わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

騙しのテクニック5 古色付け 4 

2014-06-21 21:39:55 | 騙しのテクニック
3) 伝世品の経年変化

 ① 発掘品と伝世品では、経年変化に差があります。

 ② 伝世品の経年変化の特徴。

  ) ホツとニュウに付いて。

   a) ホツとは「欠け」の小さな物の事です。ニュウとは「ヒビ」の事です。

    但し、「ニュウ」は釉と胎土の両方に入った「ヒビ」で裏側まで達している状態です。

    古陶磁にはホツとニュウがある物が多く、茶陶では漆などで補修する場合が多いです。

    金継(金直し)も良く行われる補修方法です。

   b) 「欠け」や「ニュウ」などの傷が何時頃出来たかは、「欠け」の断面や「ニュウ」の色の

    濃さなどで判断できます。即ち、「欠け」の周囲の角が丸みを帯びている場合や、胎土が

    黒く変色している場合は、「欠け」てからの時間が長い事になります。

    「ニュウ」の入った部分の色が周囲より濃い場合には、時間が経過している事を表し、

    さほど周囲の色と違いが無く淡い色の場合は、比較的新しいです。

    但し、同時に複数個の「ニュウ」が入った場合でも、「ニュウ」が太い程濃い色になり、

    細い程淡く見えます。

  c) 「時代ニュウ」に付いて。

    長年の使用で加熱冷却を繰り返し、膨張収縮を繰り返した結果、素地内部の応力により、

    「ニュウ」が入る現象です。 唐津、萩、井戸茶碗などに、比較的多く現れます。

    「人工的ニュウ」が直線的で一気に起こったのに対し、蛇行して少しずつ延びた様子が

     伺えます。著名な作品に「小井戸茶碗 銘 六地蔵(泉屋博古館蔵)」や「老僧井戸」

     などがあり、十数本の「ニュウ」が口縁から平行に下に向かって延びていますが、一定の

     所で止まっています。

  d) 人工的に「欠け」を作り、古色付けする場合があります。

    一般に、欠けやニュウがある事は、マイナスに評価されます。しかし実際には以下の事例が

    ある様です。完品の信楽の大壷が中々買い手が付かないので、店主が故意に口縁を欠いて

    店頭に並べたら、直ぐに売れたそうです。

    又、新陶の抹茶々碗の口縁の一部を故意に欠き、漆で接着し金継で補修して古陶に見せ掛

    ける場合もある様です。逆に、無傷の作品に、金継を施しあたかも補修した様に見せかける

    事もあります。 金継前の状態を確認する為、補修部分を取り除いたら、無傷であった事が

    判明した例も有った様です。

    尚、金継が施された著名な抹茶々碗に、重要文化財の楽茶碗 銘「雪峯(せっぽう)」

    畠山美術館蔵、があります。

  e) 人工的に「ニュウ」を付ける。

    「欠け」を作る事は比較的容易ですが、「ニュウ」を作るのは比較的困難な様です。

    但し、先の細い木槌などで、口縁部を連続的に叩くと、徐々にひび(ニュウ)を入れる

    事が可能よ様ですが、磁器では無理のようです。「ニュウ」の断面に古色を付ける為、

    土を擦り込んだり、紅茶などを流し込む場合もある様です。

  f) 「ニュウ」は傷ですが「貫入」と「地貫入」は傷では有りません。

   ・ 貫入(かんにゅう)は、釉層にのみに細かい「ヒビ」 が入る現象です。

    釉と胎土との収縮差が原因で、一般に陶器に見られる現象です。窯出の際にあるもの、

    窯出し後冷える間に発生するもの、長年使用していると自然に発生するものと三種類あり

    ます。

   ・ 「地貫入」とは、数本の長い「ヒビ」が釉の表面を走る現象で、「貫入」が器全体に

    広がるのとは、区別されます。「貫入」が口縁から入るのに対し、「地貫入」釉層が薄い

    口縁部まで延びていない事が多いです。

   ・ いずれも、永い使用で色素が沈着し古陶の味わいを醸し出しています。

     当然、これの効果を狙った、贋作も多いです。

  ) 汚れと染みについて。

以下次回に続きます。

        

    
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