わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 191 流れ易い釉の功罪とは1?

2015-11-04 17:20:35 | 素朴な疑問
釉は一種のガラスと見る事ができます。ガラスの材料である長石や珪石、それにアルカリ類の混合物

は高温度で熔けて、粘りのある液状になります。(尚、化学的には、ガラスは固形であっても液体と

見なされています。)その際、釉の調合の仕方によって、流動性が有る場合と、ほとんど流動性を

示さない物があります。市販されている釉のほとんどは、流動性の乏しい物が多いです。

流動性とは釉が移動して広がる事です。広がる方向は横(左右)方向と下方向になります。

特に問題に成るのは、下方向に流れる場合で、棚板まで流れ落ち固着する事です。

平たい皿の様な作品は、横方向に広がりますが、期待する程は広がりません。

1) 釉が流動性を持つ場合とは。

 ① 所定の温度より、高い温度で焼成した場合。

  本焼きの場合、市販されている釉の焼成温度は、おおよそ、1180、1200、1230、1250、1280、

  1300℃等に分類されます。但し、焼成温度はある程度の範囲内で熔ける様に成っています。

  当然御自分で調合した釉であれば、任意の焼成温度にする事もできます。

  例えば、1180℃と設定されている釉を、1250℃で焼成すれば、程度の差はありますが、ほとんど

  の釉は流れます。温度が高ければ高い程、釉は流れ易くなります。

 ② 釉を厚く掛け過ぎた時。又は、流れ易い釉との二重掛けを行った場合。

  ) 釉を厚く掛け過ぎた場合は、一般的な釉であれば、流れる事が多いのですが、釉の種類に

   よっては流れずに、「あばた」に凸凹に寄り集まる事もあります。特に流れ難く調合されて

   いる釉(志野釉など)ではこのタイプになります。

  ) 結晶釉は流れ易い釉です。

   結晶釉に含まれる金属などが、窯が冷えるに従い結晶化を起こし次第に成長し、独特の釉肌を

   呈します。結晶を成長させるには、釉に含まれる金属が結晶の核になる部分へ少しづつ移動

   する必要があります。その為に、結晶釉には流動性は必須条件になります。

   市販されている結晶釉は、流動性が出る様に調合されています。   

  ) 一方又は両方とも流れ易い釉を二重掛けした場合、釉は流れます。

   a) 一方だけが流れ易い釉の場合、どちらを先(下)に掛け、どちらを後(上)に掛けるかに

    よって色や流れ方が変化します。

   b) 流れ難い釉を下にし、その上に流れ易い釉を掛ける場合には、上の釉のみが流れ、釉同士が

    混ざり合う事が少ないです。著名な例として、唐津焼きの朝鮮唐津は、飴釉の上に流れ易い

    白い釉が掛けられ、白い釉のみが流れています。この流れが一つの見所と成っています。

   c) 流れ易い釉を下にし、その上に流れ難い釉を掛けた場合、上の釉も流れます。

    更に、釉同士が混ざり合います。その結果は必ずしも中間色が出る訳ではありません。

    まったく予想しない色が出る事も珍しくありません。

    勿論、二重掛けをする範囲によって流れる範囲も限定されます。

  ) 両方とも流れ易い釉を重ね塗りした場合、より多く流れ易くなると思われます。

    但し結晶釉の場合は、流れ過ぎて結晶化が起こらない可能性もあります。

2) 流動性を持つと、どんな効果があるのか?。

以下次回に続きます。

  
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素朴な疑問 190 底削りの際の肉厚の調整

2015-11-02 22:34:30 | 素朴な疑問
陶芸ではほとんどの場合、作品の底周辺を削る作業が行われるのが普通です。手捻りや「ベタ高台」

等の際には、削りを省略する事がありますが、多くは底(又は底周辺)を削る事になります。

但し、作品に重みが必要な花瓶や置物などは、削らない事もあります。

特に轆轤挽きした作品は、程度の差は有ってもカンナや掻きベラ等で削り取る様になります。

特に、ご飯茶碗の様に常に手に持つ食器は、実用的にも、軽く作る必要があり、削りが必要です。

その際、どの程度削れば良いか迷う事も多いです。

1) 削り過ぎ、削り不足の不安。

 ① 削る前の準備。

  轆轤挽きした作品は、生乾きの状態で、作品の上下を逆さにして(伏せて)轆轤の上に載せます。

  作品の乾燥具合によって削り易くもなり、削り難い場合もあります。削りに適した乾燥は、

  カンナの先から、「削りかす」が帯状に連なって出る状態と言われています。カンナの先に

  「削りかす」がくっつく様では、乾燥不足で、「削りかす」が粉状になったり、ブツブツ切れる

  様では、乾燥し過ぎです。当然、作品の表面が白くなっても、乾燥し過ぎです。乾燥し過ぎの

  場合には表面を濡れたスポンジで拭き、水分を与えます。削ると直ぐに濡れた部分が削り取られ

  ますので、度々表面を濡らす必要があります。

  轆轤を回転させながら底や底周辺を削る事で、作品の形を整えたり、作品を軽くする事ができ

  ます。但し、逆さの状態では、直接肉厚を見たり測る事ができません。その為、逆さに置く前に

  底や底周辺(高台脇)の肉厚を、指を向かい合わせて、肉厚を測って置く事が大切です。

  どの程度削れるかは、経験が物を言います。

 ② 作品を轆轤の中心に置く。

   肉厚を均等に削る為には、作品を轆轤の中心に置く必要があります。

   中心に無い場合には、一方が肉厚で、一方が肉薄の状態になります。

 ③ 削り不足が圧倒的に多いです。

   削り過ぎると、作品の肉厚が極端に薄くなります。最悪の場合穴が空く恐れがありますので、

   どうしても削り不足勝ちになります。特に初心者のみならず、中級者であっても、同じ現象が

   見受けられます。削り途中での肉厚の測定は、作品を指先で弾きその音で判断します。

   丁度、建築構造物を、ハンマーで打音検査したり、西瓜(スイカ)の出来具合を判断する際、

   表面を手で叩くのと同じ原理です。高めの音は肉が厚く、低い音では肉が薄いと言われていま

   すが、音での判断は経験を積まないと判別が難しいです。

 ④ 削り不足と判明すれば、轆轤上に作品を再セットし、削りを続行する事ができますので、

   手間を考えなければ、安心したやり方とも思われます。問題は再セットが難しい事です。

   即ち、前と同じ位置に作品をセットしないと、後で述べる片削りを起こします。

   尚、三日月高台にする場合は、わざと中心をずらしてセットします。

 ⑤ 削る前の重さと削り後の重さを秤に掛けて測定する。

   削り取った量を測定する一つの目安になります。又、轆轤挽きの上達の目安にもなります。

   即ち、削る量が少なくなればなるほど、轆轤挽きが上達した事になります。

   初心者であれば、削りが50%の場合も有ります。上達するに従い40、30%と少なく

   なります。20%以下が理想ですが、15~10%程度が限界になります。

2) 作品の外側の削りは、内側のカーブと同じ様になる様に削る。

  肉厚に成り易い場所は、底の厚みと、高台脇の場合が多いです。

 ① 底の厚みは高台の有り無しによって違いがあります。

   高台が無く「ベタ」の場合には、底の肉厚を5mm程度に抑えます。又一般の輪高台や碁笥底

   高台の場合は10mm程度の厚みで切取ります。又高台を特別高くしたい場合でも15mm

   以下に抑える必要があります。底の肉厚を厚くすると、底割れの現象を起こしますので、

   無闇に厚くする事は危険です。

 ② 内側の底の広さが狭い場合には、外側の底径は狭くします。

 ③ 内側の底の周囲が四角張った作品は、外側の高台脇は垂直的に削ります。

   逆に丸みを帯びていたら、外側も丸みを帯びて削ります。

3) 変形した作品は削り難い。

  内側が凸凹した形状の場合、轆轤では削れない場合も発生します。勿論、削る範囲内に凸凹が

  無い場合には問題有りませんが、削りたい位置の内側が凸凹の場合には、肉厚を均等に削る

  事は困難です。その場合、綺麗に削った後に変形させるか、轆轤を回転させずに手で削る事です

4) 人の作った作品の底削るも難しいです。

  一般に体験轆轤は、轆轤挽きが終わった状態で終了します。底を削るには、乾燥が必要だからで

  それには時間不足です。自分で作った作品であれば、どの編に肉があるかがある程度判断でき

  ますが、他人の作った作品では、どこが肉厚か判り難いです。それ故自分の作品より慎重に

  削る必要があります。
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