4) 釉の添加物。
① 沈殿防止: 一定時間放置された釉は、重力により水と釉が分離し、容器の底に沈殿
します。場合によっては、手で攪拌出来ない程、硬く固まる場合も多いです。
釉によっては、使用した傍から沈殿が起こります。良く攪拌しないと容器の上下では濃度が
違う事もあり、施釉も斑(まだら)に成る場合もあります。
・ 釉が硬く固まって沈殿する理由: 粘土粒子は微細な板状の面を持ち、お互いの間に水分を
保持している為、沈殿しても硬く固まりません。釉の材料である長石や珪石は、嵩(かさ)
張る事も無く密着し易く、水分を排除して硬く固まります。
沈殿を防止には、幾つかの方法があります。
) 沈殿防止剤を添加する。
沈殿防止剤で沈殿を防止する事は出来ません。但し、沈殿した材料を硬く固まり難く
する事で、手で攪拌して容易に溶かす事が出来ます。
沈殿防止剤には以下の物があります。
a) 塩化アンモンニウム、塩化マグネシウム。
両方とも水に溶かしてから、釉に添加します。添加量は1~3%程度です。
・ 塩化アンモニウムは、少しずつ分解して溶け6~12ヶ月で効力が無くなります。
焼成初期に熱分解を起こし、釉中に残りませんので釉を変える事は有りません。
・ 塩化マグネシウムは、熱分解後に、マグネシウム成分が残りますが、少量の為気に
する必要はありません。
b) その他の沈殿防止剤。 塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、ニガリ等があります。
これらも少量添加して使います。
) 少量の可塑性粘土を添加して沈殿を防止する。
可塑性粘土としてベンナイトを用います。添加量は1~3%程度で、多過ぎると釉に
色が付き、熔ける温度に変化を与えますので注意。
ベンナイトは他の材料に対して、極端に粒子が細かく、長い間釉に浮遊し沈殿を遅く
すると同時に、ベンナイトの構造により釉の固まるのを防ぐと言われています。
② 素地に付着し易くする為の添加剤として、CMC糊、アラビアゴム、デキストリン等があります。
いずれも有機物ですが、CMCが一般的に使われています。他の添加剤は微生物による分解が
CMCより起こり易く、効果も限定的です。
釉の調合で可塑性が少ないと、素地に密着せず施釉後に、「釉はげ」を起こす事があります。
その際、付着力を持たせる為、上記添加剤(粘着剤と言います)を用います。
) CMC糊(カルボキシ・メチル・セルロース・ナトリウムの略)。
一番良く使われる粘着剤です。
木材のパルプから作られる粉末状の化学糊で、水に溶かしてから0.1~1%添加します。
添加量を増やすと、施釉後水分を含み過ぎて乾燥が遅くなります。
・ CMCは水に溶け難い: 1000ccの水に25gのCMCを溶かしますが、完全に溶ける
までには2日程掛ます。その間度々攪拌する必要があります。但し、熱湯を使うと時間を
短縮する事が出来ます。
・ 焼成時に熱分解を起こし、釉に溶け込む事はありません。
・ 尚、CMCは素地に1%程度添加する事で、乾燥時の機械的強度を増しますので、ひびや
割れ、歪みなどに対して有効です。
) その他の粘着剤にアエアビアゴムがあります。又以前ですと「ふのり」も使われて
いましたが、腐敗しやすい為、現在ではほとんど見かけません。
以下次回に続きます。