鼎子堂(Teishi-Do)

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美青年のいる文学史⑤~天上の二人②『天守物語』

2012-05-18 22:52:44 | Weblog
晴れ時々曇り時々雷雨。
初夏の空は、忙しい・・・。


姫路城天守に住む魔性・富姫と若き鷹匠・姫川図書之助。
この二人(←ひとりは、人ならぬ妖かしの魔物なんですが)も、日本文学史上、外すことのできない恋人達でしょうか。
藩主の鷹をそらした罪で、上ることを禁じられている天守で、魔と邂逅する。
魔は、美しい女主・天守夫人・富姫。

どちらか・・・と言えば、これは、『富姫』メインの物語ですが、美しき魔に、魅入られた姫川図書之助の美しさも、また超ド級。泉鏡花ならではの幻想美。

魔と人との恋。
この恋は、成就するようです。

魔と人との恋を、成就させるには、どちらかが、それまでの境遇を捨てなければならない。
・・・となれば、捨てやすい方が、相手に合わせるのが自然なのでしょうか。
この物語の場合、主は、『富姫』なので、従である『姫川図書之助』が、人間界を捨て去ることになるのだけれど、藩主の鷹をそらした罪で、上意討ちの身なのだろうから、図書之助には、この先、人の世界で生きることは、不可能になっております。
それなんで、双方に都合がいいのは、彼自身が、魔となり、富姫側の世界に堕ちることで、一応の決着がつきそうです。
・・・まずは、めでたし・・・?

魔に堕ちた富姫側にも事情があったりで、人の身であったときは、戦乱に紛れ、城を落ち行く身であり、敵方に囚われるのを厭い、自害したといういきさつもあるようです。
魔に堕ちてからの富姫は、やっと恋する相手に巡りあいますが・・・。

『夫人:千歳百歳(ちとせももとせ)にただ一度、たった一度の恋だのに・・・。』

泉鏡花ならではの美しい幻想の世界が、五重の天守の上で、繰り広げられます。
清く、美しく、あでやかな・・・。
この世のものとは、思えない(架空の世界ですが・・・)、それを演出するのは、神の身ならぬ、人なのです・・・。

魔界の女を演じるのは、生身の女(優)には、ちょっと難関か・・・と思います。
歌舞伎、演劇では、スタンダードな演目ですが、女優さんが、あまり演じられていないのは、『魔』の美しさというのは、男性らしかぬ男性の女性的な?(相変わらず意味不明ですが)美によるものかと思われます。

・・・なので、『富姫』も、一応、美青年と置き換えても・・・いいか・・・とイージーな結論です。
この世には、存在しない『女性』ってことで・・・。

坂東玉三郎さんのためにあるような演目で、若手俳優の何人かが、姫川図書之助役にトライしましたが、決定打が出ず・・・(玉三郎の富姫に、役を食われてしまうので、男優としては、面白味のない役どころなのかもしれません)。

現・片岡仁左衛門さんの姫川図書之助が、絶品だっただけに・・・。
後続がでないのは、惜しいところです・・・。