一見完品に見える物が、実は大きな傷物である事があります。
擦り切りとは、割れ等の大きな傷がある焼き物の悪い部分を切り取り、補修を施し全く別の完品に
仕上げる騙し(贋作)の技法です。口縁の小さな欠けであれば、その部分を補修する方が得策です。
擦り切を行う元の作品は、この手間隙を掛けても良い程の価値のある作品でなければ成りません。
欠陥を除去する事で、より商品価値を上げる事ができます。
但し、大切な物を作り直して再び使うと言うのであれば、必ずしも問題に成る訳ではあります。
尚、擦り切の技法を施した物は、本来の形ではありませんが、胎土、釉や文様、焼きは本物ですので
完全な贋作とは言えない面もあります。
1) 無釉の作品に多い傾向です。
① 切り取った部分は当然釉が掛かっていません。それ故、施釉陶器では切り取った事は一目瞭然
ですので、切り取り部には何かの処置を施し、カムフラージする必要があります。
カムフラージュとは: 漆を塗ったり、共色の付いた接着剤を塗るなどの方法もあります。
・ 磁器の場合は、切り取った部分を丁寧に仕上げると、施釉された様に見えます。
② 土器や焼締め陶器であれば、無釉ですので擦り切った部分も目立つ事は有りません。
③ 擦り切の技法を施した物は、施釉陶磁器の作品にも多く存在します。
2) 擦り切の方法。
① 口縁や頸(くび)の部分が破損して欠けた場合、欠けた部分の最下段で切り取るのが一般的
です。多くの場合は水平に切り取りますが、形に応じて切り方を変化する場合があります。
② 土器などの軟陶であれば、糸鋸(いとのこ)で容易に切り取り、紙やすりで切り口を磨き
上げれば完成に成ります。
③ 高温で焼成した作品は、胎土が焼締まっている為、任意の場所を容易には切り離す事は、
結構難しいです。「ダイヤモンドやすり」や「グラインダー」等を使うとより容易ですが、
やり方によっては、必要以上に割れ部を広げる危険性もあります。
3) 擦り切の例
① 把手の付いた水差し(水注)の注ぎ口や把手部分が大きく破損した場合、徳利に仕上げる。
) 注ぎ口を本体根元部分より切り離します。把手は上下二箇所で本体に取り付けられて
いますがこの二箇所を切り離します。
) 注ぎ口は本体に孔があきますので、埋める必要があり、把手部分は孔が有りませんので
切り口を綺麗に仕上げれば良いです。
注: 「孔」は貫通したあなで、「穴」は行き止まりの有るあなを意味します。
) 施釉陶磁器であれば、補修後、釉を掛けて二度焼きします。
② 大きな鉢の上部(口縁部)を擦切し、手頃の抹茶々碗に仕上げる。
好みの位置で擦切し、切口部は共色で施釉したり、覆輪を掛けたりします。
・ 著名な茶碗に「十文字井戸」(三井文庫蔵)があります。これは古田織部が大き過ぎる
大井戸茶碗を縦横十文字に挽き切、寸詰めしたものです。
③ 徳利の銅から上を切り取り、下部を塩笥(しおげ)形茶碗や、鉄鉢形茶碗にする場合があり
ます。
・ 国の重要文化財の三島芋頭(いもがしら)の水指も、大徳利の下半分と見なされています。
④ 瓢箪形の瓶のくびれ部で擦り切、下部を壷とした作品もあります。
李朝の口縁部に釉の無い物が多く有るそうですが、その中の幾つかは擦り切と思われています
⑤ 茶碗の高台部を擦り切、別の高台を接着した物も見つかっています。
その他、壊れた耳を擦り切、耳無しの壷に仕上げる。片口の上部を擦り切、茶碗に仕上げる。
4) 擦り切を見破る。
① 口縁部の釉の状態や、曲面に不自然さは無いか。
② 凹み部の上下の繋がりに違和感は無いか。
③ 見込み部の発色と外側の発色に大きな違いが無いか。
見込み部に釉の掛け外しがあれば、袋物(壷、徳利類)の擦り切の可能性があります。
以下次回に続きます。
擦り切りとは、割れ等の大きな傷がある焼き物の悪い部分を切り取り、補修を施し全く別の完品に
仕上げる騙し(贋作)の技法です。口縁の小さな欠けであれば、その部分を補修する方が得策です。
擦り切を行う元の作品は、この手間隙を掛けても良い程の価値のある作品でなければ成りません。
欠陥を除去する事で、より商品価値を上げる事ができます。
但し、大切な物を作り直して再び使うと言うのであれば、必ずしも問題に成る訳ではあります。
尚、擦り切の技法を施した物は、本来の形ではありませんが、胎土、釉や文様、焼きは本物ですので
完全な贋作とは言えない面もあります。
1) 無釉の作品に多い傾向です。
① 切り取った部分は当然釉が掛かっていません。それ故、施釉陶器では切り取った事は一目瞭然
ですので、切り取り部には何かの処置を施し、カムフラージする必要があります。
カムフラージュとは: 漆を塗ったり、共色の付いた接着剤を塗るなどの方法もあります。
・ 磁器の場合は、切り取った部分を丁寧に仕上げると、施釉された様に見えます。
② 土器や焼締め陶器であれば、無釉ですので擦り切った部分も目立つ事は有りません。
③ 擦り切の技法を施した物は、施釉陶磁器の作品にも多く存在します。
2) 擦り切の方法。
① 口縁や頸(くび)の部分が破損して欠けた場合、欠けた部分の最下段で切り取るのが一般的
です。多くの場合は水平に切り取りますが、形に応じて切り方を変化する場合があります。
② 土器などの軟陶であれば、糸鋸(いとのこ)で容易に切り取り、紙やすりで切り口を磨き
上げれば完成に成ります。
③ 高温で焼成した作品は、胎土が焼締まっている為、任意の場所を容易には切り離す事は、
結構難しいです。「ダイヤモンドやすり」や「グラインダー」等を使うとより容易ですが、
やり方によっては、必要以上に割れ部を広げる危険性もあります。
3) 擦り切の例
① 把手の付いた水差し(水注)の注ぎ口や把手部分が大きく破損した場合、徳利に仕上げる。
) 注ぎ口を本体根元部分より切り離します。把手は上下二箇所で本体に取り付けられて
いますがこの二箇所を切り離します。
) 注ぎ口は本体に孔があきますので、埋める必要があり、把手部分は孔が有りませんので
切り口を綺麗に仕上げれば良いです。
注: 「孔」は貫通したあなで、「穴」は行き止まりの有るあなを意味します。
) 施釉陶磁器であれば、補修後、釉を掛けて二度焼きします。
② 大きな鉢の上部(口縁部)を擦切し、手頃の抹茶々碗に仕上げる。
好みの位置で擦切し、切口部は共色で施釉したり、覆輪を掛けたりします。
・ 著名な茶碗に「十文字井戸」(三井文庫蔵)があります。これは古田織部が大き過ぎる
大井戸茶碗を縦横十文字に挽き切、寸詰めしたものです。
③ 徳利の銅から上を切り取り、下部を塩笥(しおげ)形茶碗や、鉄鉢形茶碗にする場合があり
ます。
・ 国の重要文化財の三島芋頭(いもがしら)の水指も、大徳利の下半分と見なされています。
④ 瓢箪形の瓶のくびれ部で擦り切、下部を壷とした作品もあります。
李朝の口縁部に釉の無い物が多く有るそうですが、その中の幾つかは擦り切と思われています
⑤ 茶碗の高台部を擦り切、別の高台を接着した物も見つかっています。
その他、壊れた耳を擦り切、耳無しの壷に仕上げる。片口の上部を擦り切、茶碗に仕上げる。
4) 擦り切を見破る。
① 口縁部の釉の状態や、曲面に不自然さは無いか。
② 凹み部の上下の繋がりに違和感は無いか。
③ 見込み部の発色と外側の発色に大きな違いが無いか。
見込み部に釉の掛け外しがあれば、袋物(壷、徳利類)の擦り切の可能性があります。
以下次回に続きます。
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