「国・郷土を愛する態度」などを学ぶ観点で、不適切だと意見が付いた。
これ、一体何のことだと思いますか?
もう有名な話だから、知ってるかもしれませんが、これは道徳の教科書の内容についての、トンデモな話です。
道徳教科書、事細かに注文 パン屋を和菓子屋に…
【日本経済新聞】2017年3月25日
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24HGS_V20C17A3CR0000/
高齢者を尊敬する気持ちを育むため、「消防団のおじさん」が「おじいさん」に、
国や郷土を愛する態度を教えるため、「パン屋」が「和菓子屋」に――。
24日に文部科学省が公表した、小学校の道徳教科書の検定では、教科書会社が、細部にわたって、記述を修正するケースがみられた。
学習指導要領で示した内容に照らし、申請時の記述が不適切、とされたためだ。
ある教科書会社が、小4の教科書に載せたのは、
男児に毎朝あいさつするおじさんが、休日や夜間は、地域の消防団員として活動するエピソード。
「人との関わり」を学ぶ狙いで取り上げた。
ただ、検定では、これ以外も含む教科書全体の内容が、「高齢者に、尊敬と感謝の気持ちをもって接する」という要素が不十分とされた。
このため、同社は、消防団員を「おじいさん」に変更し、イラストも書き換えた。
小1の教科書では、散歩中に、友達の家のパン屋を見つけた話を取り上げた。
こちらも、全体として、
「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つ」点が足りず不適切とされ、
パン屋を「和菓子屋」に修正した。
文科省は、道徳の学習指導要領を基に、「節度、節制」「礼儀」「家族愛、家庭生活の充実」など、19~22の内容項目を学年ごとに示し、全てを教科書で扱うよう求めている。
内容を修正した教科書には、これらの項目が網羅されていないとの理由で、意見をつけたという。
同省の担当者は、
「教科書全体で項目全てを扱ってほしいとの意図で、どこを修正するかは教科書会社の判断」と話す。
教科書会社の担当者は、
「低学年に『我が国』は難しく、身近なパン屋で『郷土に愛着を持つ』は問題ないと考えたが、
『国』も満たす必要があると指摘されたので、和菓子屋に修正した」と説明している。
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国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つ
節度や節制、礼儀や家族愛、家庭生活の充実
高齢者への尊敬と感謝の気持ち
こういうものを、教科書で学び、それに評価をつける。
わたしが小学生だった、昭和の40年代には、道徳の授業がありました。
7才から12才の間というと、とんでもなく前のことですが、どうしてこんなことをわざわざ勉強するんだろうと、何回も思ったのを覚えています。
でも、通知簿に道徳の成績が付いたかどうかは、全く覚えていません。
内申として付いたかもしれないけれども、それだったら多分、いい子のふりをするのに長けていたので、評価は良かったかもしれません。
でもわたしは、それが嫌でした。
子どもの頃から、今流行りの『忖度』の練習をさせられているような気がして、そしてそれを使って良い子ぶることが良いことのように教えられていることが嫌でした。
どうしてそれが今になって、蘇って来たのか。
そのことを考えている時に、この菅野さんの講演ビデオを聞き、いろいろと腑に落ちることがあったので、概要ですが文字起こししました。
話の順序が上下するかもしれませんが、ご了承のほどを。
それから、氏名は全て呼び捨て表記にしました。
■ 森友学園事件とは何か
2006年の教育基本法改正から11年間に渡る、日本の教育の右傾化。
日本会議や日本教育再生機構等々の存在が推し進めて来た、日本の教育の現場の歪みが端的に現れた事件だから、みんな必死になって物事を隠そうとしている。
■ 森友問題は、大きく分けて3つある
① 国有地がなぜあれほど安くなったのか
岡山、今治、千葉の銚子もそうだが、加計学園という安倍の“お友だち”が、獣医医学大学を作るときに、
何十億もの土地がタダになったり、
ただになった国有地を担保に、みずほ(銀行)から200億円引っ張ってきたりとかいうことをやっている、という問題もあるが、
森友学園については、2月9日の朝日新聞のスクープで表に出た。
② 私学審議会の審議と答申の内容がかけ離れている
こんな学校に認可を下ろすわけにはいかないと言われていたのに、答申では許可相当と出してしまっている。
③ 森友学園そのものの危なさ
政治活動をやっている。
安倍政治を許さないというポスターよりも、幼稚園児の「安倍首相頑張れ」の方が、政権にダメージを与えているという、ものすごい皮肉。
戦争法案の頃から今に至るまで、何十万もの人が「安倍政治は許さない」と掲げて言ってきた。
でも、たった3人の幼稚園児が、「安倍首相頑張れ」と言うだけで、ここまで政権が揺らぐ。
教育勅語、ヘイトスピーチと差別の問題。そして虐待疑惑。
森友学園の教育現場の問題はある。
だがしかし、だからといって、証人喚問で、土地取引のことを彼に問いただすのはおかしい。
ハンコを押したのは迫田なのだから。
それは例えば、自動販売機で100円のジュースを買おうと思って100円玉を入れる。
ボタンを押す。
ジュースが出てきた。
なぜか知らないが、300円も出てきた。
それをポケットに入れた。
で、ジュースを持って帰った。
その時に、なぜ300円をポケットに入れたのだ?と怒るならわかる。
このジュースを買った人が籠池だとすると、今世の中の人が、籠池に、何を言っているかというと、
「籠池、なぜそのボタンを押したら300円が出てきたのか、説明しろ」なのだ。
わかるわけないでしょ?
籠池には、籠池の先代の森友ひろしから続く、小学校建設という宿願があった。
それを、2代目であり婿である籠池が、プライドをかけて運動をし続けてきた。
だから、必死になって運動をする。
これは普通の話。
リベラルの人たちだって運動はやる。
デモをやって、陳情をやって、署名を集めて、政治家に会いに行って、役所に口利きを頼む。
籠池の教育方針や教育行為そのものは、大いに糾弾していかなければならないけれども、
土地取引や認定の段階でやっていたのは、端正な市民運動である。
私は小学校を建設したい。
そのためには条例を変えなければならない。
だから、政治家や役人に会わなければならない。
と、一人で必死になってやっていた。
そういうふうにやって会ったら、なぜか知らないけれども役人が、押しにくいハンコを斜めに押して、書類を通してくれた。
なぜそのハンコを押したのかと、籠池を責めるのはお門違い。
押した役人が悪いのだから、その本人である役人に問わねばならない。
そして、その役人にハンコを押さしめたモノが、本当に恐ろしい存在だということ。
財務省の迫田にしか聞きようが無い。
けれども自分は、財務省のブリーフィングには参加できない。
大阪府の府政記者クラブに属していないと、ぶら下がり取材もできない。
主要なプレイヤーの中でアプローチできるのは、籠池しかいない。
だから籠池を徹底的に取材した。
大きな会社に属している諸先輩方が、迫田と私学審議会を引っかき回した維新を追いかけてくれるだろうと思っていた。
籠池の悲願は、日本会議の考えていることを具現化した小学校を作ること。
先代ができなかったことを、自分ができるかもしれないと思ったのは、教育基本法改正法案が通った2006年。
「神風が吹いた」
時代の潮流に乗って、自分に学校が作れると思った。
■ 森友事件の土地売買の経緯そのものが不自然
土地は『池、沼』と表示されている。
隣に、大阪音楽大学がある。
すごく小さく、過密度が高い学校。
慶應の三田キャンパスの中に、慶應の三田キャンパスに入っている建物の倍以上の建物が建っているという感じ。
阪神代震災以降、あの土地ができた。
大音大は何十年もの間、キャンパス拡大が悲願だった。
隣接しているあの土地を買うと、敷地が倍になるということで、17億円を提示したが、安いと言って蹴られている。
どうして売らなかったのか。
鴻池メモの中に出てくる表現を借りると、大阪府は、森友に対して、国が土地を売ってくれたら私学認可を推してあげる、という返答を出した。
国は森友に対して、私学認可が下りたら土地を売ってやる、という話をしていた。
ニワトリと卵のような話に、急に決着がつく。
どうしてなのか?
さらに、どうしてズブの素人(航空局)が、あのゴミの積算をしたのか?
なぜ8億円になったのか。
その根拠がいまだに説明されていない。
なぜ定借契約から売買契約になったのか?
籠池は、10年定借だと家賃が高いので、50年定借に変えてくれという依頼を、安倍昭恵にした。
谷はこの段階で、それはできないと言いながら、その代わり別途予算措置を作ると言った。
完全に口利きをしている。
安倍昭恵が口利きをしている。
籠池は、幼稚園の先生になる前、大阪のローカル局で、アナウンサーとしての内定を取っている言葉のプロ。
その言葉のプロが、言葉巧みに安倍昭恵に近づき、その結果、あのファックスを引き出している。
籠池は、「政治家としての口利きはなかった」と言った。
となると、口利きをしたのは、閣議決定までして私人となった安倍昭恵しかいないことになる。
黒塗りの資料に、定借から売買に至るまでの経緯が載っているはず。
■ 大阪維新がやった規制緩和
幼稚園単体の学校法人が、小学校を作ることはできないというレギュレーションが、突如変更になった。
元々の大阪府のレギュレーションでは、6年間の運転資金を現金で持ってない限り、小学校は開設できないというレギュレーションがあった。
それが突然消え、その後、小学校新設の申し出をしたのが、籠池ただ一人だった。
私学新議会は大荒れだった。
2012年2月16日、新しい歴史教科書を作る会の貢献団体である、日本教育再生機構(育鵬社発行の教科用図書を勧める団体)のパネルディスカッションで、安倍は維新の松井と意気投合する。
総裁選で負けたら、菅と一緒に自民を出て、維新の党首になるとまで約束していた。
日本教育再生機構の育鵬社発行の教科用は、山口県と大阪府に蔓延している。
ここに鉱脈があったと、籠池は気づく。
ここに乗っていれば、小学校開校ができる。
そしてさらに、日本会議人脈に気づく。
大阪維新は、日本教育再生機構を、政治的に拡大している。
籠池は、稼業として、学校の拡大を図っていた。
そこに、ああした方がいい、こうした方がいいと、様々なことを勧めてきたのが、松浦、下村、安倍である。
安倍が隠していることは何かというと、2006年、自分の内閣の時にできた、教育基本法改正から流れる、右傾化路線の必然的な帰着が籠池であるという、歴史的責任から自分を隠そうとしている。
2006年の教育基本法改正というのは、教育の現場で、少なくともこれだけはやらなければならないはずの、人権教育や平和教育や、15年戦争に対する反省というものを後退させて、君が代と日の丸を前に出させるという改正。
このことを、大したことではないと無視してきた結果が、パン屋はだめ、和菓子屋にしろ、に繋がっている。
当然の帰結である。
■ 安倍は、森友学園を応援していた
なぜか。
2006年の教育基本法改正の路線そのままだから。
育鵬社の教科書、教育再生機構と文科省が悪い。
これらを合体させて前に進めたら、森友学園に成らざるを得ない。
籠池は、2006年に決まった文科省の右旋回を、時代の要請だと思って、調子に乗ってしまった。
籠池が生んだ教育は、差別であり虐待であり、子どもの人格を否定する教育であった。
100万円の授受問題を、日本の教育問題としてみたならば、ものすごく大きな意味を持つ。
野党議員に、安倍と安倍昭恵に対して、
「歴史修正主義者レイシストが運営する幼稚園を、なぜ賛同していたんですか?」
という、ストレートな問いを投げかけてくれと言いたい。
籠池氏はレイシストである。
それに共感し、100万円を渡すような者が、この国の総理をやっている。
このあからさまな悪を、許してよいのか。
■ 森友学園問題が、わたしたちに突きつけているもの
我が国は、レイシストに100万円を渡す人間を、内閣総理大臣としていただいてしまっているという冷酷な現実を目撃している。
問題は倒閣ではなく構造である。
差別というものを放置すると、ここまで醜悪なものが生まれるということを、具体的な例を見た。
安倍やめろではなく、差別をやめろである。
潰さなくてはならないのは、安倍晋三が内閣総理大臣の座に座っているという状況ではない。
内閣人事局と小選挙区比例代表並立制というものが生まれると、首相官邸が与党の公認権を独占する。
内閣人事局は、局長級以上の官僚の人事を、内閣総理大臣が握る(安倍官邸の方針に従った政策をする人物しか幹部に登用しない)。
こんな権力構造は、日本史上、今までなかった。
行政の長が、立法府の構成員の生殺与奪(せいさつよだつ)権と、行政府の幹部クラスの生殺与奪権を握っているという、制度設定をしている民主主義国家は、おそらくない。
安倍晋三の代わりに誰が内閣総理大臣になったとしても、制度設計的に、強権的な政権運営にならざるを得ない。
政治家も官僚も、内閣総理大臣ひとりに、生殺与奪の権利を握られてるから、みんな忖度をする。
だから勝手に物事が動く。
これを僕は『全自動忖度機』と呼んでいる。
『全自動忖度機』を潰さないといけない。
これは安倍の問題じゃなく、制度の問題。