以前の職場であったビルの解体現場を通る。
3階と2階は、既に無きものとなり、空間だけが、虚しくそこに在った。
あとは、1階と隣接するもう1棟の事務所が、解体されるのを待っている。
駐車場だった場所には、瓦礫の山だ。
粉々になった建屋の切片が山と積まれている。
これらを回収すれば、更地になるものあと僅かで、そのあとは、私の知らない建物が経つのだろう。
相方と初めて出会った場所でもある。
もう・・・ずっとずっと大昔の話だ。
私は、初めての面談のときのことを、はっきり覚えているのに、相方は、思い出すことも出来ないらしい。
そう・・・彼にとって、私は、沢山いた部下のひとりで、かつ、派遣に出されたひとりにすぎないのだから。
私は、あの頃と何の変りもない。
変化もないし、進歩もない。
一体、何のための時間だったのか・・・。
積み重ねた時間は、灰燼と帰す。
あのビルと同じく、粉々に解体されて、ビルは、姿を消し、私は、その今はなき、その姿を思い出すだけである。
私の記憶には、あるのに、現在は、もう存在しない。
・・・だから、もう何もない。
あるのは、瓦礫のように山積した過ぎた時間の残骸の思い出ばかりである。
この場所は、他のひとのものになったのだから。
そして、もうこの場所に、私が戻ることも・・・ない。