ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

秋のよもやま話

2023年11月20日 | 日本とわたし
秋もたけなわ、気温はぐんぐん下がり、空気はどんどん乾燥し、部屋の中では暖房と加湿のための機器が働き続けている。
通りを歩くとカサカサと、いかにも渇ききっているにふさわしい音が、どこからともなく聞こえてくる。
地面に積もって踏まれる落ち葉はともかく、枯葉は空から舞い降りてくるときにも音を立てるのだ。 

昭和のど真ん中に生まれたわたしの小学校時代は、秋は読書の秋だの食欲の秋だのと言われていたが、今時の秋はなんの秋なのだろう。
小さい頃から暇さえあれば本ばかり読んで、ろくに愛想もしないし手伝いもしない。
3歳下の弟の方がよほど気が利いて役に立つと、親戚から小言を言われ続けていたわたしだが、いまだに本を読むのは大好きだ。
ただし、紙の本は字が小さすぎて読みづらくなったので、今はもっぱら電子本ばかり読んでいる。
あのぺーじをめくる時の微かな空気の揺れや、指先をくすぐる紙の端っこの感触が懐かしくてたまらないけれど、背に腹はかえられない。
音符の本を読むのも好きだけど、こちらは拡大することはほぼ不可能で、だから最近は初見読みの能力低下にイライラさせられる。
今も新しい曲を練習しているのだけど、音符はともかく指番号が小さすぎて読めないので、その上にでっかい字で番号を書き込むのが日常になった。
こんなことをしなければならなくなるなんて、若かった頃は考えもしなかったなあ…。

今年の2月末に行われたオーケストラのコンサートで指揮をして、それまでの練習過程で無理を重ね続けた結果、1ヶ月もの間絶不調の毎日を送り、その後も以前の健康を取り戻せないまま毎日のレッスンに追われていた。
生徒の数がなぜだかどんどん増えて40人を超えてしまい、ありがたいことではあるけれど、毎日5時間以上もぶっ通しでレッスンをしていると、週末に少しぐらい休んだだけでは回復しない。
週末に何が用事があったり遠出したりすると、疲れ切ったまま月曜に突入する。
こんなことでいいのだろうかと思いながら時間はどんどん過ぎて、またコンサートの開催日が近づいてきた。
色々と悩み、考え、迷い続けたが、思い切って根幹になる物事以外を自分から外すことにした。
長年に渡り担ってきたACMAの役員を辞退し、オーケストラのアシスタントコンダクターも辞退した。
それまで自分にとってものすごく意義があり、少々のことでは手放せないと思っていた(というより執着していたと言う方が正しいのかもしれない)物事が、いざ自分の健康と天秤にかけてみると、潔すぎるくらいに切り離せてしまった。
もうやりたい気持ちだけではできないのだなあと、しみじみ思う。
これからは生徒の数も、積極的に減らしていくつもり。
ピアノは、練習をしない、あるいは物理的な理由でできない人には向かない習い事なので、そういう状況にいる生徒と親御さんにきちんと話をして、継続か否かを決めてもらうことにした。
引越しで来られなくなった人が2人、練習をしたくてもできない人が2人、まだピアノを習う環境ではない人が1人、練習が嫌な人が1人、合計6人の生徒が辞めた。
と思ったら、練習はちゃんとしますからと、2人の生徒が新しく入ってきたので、状況的にはあまり進展は見られないけれど、これからは誰も彼もというふうには考えないでいこうと思っている。

わたしの周りでそんな小さな変化風が吹いている間に、仲間たちの演奏会がすみやかに行われた。
昨日の土曜日は、そのコンサートを聴きにカーネギーホールまで出かけて行った。


一部がオーケストラで、モーツァルトのクラリネットコンチェルトと指揮者のクリストファー氏自身の作品が演奏された。


二部はACMAのメンバーのソロとアンサンブル演奏だったのだけど、メンバーのほとんどが知らない人たちで、しかもアマチュアとは思えない演奏揃いで驚いた。
もちろんオーディションで出会っているはずなのだけど、ここにも転換期が来ているのだなあと強く感じた。
中には2017年のショパン国際ピアノコンクールと、同年のラン・ラン深圳福田国際ピアノフェスティバルのコンクールで第1位を、さらに2018年の若いピアニストのためのラフマニノフ国際コンクールで第2位を受賞した、という人もいた。
そんな強者がゾロゾロの会員数3500人という大所帯になったACMAは、これからどんなふうに変化していくのだろう。



おまけ写真
マンハッタンの風物詩、マンホールの煙


コンサートは3時間近くにも及んだが、ちっとも長く感じなかった。
おめでとう演奏者のみなさん!
素敵な演奏をありがとう!
わたしも次のオーディション目指して頑張ります!
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