理が終結したのは不当」(関電広報部)として、裁判官忌避を申し立てた。
だが、福井地裁はすぐさま却下。
3月20日には、名古屋高裁金沢支部へ即時抗告したが、申し立て弁護団によると、認められる可能性は低いという。
原発の運転差し止めの仮処分が認められれば、国内では初となる。
元経産官僚の古賀茂明氏が言う。
「仮処分が出て高浜原発が止まったら、それが先例になり、全国の原発で同様の申し立てや訴訟が相次ぐ。
再稼働に何の迷いもない政府や経産省にしてみれば、そうした先例を絶対に許したくない。
時間をかけて最高裁まで争うでしょう」
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守田敏也 MORITA Toshiya
[blog] http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011
[website] http://toshikyoto.com/
[twitter] https://twitter.com/toshikyoto
[facebook] https://www.facebook.com/toshiya.morita.90
ぜひみなさんにもお知らせしたいと思い、ここに転載させていただきます。
まずその前に、これをちょっと読んでいただけますか。
『大飯原発の再稼働認めず!』樋口英明裁判長の判決要旨の全文です。ぜひ読んでください!
http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/c23cee97b8aefb95b510b0505f9c6072
樋口裁判長の判決要旨の全文より抜粋。
使用済み核燃料は、本件原発の稼動によって、日々生み出されていくものであるところ、
使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには、膨大な費用を要するということに加え、
国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、
深刻な事故はめったに起きないだろう、という見通しのもとにかような対応が成り立っている、といわざるを得ない。
国民の生存を基礎とする人格権を、放射性物質の危険から守るという観点からみると、
本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、
むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに、初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。
極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを、並べて論じるような議論に加わったり、
その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことである、と考えている。
たとえ本件原発の運転停止によって、多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、
豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、
これを取り戻すことができなくなることが、国富の喪失であると、当裁判所は考えている。
原子力発電所で、ひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染は、すさまじいものであって、
福島原発事故は、我が国始まって以来、最大の公害、環境汚染であることに照らすと、
環境問題を、原子力発電所の運転継続の根拠とすることは、甚だしい筋違いである。
何度読み直しても胸の中が熱くなります。
このような素晴らしい判決が、この福井をきっかけに、全国津々浦々の裁判所で読み上げられるようになったら、それこそが日本の真の復興につながるのではないでしょうか。
前置きが長くなってしまいました。
それでは、どうして守田さんからのメールが嬉しかったのか、その理由を紹介させていただきます。
↓以下、転載はじめ
「高浜原発差止仮処分事件」の決定が14日に出ます!(上)
守田です。(20150410 13:00トルコ時間)
イスタンブールのホテルからです。
こちらは今正午すぎ、日本との時差は6時間です。
午後のミーティングの前のわずかな時間で書いています。
高浜原発差止仮処分事件の決定が、14日に下されるそうです。
この審理は、昨年5月に、大飯原発の運転差止判決を出した樋口裁判長が担当してきました。
樋口裁判長は3月末で転任するため、その前に運転禁止処分を下すと言われていました。
ところが、多くの人々が待ちわびた期日決定の知らせがこないままに、4月になってしまいました。
やきもきされた方が多いと思います。
僕もその一人です。
どうなってしまうのかとドキドキしていたら、その後に、週刊朝日に次のような解説が載っていることを、舞鶴の知人が教えてくれました。
「樋口判事は3月末に定期異動するとされるが、関係者によると、その場合でも、裁判所法28条に従い高裁から特別な辞令を得て、異動後も決定を言い渡すことができる」
まだ十分に望みはあると少しほっとしていたら、今日になって、ついに処分決定の期日が決まったという報が、担当弁護士から飛び込んできました。
これはすぐにお知らせせねばと、記事を書いています。
とくに裁判長が変わった等の報がないことから、期待された運転禁止処分が出される可能性が高いのではないかと思います。
ただし、その点はあまり明示的に書かれていないので、関係者の方たちがみな、慎重になっているのかもしれません。
ともあれ、注目すべき判断が14日に出されます。
ご注目ください。
14日には、福井裁判所を応援し、歴史的瞬間に立ち会おうということで、
京都、滋賀、大阪、奈良から裁判所前に駆けつけて、集会を行おうという呼びかけもなされているので、それもご紹介しておきます。
僕は、トルコでこの報を受け取ることになりますが、この決定は、トルコへの原発輸出の問題とも大きく絡んでいます。
安倍政権は、福島原発事故後、原発ゼロを訴える圧倒的な世論を前に、原発の延命をはかるために、いわば外堀を埋めるような形で原発輸出外交を繰り広げてきました。
ただし、これは民主党政権のもとでもおこなわれてきたことで、安倍首相だけのパフォーマンスではありません。
もう少し大きな流れをみると、2000年代に入って以降、アメリカのブッシュ政権のもとで押し進められてきた原子力回帰政策と連動したものでした。
世界の原発は老朽化を深め、現在稼働年数が30年を超えたものがたくさん出てきており、
2020年までに新たに200基は新設しなければ現状を保てず、原子力産業そのものが衰退に向かうと言われています。
この状況を打開するべく掲げられたのが、新たな国々への原発輸出の流れであり、アメリカはそのイニシアチブをとることで、原子力産業のリーディングカントリーの位置を再構築しようとしたのでした。
といっても、スリーマイル島事故以降、まったく原発を新設できなかったアメリカは、すでに製造ラインを失ってしまったので、
日本等が下請けし、世界各国に原発を売り回ることが模索されたのです。
かくして小泉政権のもとで、原発の世界への売り込みが路線化されました。
このとき自民党幹事長などをつとめて、原発促進の旗を小泉元首相ともに振ったのが、現在の安倍首相です。
かくして2005年に「原始力政策大綱」が閣議決定され、2006年に原子力立国計画が出されました。
原子力政策大綱
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/taikou/kettei/siryo1.pdf
原子力立国計画
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/images/060901-keikaku.pdf
これは日本の中でも、高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏れ大事故や、JCO臨界事故等で、ひん死の状態にあった原子力産業を救い出す位置性をもったものでした。
あのとき明らかにこの国には、原子力政策から離脱できる可能性が生まれていたのに、
それを握りつぶしてアメリカの原子力回帰政策に従ったのが元小泉首相であり、安倍自民党幹事長だったのです。
それは、イラク戦争への全面支持以来の、アメリカへの全面追従の流れの中で強められたものでもありましたが、
一方では、ある種の独自性を持ったものでもありました。
この流れの中で、日本の原子力産業は、長年被ってきたアメリカの規制からも自由になり、国産原発による世界展開を夢見だしたのです。
経産省が、総合エネルギー調査会の原子力部会(2007年9月)で配布した資料に、その本音が現れています。
「日米間の原子力関係の歴史は、カーター政権以来、ともすれば米国が非核兵器国である日本の核燃料サイクルを押さえ込もうとする中、
日本は原子力の平和利用の模範生としてこれを死守する関係。
この間、米国のサイクル技術や高速炉技術は停滞」
「日本の原子力技術は、元々米国から受け入れた歴史があるが、米国では過去30年に亘って新規建設が滞る中、日本は逆風に耐えて着実に新規建設を実施。
この間、米国の原子力産業界の力が弱まる一方、日本の原子力産業会は力を蓄積」
(引用は『日本はなぜ原発を輸出するのか』p92より。元資料からでなくこの書からの孫引きです)
安倍政権が固執しているのは、小泉政権以来の、日本がアメリカの規制を離れて独自に原子力産業のリーディングカントリーに躍り出ようとする路線です。
アメリカ自身はどうかというと、その後、期待していた中国との原発建設での共同化が難航したこと等もあって、原子力回帰政策はまったくうまくいかずに次第に後退。
電力自由化もこれに拍車をかけ、オバマ政権になって、完全に過去のものになりつつあります。
しかし戦後レジュームを超えると主張した第一次安倍内閣は、この路線を押し進めることに固執してきました。
そして今、安倍政権は、福島原発事故という大変な事態を経たのに、
その反省などまったくせずに、アメリカの後退をも尻目に、日本を世界中に原発を売り込む国家へと変えようとしています。
いやそれどころか、福島原発事故の教訓から得た安全性を世界に売って、国際貢献するのだとすら豪語しています。
あの悲惨な事故を、宣伝トークに使いだしてすらいるのです。
しかし、福島原発事故はまだ収束しておらず、技術的な教訓をひきだすどころか、まだ原発の中の様子すら分かっていない状態なのです。
これほど平気に嘘を言い続けられる人物が首相であることに、私たちの最大の危機があるといえますが、
ともあれ岸信介氏を美化する安倍首相は、原子力政策でアメリカをも凌駕する夢をいだいて、原発輸出に邁進しているわけです。
しかし、その安倍首相の前に厳然として立ちはだかっているのが、日本民衆の原発をなくせという声です。
選挙等では、安倍政権は、この声と正面からぶつからないように慎重な歩みを続けてきました。
それであれほどの議席をとっていながら、原発の再稼働をこれまで押し進められなかったのです。
そのためにも安倍首相は、先に海外で原発を売りまくり、いわば外堀を埋めようとしてきました。
ところが、原発を売り込む国が、国内ではひとつも原発を動かしていないのでは、まったく面子が立ちません。
輸出で外堀を埋めようにも、再稼働がなされなければ輸出そのものも進めることができない。
そのジレンマもあって安倍政権は、民衆の反対の声を恐れつつ、川内原発や高浜原発の再稼働を進める側に舵を切ってきたのでした。
それも、「安全性」は原子力規制庁に押しつけ、「避難計画」は地元自治体に押し付ける形においてです。
この責任の押し付けに規制庁が反発し、「新規制基準に合格したからといって安全だとは言わない」との明言を繰り返していることを、すでに何度も指摘してきました。
これらの流れから言えば、高浜原発の運転が禁止されることは、原発輸出政策にも計り知れない打撃になるのです。
何より重要なのは、昨年5月の大飯原発運転差し止め判決に続き、世界に、日本の原発の危険性が、司法判断として伝えられることになるからです。
特にトルコとの関係で大きいのは、高浜原発の製造者が、トルコに原発を作ろうとしている三菱重工であることです。
本当にこの点は大きい。
以上からみなさん、14日の決定にぜひご注目ください。
僕のこちらでの講演は12日シノップ、13日サムソン、14日イスタンブールと行うので、どれも直前になります。
ぎりぎり最終日に、「運転差止決定」の朗報を知らせられると良いと思っていますが、
ともあれ、こうした裁判が日本で行われていること、日本の内側から原子力政策を止めるための努力が重ねられ、これまで動かなかった司法をを揺り動かしていることをしっかりと伝えるつもりです。
長くなるので記事を二つにわけ、(下)で弁護団からのプレスリリース、若狭の原発を考える会・高浜・大飯原発再稼動阻止ネットワークからの現地行動の提起、週刊朝日に掲載された解説をお届けします。
福井地裁前集会に参加可能な方は、ぜひよろしくお願いします。
僕もイスタンブールからトルコの方々とともに熱き思いで福井に思いを馳せます。
「高浜原発差止仮処分事件」の決定が14日に出ます!(下)
守田です。(20150410 13:30 トルコ時間)
続けて弁護団からのプレスリリース、若狭の原発を考える会・高浜・大飯原発再稼動阻止ネットワークからの現地行動の提起、週刊朝日に掲載された解説をお届けします。
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報道機関各位
BCCで送信しております。
重複ご容赦ください。
さくら共同法律事務所の弁護士河合弘之の担当の松田と申します。
お世話になっております。
以下、河合が共同代表を務めます大飯・高浜原発差止仮処分弁護団より案内です。
急なご案内になり恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
2015年4月9日
報道関係者各位
高浜原発差止仮処分事件仮処分決定日と記者会見のご案内
昨年12月5日に、福井県・関西地方に住む市民9名が、福井地裁に申し立てた、大飯・高浜原発差止仮処分事件ですが、
3月11日の審尋期日におい て、 高浜原発については審理を終了し、決定が出される旨、みなさまにお知らせしてまいりました。
このたび決定の告知日時が決まりましたので、ご案内申し上げます。
高浜原発3・4号機については、2月12日に、原子力規制委員会が合格証にあたる「審査書」を出しており、
これらの原発が再稼働されるのは時間の問題という、危険な状態にあります。
しかし、本件において仮処分決定が出た場合は、これらの原発を再稼働することはできなくなります。
仮処分決定は、判決とは異なり、直ちに効力を生ずるからです。
この決定には、日本中の国民・市民が期待を寄せており、当日は福井地裁に多くの市民が駆けつけます。
報道機関関係者の皆様におかれましては、司法が現実に原発を止めるというこの歴史的な裁判を、多くの国民・市民に知っていただくために、取材・ 報道いただきますようよろしくお願いいたします。
【本件仮処分申立ての経緯】
昨年5月21日に、福井地裁が出した大飯原発差止判決は、
福島第一原発事故の被害に正面から向き合い、全国の原発に当てはまる本質的な危険性を認定し、
大飯原発3・4号機の運転差止めを命じたもので、多くの国民・市民に支持されています。
現在、名古屋高裁金沢支部で、控訴審が行われているところです。
しかし関西電力は、この大飯原発差止判決を無視し、控訴審の結論を待つことなく大飯原発3・4号機と高浜原発3・4号機を再稼働することを表明し、
これらの原発の再稼働に向けての動きが、着々と進められています。
このような、世論と司法を無視する再稼働の動きを止めるべく、私たちは、大飯原発差止判決を出した福井地裁に、
通常の判決とは異なり、直ちに効力が生じる仮処分命令を求め、昨年12月5日に緊急に申立てを行いました。
(提出書面等詳細は仮処分の会サイトにも掲載 http://adieunpp.com /karisasitome.html)
2015年4月14日(火)
14:00過ぎ 福井地裁前で、弁護団・申立団が、旗だしを行います。
15:00(予定) 記者会見・報告集会 決まり次第、ご連絡いたします。
大飯・高浜原発差止仮処分弁護団 河合弘之、井戸謙一、内山成樹、海渡雄一、青木秀樹、
望月賢司、只野靖、笠原一浩、鹿島啓一、中野宏典、藤川誠二
申立人 今大地晴美、水戸喜世子、松田正、石森修一郎、
長谷川羽衣子、西村敦子、水戸晶子、松本なみほ、高橋秀典
※東京でも弁護団による会見予定
問合せ先:
さくら共同法律事務所03-5511-4386(河合)/金沢税務法律事務所076-262-3628(鹿島)
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現地行動の呼びかけ
遅れていた仮処分判決告知が、4月14日(火曜日)14時ということになりました。
予定通り、裁判所前の集会が行われます。
京都、滋賀、大阪、奈良からも、自家用車の乗り合わせ、または、電車で参加したいと思います。
京都からの車は、10時スタートを予定しています。
具体的配車(集合場所、時間)は、参加者が決まった段階でお知らせします。
とりあえず、参加を募ります。
自家用車乗り合わせを希望される方は、
木原―090-1965-7102、
高瀬―090-3034-7391、
新開―090-3267-4278のいずれかまで連絡ください。
(3月に申し込まれた方も、改めて)
なお、この裁判の報告集会を、4月26日(日)午後1時半より予定しています(場所は現在探しています)。
こちらへもお誘いあわせの上ご参加ください。
よろしくお願いします。
若狭の原発を考える会・高浜・大飯原発再稼動阻止ネットワーク 木原壯林
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初の運転禁止仮処分?高浜原発の今後
【週刊朝日】2015年4月10日号
http://dot.asahi.com/wa/2015040100089.html
原発再稼働1番手とされる関西電力高浜原発3、4号機。
その雲行きが怪しくなってきた。
昨年12月、地元住民らが関電を相手取り、大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めの仮処分を福井地裁に申請。
このうち高浜原発については、今春にも決定が出る見込みだが、仮処分が認められる可能性が濃厚だという。
元判事で、2006年に志賀原発の運転差し止め判決を出した、井戸謙一弁護士が解説する。
「関電は、高浜原発3、4号機を止めるべきだという申し立て側の主張に、まともな反論ができていない。
前回の審尋で、関電が専門家の意見書を出すと言ったのに、裁判長がその機会を与えなかった。
その流れからすると、申し立てが認められないとは考えにくい」
担当裁判長は、昨年5月に、大飯原発3、4号機の運転差し止め判決を出した樋口英明判事(62)。
このときは、「人格権を侵害される具体的な危険がある」と、踏み込んだ判決内容で再稼働を否定した。
今回の仮処分申し立ては、3月11日に結審、まもなく決定を出す見通しだ。
樋口判事は、3月末に定期異動するとされるが、関係者によると、その場合でも裁判所法28条に従って、高裁から特別な辞令を得て、異動後も決定を言い渡すことができるという。
もし仮処分が認められれば、関電が取る方法は三つ。
ひとつは、保全異議や執行停止の申し立て。
あるいは、本訴への持ち込み。
最終手段として、決定を無視し、強引に再稼働させることもできるが、簡単ではない。
「保全異議の決定だけでも、おそらく1年はかかる。
無理やり原発を動かせば、裁判所は関電に、億単位の間接強制金を課すでしょう。
そんなことをしたら、社長が株主から責任を追及されかねない」
(申し立て弁護団の内山成樹弁護士)
形勢不利と見た関電は、「合理的な理由がないまま審理が終結したのは不当」(関電広報部)として、裁判官忌避を申し立てた。
だが、福井地裁はすぐさま却下。
3月20日には、名古屋高裁金沢支部へ即時抗告したが、申し立て弁護団によると、認められる可能性は低いという。
原発の運転差し止めの仮処分が認められれば、国内では初となる。
元経産官僚の古賀茂明氏が言う。
「仮処分が出て高浜原発が止まったら、それが先例になり、全国の原発で同様の申し立てや訴訟が相次ぐ。
再稼働に何の迷いもない政府や経産省にしてみれば、そうした先例を絶対に許したくない。
時間をかけて最高裁まで争うでしょう」
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守田敏也 MORITA Toshiya
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