③ ガラスを安定化させる物質。
三酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)は、釉の中に必ず入っている物質です。
今までお話した様に、釉のガラス質の主材料であるシリカ(SiO2)は、網目構造をしています。
シリカが熔けてガラス質に成るとは、この網目構造の鎖を切る事であり、媒熔剤を添加する事で
より低い温度で熔かす事ができます。
) 壊れた網目構造を修復するアルミニウム。
一度切れた網目構造の鎖を繋ぎ直すのが、アルミニウムです。アルミニウムの働きは以下の
通りです。
a) 鎖を繋ぐ事で熔ける温度を上げます。強度的にも硬い釉となり、機械的強度を増し、化学的
にも強くなります。
b) アルミナ成分を増やすと、釉の粘度が上がります。その結果、他の元素の結晶化を防ぎ、
釉の透明度を上げます。 この場合のAl2O3:SiO2=1: 7~8(モル)程度です。
アルミナ成分を少なくすると、結晶が成長し易く成りますが、同時に粘度も下がり、熔け過ぎる
場合には、釉が流れ落ちます。
c) アルミナ成分が更に増え(Al2O3:SiO2=1: 3~6程度)ると、微細な結晶が発生し
マット状になります。
d) アルミナ成分は、表面張力を大きくする働きがあり、「縮れ現象」を起こし易いですので、
注意が必要です。
e) マンガンピンク釉を作る。二酸化マンガンと組み合わせ、還元焼成すると、ピンク釉を作る
事が出来ます。
) アルミナ成分は以下の物質から取ります。
a) 水酸化アルミニウム。
粒子が細かく、沈殿防止剤としても有用です。釉や素地に良く付着し、他の元素との反応も
良好な為、広く釉にも利用されます。
b) アルミナ(Al2O3)。上記水酸化アルミナを300℃で焼いて作った物で、純度の高い酸化
アルミニウムとなっています。
c) カオリンには40%のアルミナと、46%の二酸化珪素、14%の結晶水を含んでいます。
それ故、三要素のアルミナとシリカを使わずに、カオリンのみで釉を調合する場合もあります
尚、カオリンを使う利点として、粒子が細かく軽い為、釉の沈殿を遅くします。
更に、可塑性がある為、素地と密着する釉を作る事が出来ます。
但し、粒子が細かく、可塑性がある事は、収縮率が大きい事を意味し、施釉後に、釉めくれ
などを起こし易いです。
d) 長石類。長石の種類(正長石、カリ長石、ソーダ長石など)によって、成分に違いが有り
ますので、どの種類を使うかによって、釉に差がでます。
釉の参考書などには、その成分が載っている事が多いですので、使用時には、参考に
して下さい。
尚、釉の原料として昔より草木灰が多く使われています。現在でも盛んに好んで使れています。
灰に付いては、後日お話します。
以上で、釉の三要素の話を終わります。
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