前回までに釉の三要素に付いて述べましたが、これらの原料を使って釉を作る際、混合比率によって
釉に大きな違いが出ます。
1) 三角座標とは。
混合の比率によって、透明釉や失透釉(乳濁、マット)や、釉の熔ける温度に差が出ます。
この三要素をどの様な割合で混合すると、どの様な釉に成るかを確かめる方法が三角座標を
使う方法です。尚三要素とは、ガラス質を作るシリカ成分(二酸化物、酸性元素)と、釉を熔け
易くするアルカリ類(媒熔剤、一酸化物、RO又はR2O)、 釉を安定化するアルミナ類(三酸化物
中性元素とも言います)です。
① 釉の原料を選ぶ。
上記三要素は純粋の物ではなく、これらの元素を含む複合物を使う事に成ります。
例えば、シリカ成分には珪石を使い、アルカリ類には石灰(カルシウム)や酸化亜鉛(亜鉛華)
等を、アルミナ成分とシリカ成分には長石を使います。
② 三角座標を作る。
) 正三角形を描き、頂点をAとし、底辺左側をB、右側をCとします。
) 頂点Aには長石を、Bにはアルカリ類を、Cには珪石とします。
頂点Aは、長石100%であり、珪石0%を表します。同様にして頂点Bはアルカリ類
100%で、長石0%を表し、頂点Cは珪石100%で、アルカリ類0%を表す座標に成ります
) 三辺を10等分し各辺に対して平行線を引くと、55個の小さな三角形が描けます。
必要な事は三本の線が交差した部分です。即ち小さな三角形の頂点部分66個です。
) この交点部分は三要素の配合割合を示し、三要素の合計が100%になる様に成って
います。但し、その割合が重量比、又は容積比と成りますが、一般的には重量比を使います
例えば、作る釉を100gとすれば、最小単位は10gとなります。(10等分してある為)
尚、灰釉(長石、わら灰、土灰を使用)の場合、容積比で調合する事もあります。
③ 釉の調合。
上記三角座標を用いて調合しますが、最初から熔けないと予想される調合は試す必要は
有りません。一般的には以下の範囲内で試します。
) 長石は10~70%の範囲内。
) 石灰石と酸化亜鉛の混合物では40~60%の範囲。
) 珪石とはカオリンの混合物は0~60%の範囲。
④ 上記の様な調合はすでに数多く試されている為、おおよその傾向が結論付けられています。
それ故、新たな三要素の原料を使用する場合には、上記の三角座標で調合して下さい。
すでに判明している事とは、約1230℃で焼成した場合、良好な釉に成るのは、以下の配合
比です。
) 透明光沢釉として良好な調合。合計で100%になる。
正(カリ)長石 石灰石 酸化亜鉛 珪石 カオリン
a) 60% 18% 12% 7% 3%
b) 50 18 12 14 6
c) 50 12 14 6 9
d) 40 18 12 21 9
) 良好な半マット釉。
a) 50 30 20 0 0
b) 40 30 20 7 3
c) 30 30 20 14 6
) 良好な乳濁釉。
a) 60 6 4 21 9
b) 50 6 4 28 12
参考資料:「焼き物実践ガイド」 樋口わかな著 誠文堂新光社発行。
以下次回に続きます。
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