ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

ジェーン先生の体験授業「青い目 茶色い目」 と 「人種は存在しない、あるのはレイシズムだ」という考え方を考える

2020年06月21日 | 日本とわたし
昨日の6月19日は『Juneteenth』(ジューンティーンス)という日でした。
わたしはこのアメリカに移り住んで20年も経つというのに、今年のこの日まで知らなかった記念日でした。
アフリカから奴隷として連れて来られた人たちが自由になった日です。
アフリカの人々が、奴隷として売買され、アメリカに連れて来られたのは今から400年ほど前の1600年代。
強制的に連れて来られただけではなく、アメリカに到着するまでの船の中で大勢が亡くなりました。
無事に到着したとしても、まるで物のように扱われ、売られていきました。
売られた先では過酷な労働を強制され、侮辱され、虐待される毎日が続きました。
そのような理不尽な奴隷制度は、それに反対する北部の州と、存続を主張する南部の州との戦争で、北軍が勝利してから2年半後の1865年の6月19日に、テキサス州ガルベストンで廃止されました。

廃止された後も、黒人に対する人種差別はさまざまな形で、さまざまな場所で続いて行きました。
キング牧師らによる公民権運動が広がりを見せ、1964年に人種差別を禁じる「公民権法」が制定されるまでの100年の間に起こった差別の歴史は、映像や文章で残されています。
わたしがこちらに移り住んだ20年の間にも、何度も酷い事件が起こりました。
そして今回の、『BLACK LIVES MATTER』という、今や国際的な抗議行動の発端となった、警官(特に白人)による無抵抗な黒人への暴力事件が立て続けに起こったことで、わたしももう一度ちゃんと現実を見なければと思ったのでした。

さて、この二つの動画を観てください。
もうずいぶん前に公開されたものですが、わたしはつい最近、フェイスブックの友人が載せてくれていたので知ることができました。
題名の「青い目茶色い目」からもわかるように、これは人種差別についての教育ビデオです。

NHK特集
「青い目茶色い目~教室は目の色でわけられた~」 
構成 ウィリアム・ピーターズ 45分
<内容紹介>
1968年4月、アメリカ北西部のアイオワ州・ライスピルの小学校で、人種差別についての実験授業が行われた。
小学3年生の担任であるジェーン・エリオット先生は、キング牧師の死後、黒人指導者に無神経な質問をする白人の解説者の傲慢な態度を見た。
そして、「子どもたちを差別意識というウイルスから守りたい」という思いを持ち、次の日にある実験授業を試みた。
クラスを青い目と茶色い目の子どもに分け、
「青い目の子はみんな良い子です。だから5分余計に遊んでもよろしい」
「茶色い目の子は水飲み場を使わないこと。茶色い目の子はダメな子です」
というように、青い目の人は優れ、茶色い目の人は劣っていると決めて1日を過ごすというものだ。
逆に翌日は、茶色い目の人は優れ、青い目の人は劣っているとして生活する、というものだった。
実験の様子は、ABC放送の「目の色が巻き起こした嵐」と題した映像として残されている。
エリオット先生のこの授業は、差別される側の気持ちを実際に体験し、子どもたちの人種差別に対する考えを変えることができた。
そして、もう一つ重要なことが判明した。
実験授業の2週間前と授業をしている2日間、そして授業の2週間後に、国語と算数のテストを行った。
子どもたちの点数は、優れているとされているときに最高で、劣っているとされている時に最低を示した
そして、授業後は、クラス全体の成績がかなり高くなったという。
2日間の授業で大切なことを学び、その大切なことを学んだという意識が、生徒たちに自信を与え、優れていると言われた時の高い得点を維持できるようになったのだった。
 
エリオット先生は教職を去り、人種差別に対する犯罪がなくなることを願って、全米各地の刑務所や企業で、この試みを行っている
この作品の中にも、刑務所で、職員に対して行われた講習会の様子が紹介される。
実験授業の主旨を説明せずに、目の色によって差別をして講習会を進め、差別された青い目の職員らは、その理不尽さ、深い絶望感を感じることになる。
このように、エリオット先生の実験授業は、大人にも子どもにも、人種差別と真剣に向き合い、人種差別を身近なものとして捉えることを可能にした。

そしてこれは2001年に行われた、大学生を対象にした実験体験です。

ジェーン・エリオット氏 Jane Elliott 
「青い目茶色い目」"Blue Eyes Brown Eyes"
このビデオを台所で一人で観ていると、途中から夫が観始めました。
一人の女性の大学生が、ジェーン先生の態度に反発を感じ、教室から一旦退席し、また戻って来たのですが再び口論となり、とうとう帰ってしまった場面で、夫も部屋から出て行ってしまいました。
まるで戦場の辛さを先に体験させるブートキャンプのようだと言って。

ジェーン先生はこの実験教室をする際に、自分とは真逆の、全く共感を持てない人物に成り切らなければならないので、あとで酷い頭痛に何日も悩まされると言っていました。
その言葉が大袈裟には聞こえないほどに、ジェーン先生の青い目を持つ学生に対する態度は横柄で、良い意味での厳しさとは言えません。
数名の学生が、あなたはただきつい言い方をして怒らせている。
そしてわざと意地悪な暗記をさせて、できないことをバカにしている。
理不尽な言いがかりをつけられた上に謝れと言われるなんて辛過ぎる。
言いたいことがあって手を挙げても、意見を言わせてもらえない。
口答えした人を槍玉に上げて、ただいじめているだけだ。

でも、意見を言っただけで殺されないでしょうあなたたちは、とジェーン先生は抗議を全く受け入れません。
そしてこう言います。
でも、わたしたちは、自分と見た目が違うからといって、考え方や生き方が違うからといって、酷い仕打ちを受けたり殺されたりすることを容認している社会に生きている。
今日、ここで、たった2時間半、酷い目に遭ったとしても、あなた方は単位をもらえる。
社会では、こんな事とは比べ物にならないくらいに酷い目に毎日遭っている人がいる。
彼らは何を言っても「誤解」の一言で片づけられてしまう。
外見同様、中身も違う。それは一人一人に与えられた権利。
その違いを受け入れ認め合い、尊重し合うことが大切。
この授業を受けた人は、非常に深い悲しみを受けた人と同じような反応を示す。
まず否定してから怒り出す。そして折り合いを見つけ落ち込み、最後は受け入れる。
私は授業を通して人々の意識を高め、差別をなくすために立ち上がってもらいたい。

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夫(白人)とわたし(黄色人)は、このビデオについてさらに話し合っていきたいと思っています。
そして今日、こんな記事を見つけました。
とても興味深い内容ですので、みなさんにもぜひ読んでいただければと思います。

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