桜桃忌。
太宰治の誕生日でもあるし、入水して、その遺体が発見された日・・・だったと思う。
いつもこの時期、思い出してしまうのは、太宰治と雨がセットになっている・・・ということかもしれない。湿度のある作家・・・少なくとも、スッキリ、爽やか、快晴・・・のイメージはない・・・もっとも、文学を志すモノ・・・能天気では・・・ちょっとね・・・と勝手に思っていたりする。
今日のお題。
太宰治で、始まってしまったけれど、遠藤周作・・・狐狸庵先生。
私が、狐狸庵先生の著作を読んだのは、高校生の頃だったか・・・。
ユーモアエッセイの達人で、つい・・・うふふ・・・と嗤ってしまう・・・前述のスッキリ、爽やか、快晴・・・というイメージがあった。
知識人を起用し、♪ダバダ~~~~で始まる珈琲のCMでも、ひとランク上のインスタントコーヒーのCMにも出ていたし、あのCMに出演するのは、一種のステータスだったのかもしれない。
文壇の寵児でもあったし、狐狸庵先生である。
そんなユーモア作家だと思っていたのに、実は、クリスチャンで、宗教と人間をテーマした深淵な小説を書いていると知ったのは、だいぶあとになってから。
意外なところでは、『マリー・アントワネット』という著作もあったし(・・・今にして思えば、当然かもしれない。コッチが本職、エッセイは、副業?)、権力に阻まれ、殉教か棄教かを選択する人間の姿を描いた『沈黙』など、どうして、ユーモアとは、対極にあるようなテーマの小説を発表されている。
『戦国夜話』は、過酷な戦国時代に生きた織田信長、豊臣秀吉をはじめ、あまり一般的ではない前野将右衛門、荒木村重、戦国の花、お市の方、その娘、澱君、そして、キリシタン大名、大友宗麟、小西行長、高山右近、遣欧使節の支倉常長など、主にキリスト教徒と戦国の関わり、宗教の弾圧を敢行した施政者を短い文章で、綴っている。
いづれも解りやすく、読みやすく、語りかけるように、そして、その戦国を生きた人々が暮らした土地を巡り、空気感迄感じられる珠玉のエッセイ集である。
奥付が、1996年6月1日初版発行となっているから、狐狸庵先生が、お亡くなりになる半年前頃、出版されたものであろう。
ずっと、約20年間、ダンボールの隅に眠っていて、読まれるのを待っていたのだろう。
そんな一冊。